第328話 付き添いのお願い (叶・桜)

「桜…」

「ん、なに?」


 

 桜はソファから立ち上がる。

 叶が自分に向かって、手招きしてるからだ。

 


「どうしたの?」



 桜が叶にそう問うと同時に、叶は桜の頬を優しくスッと撫でつつ、さらに口を耳まで持って来て、耳元でこう囁いたのだ。



「今日も可愛いよ」

「えっ…ふぇ…ふええ!?」



 突然のその言葉に驚き、桜は後ずさりをしようとするが、叶はその手を掴み、少々乱暴に自分の元まで引き寄せたかと思うとクルリと場所を入れ替えた。

 叶の後ろは壁である。


 叶はそのまま、桜を壁に軽く押し付け、空いてる方の手で頭の横を突いた。顔が近い。



「な…えっ…にゃに? にゃにっ…にゃに?」

「桜は…俺が必ず守るからね」

「あぅっ! …うん」



 そう言ったかと思えば、叶は桜の顎をもう片方の手でクイッと持ち上げた。

 そしてゆっくりと、桜の唇に叶の唇が近づいてくる。


 桜はキスされることを察し、目をつむり、呼吸を軽く止め、今の状況に戸惑いながらもその接吻を受けとめる準備を_________________

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「おはよう、桜!」

「んえ?」



 サクラはカナタに起こされた。

 ふと、自分の唇に触れてみるが、特に変わって濡れていることもない。

 今のは現実ではないのだと、眠気がさめてない頭で辛うじて悟った。



「朝ご飯できたんだけど…。なんか良い夢でも見てたの?」

「あ…うん。叶にチューされる夢見て____あ、いや、叶にアイス食べ過ぎて注意される夢みてたわ。美味しくアイス食べてたのに」

「なるほど、だからあんな戸惑った顔と幸せそうな顔を交互に…ね」



 その後、サクラはカナタの顔をチラチラと見るなり、目が会うと逸らしながら朝食を食べ終えた。



「で、今日は何するの?」

「いやねぇ…あとは上から命令があるまでなーんも無いから暇なんだよね。今日はこのまま本を読むか遊ぶかしかないよ」

「そうね」



 そういうわけで、二人は本を読み始める。

 カナタは起きたばかりなので、昼寝はしない。

 各々、買っておいた本を選び、ソファの上に座って読み始める。


 サクラは嫌がられるかもしれないと考えながらも、自分の身体をカナタに密着させ、もたれかかってみた。

 カナタはそれに気づき、それを受け入れる。


 

「そういえばさ…」



 カナタはサクラに話しかける。



「に…にゃに?」



 自分から身体を密着させたというのにもかかわらず、サクラは本を読み進められないくらい、集中してなかった。



「素早さを生かして本を読んだどうなるんだろう」

「しゃぁ…」

「ちょっとやってみるね」

「う…うん」



 カナタはまた、集中して本を読み始めたが、そのページの移動速度がまるで風にあおられて、一気にめくられてしまうようであった。

 1分も経つか経たないかの時間で、カナタはバタンと本を閉じた。



「読み終わった…」

「うわぁ…」



 カナタはやはり、普通に読むのが良いと言ってまた別の本を瞬間移動で取り寄せ、普通に読み始めた。


 しばらくしてお昼時となり、二人は昼食を食べる。

 それもすぐに食べ終わり、ソファに座って身を寄せ合いながら、ボケーっとして過ごした。



「今日はのんびりしてるね」

「そうね」



 その時、二人の脳内にメッセージが届く。



【よう、叶君、桜ちゃん! ちょっとそっち行ってもいいか? 相談したい事がある】



 ショーからであった。

 それに、カナタは返事をする。



【今日は全く忙しくないから、だいじょぶですよ】

【じゃあ、今からそっち行くからよ】



 メッセージは閉じられた。

 


「今から翔さんが来るね」

「相談したいことって何かしら?」



 そう、二人で相談している最中、すぐにこの部屋の扉はノックされた。カナタはそれを迎える。



「やぁ、お邪魔するぜ」

「はい、どうぞ」



 ショーは二人の部屋にあがり、カナタにすすめられるままの場所に座った。

 サクラはお茶を出す。



「ありがと、桜ちゃん。わりーな、いきなり来ちまって」

「いえ、お構いなく。今日はめちゃくちゃ暇だったので」

「へー、そうなのか」



 ショーは今日の出来事、SSランクに昇格した事を二人に話した。そして、その時にもう一人の賢者であることを国王に言うため、付いてきて欲しいということも。



「えーっと、3~7日後に付いて行けば良いんですね?」

「ああ、そうだ。詳しい日にちがわかったら、また、言う」

「はい」



 カナタは頷いた。

 ショーは話を続ける。



「そうだ。それとな、この街の1番良い加冶屋を知らないか? リルにスキルでない、ちゃんとした戦斧を持たせてやりたいんだ」

「ああ、それなら_____」



 カナタは自分の槍とサクラの剣を作ってもらった加冶屋を紹介した。



「おう、成る程な。ありがとな。じゃあ伝えることは伝えたし、俺はそろそろ_____」

「あ、翔さん、少しよろしいですか?」



 カナタは、帰ろうとするショーを止めた。



「ん、なんだ?」

「ショーさんってSSランクの回復スキル持ってますか? この間、話を聞いた限りでは持ってないような」

「ああ…持ってねーな。作ったほうがいいか?」

「ええ、個人的にその方がいいかと思いまして。回復スキルと火のスキルを基準で合成すれば、火属性の回復魔法ができると思いますよ」

「じゃあ明日にでも作るは。ありがとな」



 そう言ってショーは帰って行った。



「ついに近いうちに、ローキスさんに翔さんを紹介するのね」

「ああ…帰れる日も近いかもねぇ…。全部、王国側次第ってのが気にくわないけど……。ふぁぁ…お昼寝しようかな…」

「あ、今日は私も一緒していい?」

「うん? うん」



 二人はベットの上で、手を握って眠った。

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