第320話 三者再会 (翔)

 俺とリルはロビーの椅子に座って、叶君と桜ちゃんが来るのを待っていた。

 リルは未だに身体を震わせている。



「なあ、リル…どうしてそんなに震えてんだ?」

「わわふぅ…お金がある物や人を見ると、なんだか緊張するんだよ。…御主人に会うまで…こんなキラキラした世界とは無縁だったからね」

「なるほどな。じゃあ少しずつ慣れてこうぜ? なんなら、ここの一室を借りたっていいんだ」

「そうだね…御主人が探していた人もいるわけだし…」



 俺とリルが話している最中、あの叶君と桜ちゃんを呼びに行ったエルフのお姉さんが戻ってきたぜ。

 


「すぐにお越しになられると思うので、もうしばらくお待ち下さいね」



 そう言って、彼女は受付へと戻っていった。


 その2分後、こちらに向かって駆けてくる男の子と女の子の二人グミ。

 俺も思わずそこから立ち上がり、その二人に向かう。

 本当に居た…!!

 様子を見る限りでは元気そうだ…よかった!



「翔さんっ!!」

「し…翔さん!」

「叶君、桜ちゃん……無事だったか!」



 俺は叶君の手を取った。


 俺達は再開することができたんだ。

 特に生活してただけで…お互いに会えたのはあのトールっておじさんのお陰だが…。

 とにかく、この世界でまた会えた。



「ええ…こっちはなんとか。その…すぐに俺らを呼び出した人に会って___。いえ、詳しい話は後ですね! 兎に角良かったです、大丈夫そうで!」

「そっちこそ、何か大事があったわけじゃなさそうだな! 俺は…まあ、冒険者やったりしてたぞ。トールって人のお陰でここがわかった」

「そうなんですか…! トールさんが…。とにかく、座ってゆっくり話しましょう」



 俺、叶君と桜ちゃんの3人…リルは何故か俺の真横の椅子に座って話を聞いてたから…4人か? とにかく再開の喜びもソコソコに、ロビーの椅子に座って今まで何があったかをお互いに話した。


 俺からはリルとどう会ったか…とか、どう暮らしてきたか…だな。


 そんでもって、俺が割と苦労しているように、叶君達も大分苦労したみてーだったな。

 驚くべきは、あの桜はちゃんのほとんど見えてなかったはずの目が完全に回復していたことだ。

 叶君が奮闘した結果、スキルで回復できたらしい。


 まあ…それにしても桜ちゃんが眼鏡を外して、ちょっと着るものを変えただけで……変わりすぎだろと。

 いや、元々、そんじゃそこらの人間とは比べ物にならないくらい美人だってのは知ってたが、ここまでとは思わなかったんだぜ。

 流石は美花の妹と、言ったところじゃねーか?


 だからよ、俺はよ、有夢と美花に言っていたのと同じように、その間柄について一言を入れさせて貰ったんだがな_________

 

 

「もう、お前ら付き合っちゃえよ!」

「あ…あの、それが昨日から……」

「私達…その、幼馴染から恋人に…えへへ」

「なんだとっ!?」



 思わず驚いたね。

 このパターンは想像してなかったからな。

 後で叶君から聞いた話、この世界では何が起きるかわかったもんじゃないから、伝えられる内に気持ちを伝えたかった…んだと。

 有夢と美花の事もあるだろうな。


 有夢が死んじまってからの数日間の美花を思い出してみると…そういう気持ちになるのもわかるぞ。


 さらにステータスをどう上げてきたかの話も少しだけ。 

 深くは互いに深くは話さなかったが……ダンジョンもクリアし、転生はすでに経験済みらしいく、特に叶君はSSランクのスキルも20個あるらしい。

 …俺ももうちょっと増やすかな、SSランクのスキル。


 そうそう…。俺達に共通していることは、有夢のあの『何回も繰り返す』という考え方のようだぜ? 

 まさかあの廃人っぷりが俺達の生活に役立つなんて思いもしなかったな……。

 もし、この世界に有夢が来ていたら…凄いことになってたかもな。はは。


 

 んでもって、俺と叶君達との再会兼報告会もそろそろ終わろうとしていた。

 今、話し合っているのは今後についてだ。



「どうする? 俺とリルがお前らのところにお世話になる……ってのは冗談だ。二人でいちゃつきたいだろ?」

「………はい」

「あう……」



 こうやってからかうのも面白れーぞ。

 特に、普段冷静な叶君が照れているのを見るのは。



「俺もさ。今は可愛い彼女が居るんだ…な?」

「わ…わふぅ…!」


 

 リルは顔を真っ赤にして下を向いた。

 だが耳はピーンと立ってるからな…嬉しいのはわかってるぞ。



「つーわけだから、一緒に行動するのは難しいだろうな……。なんとか俺がSSランカーあるいはSSSランカーになってローキスって人と会えれば良いんだがな」

「そうですね」

「まあ…こまめに連絡はとろうぜ?」

「はいっ」



 この後、一緒に食事するかどうか訊いてみようと思ったが、それはまた今度にしておく。

 あの二人は昨日から付き合い始めたし、俺とリル…特にリルが二人だけの時間が欲しいだろう……と、仮定するぜ。



「じゃあ…また近い内にな」

「はい」

「また…!」



 二人は自室に戻っていった。

 ……瞬間移動できるらしいが、それはしないんだな。

 他の人の目があるところじゃやらない事にしてるのか?



「わふ…御主人。会えてよかったね」

「ああ。さて…この近くに暮らせる場所を探すか……」



 俺はそう言いながら、このアナズム風高級マンションの受付まで行った。

 そしてスタッフに話しかける。



「そうだね。私も早くこの緊張になれないと……あれ、御主人…なんで受付に?」



 リルはそう言ってるが、俺は今、スタッフさんと話してて忙しいんだぜ。頭の中のメッセージでリルに待っているように伝えた。

 さて……大きな買い物だ。

 

 

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