第306話 炎嵐の巨人鷲 (翔)

 俺らがボスステージに入ると共に、後ろの大扉は閉められる。と、同時に暗かったその場所が一気に明るくなった。


 明るくなったその場所は異様としか言えない。

 ダンジョンの中に空がある。

 晴れ晴れするほどの快晴で、太陽が燦々と照りつけている。足場は平地。草刈りが丁寧にしてある原っぱだ。


 そして正面奥には、大きな大きなワシ羽を畳んでたっている。

 …てか、あいつ、俺らを谷底に吹き飛ばしたヤツじゃねーか?色こそ違えど…見た目は同じだ。

 

 外で出会った方は茶色だったが、こいつはその茶色に赤色を多く混ぜ、尾や羽の先の方はエメラルドグリーン、輝いている。


 つまり、この大きなワシも、その俺らを吹き飛ばしたワシの亜種だってことだな。


 俺は魔物の博皇でそいつを見てみた。

 

 こいつの名は[炎嵐の巨人鷲 フレスベルク]というらしい。巨鷲 フレスベルク という魔物の亜種なんだと。

 そして普通のフレスベルクはSSランクなんだが、こいつはSSランク3匹分。

 俺らを吹き飛ばしたヤツより強いってこったな。






〈黒髪黒目の男に…狼族の少女…か〉



 あいぇぇぇ!? しゃべったぁぁ!?

 リルもこれには驚いている。



〈我が名は炎嵐の巨人鷲…フレスベルク! このダンジョンの真の主なり!〉



 翼をバッと広げながら吠えるように一鳴きした。

 おお、これはだいぶ雰囲気あるな…!

 もうちょっと転生とかしてなかったら緊張感も生まれていたはずだ。



〈よくぞここまで辿り着いた、小さき者共よ! このフレスベルクがその実力を____うぇぇっーーい!!?〉



 フレスベルクは驚きながら、バックステップをした。

 そう、丁度、カラスやハトとかが驚いて、後ろに飛ぶみたいな感じで。

 何をそんなに驚いているんだか…。



〈きっ…貴様らの魔力量…どうなっている!? 異常だ!人族と獣人なのか、本当に!?  特に男の方、人の皮を被った魔神じゃあるまいな…。化け物め! こんなのと対峙しなくてはならぬというのか! くそがっ〉



 化け物に化け物と言われてしまった。

 フレスベルクは驚きながら、空に飛び上がる。



「リル、どうする?」

「同時に倒すってのはどうかな」

「じゃあそうしよう。範囲は小さく、威力は高めにな」

「了解!」



 リルは『ヨルムンガンド』と呟き、手を横に伸ばす。

 そしてその手には黒い光と共に現れた、下手な高級に装飾してある武器より立派な戦闘斧が握られる。 

 今回は範囲を抑えるために小さめに召喚したが、本来は刃がリルと同じくらいの大きさにできることまで確認した。

 リルはそれを軽々と振りまわせる……。

 

 俺も、今回は燃やしてしまうより斬った方が素材が残ると判断して、『ムースペル』と呟いた。

 俺の手に剣が握られる。炎の神の剣なのだそうだ。


 俺とリルは互いに刃物を振るう。

 神の奥義の技の一つを意識し…同時に。


 見えない刃がフレスベルクまで飛んでいく。

 間違いなくSランク以上であろう魔法を空中に沢山張り巡らせて旋回していた巨鳥は、綺麗にとはいかなかっが、4当分となった。


 断末魔もあげなかった奴の死体が落ちてくる。

 SSランクの魔核3つと共に。


 まさか1撃だとは予想だにしていなかったが、まあ、倒せたし、良いよな。

 


「わふ! 見て御主人、宝箱と…あれは剣かな?」

「おう!?」



 リルが注目させた先には、宝箱と1本の剣。

 その見た目は、すごく簡単に言えば、赤い柄に黒ベースに赤い模様が施されている刀身、淡く水色に輝く銀の刃をもつ、ファンタジックな剣だった。


 俺とリルはそこに駆け寄り、一緒に宝箱を開けた。


 中にはCランクからSSランクまでの大量の魔核や、売れば日本円で数億円は稼げそうな金銀、宝石の…その装飾品の数々。 

 スキルカードやエンチャントカードもある。

 中でも一番のお宝がこれだ。



【「炎嵐鷲の非拘束腕輪 ノングレイプニル」


・状態→ 最良

・出来→ 最高

・価値→ 伝説

・材料→ オリハルコン

     宝石各種

     炎嵐巨人鷲の唾液

     岩熊王の腱

     エンチャント

・種類→魔法の腕輪

・説明

:防御+300

:風技・火技の効果を伝説的に高める。

:装備者の基本器用を1/3にする代わりに、素早さを3倍にする。

:所有者の腕の太さに合わせる。】


 

 基本器用ってのは、レベルで上がる器用のことで、STPとスキルの器用は関係ないらしい。

 つまり、俺達にとってはほとんど無問題だ。


 ちなみに、装備品のこの300とかってのは…普通のステータスに換算すると3000位はあるらしいな。

 なら普通に3000って表記すればいいのにな。



「リル、これはリルのだな」

「えっ…!? いいのかい?」

「ああ。あとで『不汚不朽』のエンチャントもしよう。俺はこれをもらう。丁度伝説級の装備品二つだからな。分けよう」

「えへ…そういう事なら貰うよ!」



 俺が腕輪にエンチャントを貼り、それをリルに渡す。

 早速、リルはそれを装備した。似合うし可愛い。


 そう…そして俺が欲しいのはコイツ。このなんか地面に刺さってたカッコいい剣の方。



【「融合と炎の魔剣 レーヴァテイン」


・状態→ 最良

・出来→ 最高

・価値→ 伝説

・材料→ オリハルコン

     炎嵐巨人鷲の嘴

     黒炎竜の逆鱗

     黄金前髪馬の金髪

     エンチャント

・種類→魔剣

・説明

:攻撃+400

:火の魔法と技の効果を伝説的に高める。この剣を媒介として使用する技の場合、さらに高める。

:この剣に所有者の召喚した魔法の剣を付与できる。その場合、この剣の切れ味や攻撃力はその分加算され、その魔法の剣の効果も得る。また、その剣が火属性を含む場合、その効果を増幅させる】



 つまりは、俺のムースペルをこれに入れる事ができ、入れた場合、この剣の強さにムースペルの強さが加算され、さらに効果も増幅される…と。

 俺にぴったりな剣だ。


 この剣を地面から引き抜くと、そこから鞘も出てきたからありがたく頂戴しておく。

 さらに、チャレンジミッションで得た、『不汚不朽』や切れ味や攻撃力を上げるエンチャントもつけておいた。


 各々でその装備品の試し装備をした後、宝物やフレスベルクの死体を全て無限マジックバックに仕舞い込む。



「忘れ物はないな」

「大丈夫だよ」

「じゃあ出ようか」


 

 俺とリルはいつの間にか出てきていた、光溢れる出口らしきものへと入った。

 そして、俺達は外へ出る事ができた____




【ユーダリルの谷底の「悲しみ」のダンジョンをクリアしました。

称号「「悲しみ」のダンジョン攻略者」「SSランク魔物討伐者」を入手しました。

印「炎嵐の巨人鷲の谷」を入手しました。

ダンジョンエクストラクリア報酬として、STP・SKPを4000入手しました。】



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明日は二話同時投稿です!

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