第302話 レベルの限度 (翔)

「わふ…わふわふわふっ…わふっ…わおーーん!」

「少し落ち着け」



 俺とリルがステータスを確認したところ、なんと、レベルに限界が来ていた。

 920万という経験値を得ていることになっており、ポイントも多大に入手している。

 


「だって、だってだよ、御主人! レベルの限界…レベルの限界なんだ、レベルの! はああ…すごいなぁ…レベルの限界かぁ」

「お、おう、そうだな」



 さっきまでの興奮が冷めていないことも有るんだろうが…それにしてもはしゃぎ過ぎだ。

 でもレベルに疎いこの世界の人達のことだ。これは相当凄いことなんだろうな。

 俺は…リルのリアクションがあまりに大きくてそっちにビックリしている。



「SSSランカーもこの境地に達している人は…多分、いないんじゃないかな? 御主人、もしかしたら私達は歴史的人物にっ…!」

「そうかもな…しかし、まだなんかあるぜ? ……転生とやらが」



 ステータス画面には転生というコマンド。

 さっき突然頭の中にメッセージが現れ、頂点という称号と転生というシステムについて説明を受けた。



「転生、これだよ。なんなんだろうね、これ?」

「…神様か? 説明を受けたんだろう?」

「うん。でも…なんか転生って怖いな。あの説明が本当だと良いんだけど…」

「そうか? 俺は大丈夫だと思うがな」


 

 リルからしたらそうか、今までの常識がまったく効かない未知のことなんだもんな。

 逆に俺は未知のことだらけで、『こういうこともあるだろ』てきな風にしか考えてないがな。



「まあとりあえずは転生してみるわ。リルはどうする?」

「わふぅ…御主人がするなら……! 彼女として私もするよ」


 

 別に彼女だからって無理に合わせる必要はないと思うが…。

 とりあえず、俺とリルは転生をした。

 

 

「なんだか力が抜けた感じが…」

「確かに」



 今まで溜めてた力が一気に抜けたような感じがする。

 だが、ステータスを見てみるとSTPやSKPは説明された通り、ちゃんと残っている。

 


「わふ…またレベル1だよ」

「そうだな…。だがまたポイントが手に入る」

「そうだね…!」



 その後、俺らは色んな事を整理したりするため…また、数日間ちゃんと休めなかったこともあり、さすがに疲れていたため、ステータスの割り振りは明日にすることになった。あれは心身が冷静な時にした方がいい。

 そして活動も、寝どころを確保するためにもう一周だけしたら終わりだな。


 …新しく経験値が入る前に、レベルMAXで手に入るSTPとかも計算しておいた方がいいか。

 

 その他にも…このダンジョン一周で手に入る経験値も分かった方が、また転生とかするときに便利だな。

 


____

___

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「御主人、レベル1なのに強いね…!」



 時間はかかったが、特に困難なことなく1周できた。

 前まで魔力に高くSTPを振って、炎神の効果で火力が上がってるってのはこういう時にも役に立つんだな。


 経験値は1周、920000だっつーこともわかったしな!

 きっちりここを10周すると、レベル255とトントンになる。


 それから、そのレベル上げの前に手に入るSTP (SKPとSTPは手に入る量が一緒)を、いままで振ったのと振ってないのを足して計算したら9万5000だった。

 リルは1万9000らしい。



「ああ…今日はもう休むぜ。ゆっくり寝よう。見張りも要らねーしな」



 俺とリルはノートフォーガの気持ち悪い色版…グレートフォーガが居たところで食事の準備をしている。

 夕飯は俺が作ってる。もう少しで完成するぞ。



「リル、できたぞ」

「わふー!」



 まあ…香味料や果実以外の調味料が少ねーから、大層なもんは作れねーけどな! 

 今回作ったのはローストビーフみたいなドラゴンの肉。

 その名もローストドラゴンだぜ。


 ああ、リルが真・料理を習得して料理の達人になっちまったみてーに、俺もそうなったわ。

 めちゃくちゃうまかった。

 リルの怪我が治った記念として、パンや野菜も久々に食べたしな!


 さて、次は身体を拭くんだが……。



「御主人! 私、実は木の桶のような感じでお風呂を作ってみたんだ。御主人が料理してる間に、左隣の部屋で最終調整をしてきた」



 そう言いながら、リルは、ついさっき手に入れた無限に入るとかいう最強のマジックバックから、樽風呂みたいな容器を取り出した。

 ……横に広い。足を伸ばせるな。



「……良くない? これ」

「ああ、良いな。リルから入るか? 折角だし」

「一緒……はさすがにまだ早いかな……?」

「おう、早い」

「じゃあ御主人から先入ってよ…」



 耳がクタンと倒れてる。 

 片耳の時は耳の動きはよくわからなかったが、両耳になったとたん、耳からの感情の現れが凄いのなんのって…。


 俺はその木製の風呂を持って、右隣の部屋で入った。

 風呂は、水の魔法、火の魔法、風…木…などの魔法を併用して、お風呂をいい温度で沸かし、それを保ち続けるように設定しておいた。


 そとは結構寒くなってきたからな、温かめがいい。


 久しぶりの風呂は気持ちいい。

 周りに魔物がいて襲われる審判もねーから、ゆっくり洗えるな。幸い、石鹸もあるし。


 風呂から上る際は水と垢を火で蒸発させ、綺麗にしておく。新しく水を注いで完了。



「リル、次良いぞ!」

「わかったよ御主人」



 俺と入れ替わりでリルは風呂場と化した部屋へと入っていった。


 ところで、瞬の不視化っつースキルと、大透視っつースキルはどうすべきだろう?

 前者は、特定の数秒間 (最大で10秒)誰からも認知されなくなる上に視覚もできなくなるっつー、透明感するスキルだった。

 俺よりリルの方が似合う気がするから、後であげよう。


 で、大透視だ。

 リルは……やめて欲しいって言ってたな。俺がそんなことすると……うーん……100%しない…ぞ。

 わからない、未来のことはわからない。俺の性格が変わるかもしれないしな……。やっぱりここはリルに覚えてもらおう。


 そんな感じで荷物の整理などをしていたところ、リルは戻ってきた。

 


「良いお湯だったよ。歯磨きしたら寝れる」

「おお、そうだな」



 すぐに歯磨きをして、寝袋を敷いたんだが…。



「リル…俺のま隣で寝るのか!?」

「ダメ…かな…? これもまだ早い?」



 立ってる俺に、寝袋を敷いてたから立ち膝のリルが、上目遣いをしながらそう聞いてくるぜ。

 ……ああ…まあ…仕方ねーのかな…。

 俺って寝相良かったっけ?


 

「あ、ああ。今までの感覚でいた。わりい。…良いぞ」

「わふぅ~~!」




 というわけで、添い寝に近い形で寝ることとなった。

 寝始めてから1時間…まだ寝るには時間がかかりそうな俺の隣で、異世界でできた、人生で初めての彼女が寝ている。


 ……これで良かっんだよな。

 なんか…嬉しさより照れが上回るが…。

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