第298話 スイーツ (叶・桜)
「ふぅ…ゴメンね叶。突然泣き出しちゃって。あと…慰めてくれてありがと」
「いや…気持ちは俺も同じだから。……甘いもの食べに行こうか」
「うん…っ! へへ」
二人は宿から外に出て、カフェ兼スイーツショップへと向かった。
店のメニューをみて、何を食べるかを決めている。
この店はケーキがほとんどだった。
「好きな物、好きなだけ食べていいよ」
「やった! じゃあね…コレとコレ! …あとミルクティー」
「じゃあチーズケーキで…俺もミルクティーにしようかな」
サクラはケーキ2種類を頼んだ。
しばらくして二人のもとに、頼まれた物が運ばれてくる。
店内の客や店員は皆、二人に注目していた。とても珍しい黒髪黒目…それが二人も居て、さらに美少年美少女だからだ。もっとも、サクラはケーキに夢中で自分達が注目されていることに気付いてはいないが。
「えへへ…いただきまーす! あー…美味しい…幸せ」
「んだなー」
「はい、叶! えっと…慰めてくれた私なりのお礼…かな? あ…あーん…」
「_____ん。その…そのケーキもいいね」
「えへへ、えへへへ。そうだねー」
いつものちょっとカナタにキツめにあたる口調はなくなっており、サクラは全力で、好きな人とのゆったりとした時間を好きな甘い物を頬張って過ごしている。
「あー、チーズケーキ、美味しかったな。桜、最後の一口食べる?」
「んーとね、お皿ごと頂戴?」
「いいけど…なんで?」
「まあ、いいからいいから」
カナタは言われた通りにサクラに皿ごと自分の一口のケーキを渡した。
「見ててよ…えいっ!」
サクラがそのチーズケーキに魔法を唱えると、チーズケーキは段々と自己再生し始めた。
これがサクラの仁神の治癒の理である。
なお、周囲にはサクラが掛けた幻術により見えなくなっている。
「じゃーん!」
「うわぁ…これってさっきの?」
「そういうこと。あ、叶にはこれあげるね」
と、サクラから渡されたのは、サクラが食べていた方のケーキの一方だった。これも1切れ分の形を取り戻している。
「もう一方も欲しい?」
「いや…桜が作ってくれる昼飯が食べられなくなるからいい」
「……そ、そう…ね。えへへ」
再生させたそのケーキを食べてから、店から出た。
次に二人が向かったのは、とある小さな鍛冶屋だった。
「ここはね…じつはついさっき、ヘイムダルさんに念話で聞いたんだけどね、この街のオーダーメイドの鍛冶屋さんで1番いい店何だって! 材料は金属や柄用の木材以外は基本、持ち込みだけど」
「あー…あれでしょ、ミルメコレオの槍…」
「そうなのだ。桜の分の剣も依頼するが?」
「いいの? じゃあお願いね」
店の中に入る。
中はカウンターと数個の椅子しかなく、一見、街の案内所にしか見えないだろう。それらしいのは飾ってある剣程度だった。
カウンターには、中年が終わったばかりぐらいの渋いお爺さんが居る。
「らっしゃい……。あ…なんだ…冷やかしか? ここは坊主共のような餓鬼が来る場所じゃないぞ」
「あの…ヘイムダルさんからオススメされて此処へ来たのですが…」
「……ふん…なるほどな。ただの餓鬼じゃないてか。……話を聞こう」
「ええ、頼みたいことはですね________」
カナタは上手く交渉をした。
サクラはそれをただ聞いていただけだったが。
しばらくして、カナタは大方の説明が終わった。
「なるほど、なるほど。国のお抱えのな…。 わかった。槍一本と剣一本だな。で? 材料は持ってきてんだろうな?」
「ええ、勿論です。これを」
カナタはマジックバックからいつの間にかサクラの知らない内に解体したミルメコレオの素材の1番いい所と、謎の黒い剣士達から手に入れた剣を取り出した。
「これは…ミルメコレオ…か? 違うな、何かが……。それとその剣は…! ちょっと鑑定してくるから待ってろ」
鍛冶屋のお爺さんはカウンターの奥へと消えていったかと思うと、割とすぐに戻ってきた。
「これは珍しい…いや、世界初だな。ミルメコレオの亜種か。それに…この剣の刀身は…ほとんど加工してないミスリルだな」
「はい。この二つでカッコいい感じの槍と、剣を作ってください」
「こいつぁおもしれぇ。珍しい素材を手にすると腕がなる。……いいぜ! 作ってやるよ。エンチャントはどんな感じにするんだ?」
カナタはその質問に、良さげに答えた。
料金は1本で200万ベル…ミルメコレオの素材、残りまるまる1匹分引き渡すのなら175万ベルにすると言われ、その通りにする。
これでも安い方だった。ミスリル持参だったからというのもある。
「……3日後にできるから。取りに来な」
「ありがとうございました!」
「いやぁ…久々に腕がなる仕事だぜな」
カナタとサクラはお爺さんに礼をしながら、その店を去った。
そして誰にも見られない隠れ、瞬間移動で宿に帰る。
「楽しみだなぁ…楽しみだなぁっ!」
「良かったわね…じゃあそろそろお昼ご飯作るから」
「うん。お昼ご飯たべたらまた、ダンジョン行こうな」
「そうね」
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