第257話 5日間 (叶・桜)

 二人はきちんとした鍛錬を5日間続けた。


 そのうち、4日間はローキスが最初に提案したプログラムをこなした。

 授業がだんだんと、ユグドラシル神樹国の歴史や、神話についてに変わってきており、さほど、その話が重要でないと考えたカナタはローキスに最初の時間割で鍛錬すると言ったのだ。


 カナタもサクラは、実習の最中にEランクの魔物を倒し続けた結果、レベルが26となっていた。



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「今日は休みとする。カナタ、サクラよ」

「「はい」」



 朝起きてすぐに、玉座の間に呼ばれたカナタとサクラは、ローキスからそう告げられた。



「ところで、二人は強くなる上で、何か必要な物や望みなどはないか? 例えば、スキルの進化や合成に魔核を使うだとか…」

「望み……ですか」



 ローキスのその問いに、カナタは反応する。

 彼は、そろそろ何かレベル上げに大きく変化をつけたいと考えていたのだ。

 日に数十匹もEランクの魔物を狩っているだけでは、たかが知れている。


 

「なら…俺達を冒険者として街に繰り出させてはもらえませんか? できれば明日から」

「ほお、それは何故だ?」

「冒険者として活動すれば、レベルなども上がりやすく、より強敵と実戦をできると考えたからです」

「なるほどな、しかし…」



 ローキスは玉座から立ち上がり、二人の元へと近づいた。



「お前らが逃げ出すという可能性がある」

「いえ、それは無いです」

「何故そう言い切れる?」

「まず、俺達はローキスさんの力でしか、元の世界に帰ることができません。それに、サクラの目をポーションによって治す約束もしました。さらに、今のところ、俺達は皆さんに良くして貰っているので、別に逃げる必要など無いのです」

「そうかそうか、なるほどな」



 ローキスは再び玉座に戻って座り直し、膝を立てて首をもたげた。どこか嬉しそうだ。



「よし、ならば二人は冒険者として街に繰り出すことを許可する。金や武器や着物、部屋などの必要なものは準備しておく。……より強く、なれるのだろうな?」

「ええ、きっと。あ、あともう一つ宜しいですか?」

「なんだ?」

「そのうち、ダンジョンに挑戦したいのですが………」



 カナタもまた、どこか嬉しそうにそう提案した。

 


「それはまた…理由は?」

「実力を見るためです」

「……わかった。我が国が抱えているダンジョンの一つを、お前達の為に、お前達だけに解放しよう。それで良いな?」

「はい! ありがとうございます!」

「うむ、力を求めるのは望ましい。これからも頑張ってくれよ。……下がって良いぞ」



 二人はそう言われると、ローキスに一礼してから玉座の間を去り、自室へと戻った。



「ふう、これでよし。頼みたいことは頼めたし」

「そうね。5日前から叶、頑張って色々考えてたもんね」

「ふふん」



 ベットに腰をかけながら、話をしている。



「それにしても叶、なんやかんや言ってちゃんと武器の練習、続けてたよね」

「確かにそうだなぁ…。桜もちゃんと剣を扱えてるじゃん」

「まあね」



 カナタとサクラは、武器の鍛錬を5日間真面目に行っていた。その結果、大幅にSK2が育っている。



「ねえ、練習してる時の私って、汗臭かったりしないよね?」

「え? どうして? 別にそんなこと無いけど」

「いや…その、一応気になるの。わ、私なんて容姿とか気にしたって意味無いのはわかってるんだけど………」

「いや、普通に可愛いでしょ、何言ってるの? ……あ」



 しまった、と、カナタは思った。口を滑らせたのだ。

 サクラが自分の姉と比べて自信をなくしたりし、卑屈なことを言う時がある。

 半ば、口癖になっていた…と言っても、カナタ以外には言わないのだが。

 その場合、カナタはそれとなく、容姿に自信を持つように発言をしているのだが、ここ数日、無かったために気が緩んでいたのだ。



「えっ…えっ、え!? えっ……えええ!?」


 

 サクラは激しく動揺する。



「そそそそ、そんなこと言ったって、な、なななにもしてあげられないんだからねっ……! お、おおおだてたって、私、なにもしてあげられないよっ…」

「い…一旦落ち着こう、ね、サクラ」

「う、うん」



 カナタはサクラに数回、深呼吸をさせた。

 しているうちに、サクラは気持ちが落ち着いてきた。



「はぁ……。驚いた。でもお世辞でもありがとね」

「………ああ」

「本当、叶の顔を数日間も見てないと、なんか変な気分」

「確かに…サクラ、まだ、みんなの顔も見てないもんね」

「うん…。ずっと、メガネ邪魔だな、なんて考えてたけれど。やっぱり、無いと私、ダメなんだね。あ、いつも誘導ありがとう、叶。今日は叶に御礼言ってばっかりだね」



 サクラはそう言いながら、微笑んだ。

 姉にかなり似て可愛らしい顔で微笑まれたカナタは、しばらくそれに見惚れたが、すぐに話題を変えた。

 これ以上何かあると、彼女に気を取られ、今日は冷静でいられないだろうと、判断したためだ。

 


「はは……うん。どういたしまして。それにしても…今日は初めての休みだよ。何して遊ぶ? 桜」

「そ…そんな、遊んでる暇なんて無いでしょ。………メイドさんに頼んで、スゴロクでもする?」

「え、冗談で言ったんだよ? ステータス割り振ろうよ」

「…そうね、それが良いね…」



 サクラはどこか残念そうだった。



「ていうか、いま目が見えないんだし、スゴロクできないでしょ」

「はうぅ…それはそうだけど……」

「まあ、まずは俺からだな」

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