第248話 魔法 (叶・桜)

「それではまず、魔法とは何か、じゃが…。簡単に言えば、スキルで習得した物を、MPで変換。それのデキが魔力で決まる…と、いった感じじゃな」



 そのなんともわかりやすい説明に、二人共は納得した。



「それで、人は互いに魔力を感じることができる。それは知っておるかな?」

「はい、デイス先生から聞きました」

「そうか。魔力は普段、MPと混ざりながら人の周りをグルグルと回っておると思ってくれ。強力な魔力を持つものであればある程な。まあ、そんなのいつも他人に感じさせていたら隠れたりする事はできんからの。調節する事は自由にできるがな」

「てっきり、血みたいに中にあるものだと思ってました」



 カナタがそう言うと、ヘイムダルは軽く頷く。



「そうじゃ、昔は……2000年程前までは、そう考えられていたようじゃの」

「そうなんですか」

「ところで、わしの魔力を見てみるか? 強く当てすぎると気分を悪くしたり、中には気絶する者も居るからな。一割程も出せないとは思うが」



 カナタとサクラは少し相談をし、ヘイムダルの言う通り、魔力を放出して見せてもらう事にした。



「お願いします」

「よし、ならば感じておれ」



 そう言うなり、角笛を持った老人から排出される多大な魔力。それを二人は、心霊スポットで感じる寒気のような感覚で捉えていた。

 数秒、ヘイムダルは放出し続けた。



「さて、どうじゃったかな?」

「す、すごいです」

「なんかこう…ブワッて感じで…」

「そうかそうか。では、これで授業は終わりじゃ」

「「え!?」」



 二人はまた驚いた。この部屋の時計を見てもまだ30分も経っていないからだ。ヘイムダルからはこの日、一時間学ぶ予定だった。

 カナタもサクラも、ちょっと少なくしすぎてしまったなと考えていたが、それを上回る早さで終わってしまった。



「終わり…ですか?」

「そうじゃよ。一時間しかないしな。かと言って、十時間あったとしてもこの程度で終わっていた。さっき言ったじゃろ? 魔法とは何かを。あれでほぼ全てじゃ」

「え、じゃあ残りの時間は?」

「スキルの事や、スキル合成の組み合わせ等を教えようと考えていたんじゃよ。明日からの授業のメインはそれじゃ」



 スキルの合成を教えてもらえると聞いて、カナタはそれで良いかと納得した。サクラも同様に。



「それならば、今日の残りは何を?」

「うむ、わしの得意とする魔法を見せてやろうと思ってな。どうせ、トールはお主らに雷を見せたんじゃろ?」

「ええ、はい」

「なら、わしも見せよう。なに、あやつみたいに派手派手ではないから安心せい」



 ヘイムダルはいつの間にか手に、大きな角笛を持っていた。それを軽く吹くと、前に五つの魔法陣が現れた。



「わしの得意とする魔法は召喚魔法じゃよ。召喚魔法には二種類ある。一つは、通常1~2体の単体で強力な者や魔物を呼び出すもの。もう一つは、多くのモノを大量に呼び出すものじゃ。わしは後者での」



 彼が説明しているうちに、魔法陣1つから1体、西洋の甲冑を来た騎士なような者が続々と出てきた。



「と、こんな感じじゃよ。わしが本気を出せば1万体、全力を出せば3万体じゃ」



 カナタはその言葉が、先ほどの魔力の感じにより嘘ではない事を察した。

 サクラも、この部屋に五つの魔力が増えたことを探知で確認している。



「す、すごいですね…」

「そうかの、そうかの? なんせわしは一人軍隊と言われてるんじゃよ」

「一人軍隊……かっこいい」

「そうじゃろ、そうじゃろ?」



 その後、カナタにおだてられ、ヘイムダルは和多くの魔法を周囲に影響が出ないレベルで披露した。

 一つ一つ、カナタはそれらを目を輝かせながら眺めた。

 一方サクラは、魔力や存在の探知を必死に続け、探知のSK2が次の段階に進んだ。



「はあ…はあ…以上じゃ。また明日」

「はい、また明日! ありがとうございました」

「ありがとうございました!」



 時間が来た。二人はヘイムダルに御礼を良い、部屋を去る。

 そしてそのまま以前、デイスから授業を受けた場所に移動し、数時間の間、授業を受けた。


 カナタはその間、始終ニヤニヤとしていた。彼にはなにやら今日一日で、何かが思い浮かんだようであった。

 そんなカナタの様子を、幼馴染の勘で察したサクラは、やはり、部屋で寝る前に深く無茶をしないように釘をさす事を誓った。


 昼食に続き、豪華な夕食を食べ、また勉学にいそしみ、二人はヘトヘトになりながらも部屋に戻った。



「はあ、今日は少し疲れたな」

「1日中興奮しっぱなしだったじゃないの」

「あー…バレてた?」

「わかるわよ、そのくらい……。あのね、カナタ。私、お風呂から出たら少し…話があるから」

「……? わかった」

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