第228話 予言教授 (叶・桜)
3人は、机と椅子と黒板がある部屋へとやってきた。
カナタとサクラは椅子に座り、デイスは紙とペンを二人にそれぞれ配った。
「ホー! では改めて自己紹介を。ワシはデイス・アモルン。この国で預言者を務めておりるんじゃのぉ」
「私は桜です」
「俺は叶です」
「ホー、ではではまず、ワシがどのようにお主らにこの世界の日常、仕組み、歴史を教えるかの説明からするが、良いかの?」
「はい、お願いします」
その返答をきき、デイスは満足気に頷くと、説明の仕方の説明をし始めた。
「まぁ…何度も言っとるように、ワシは預言者じゃ。未来を見る力を持つ特殊なSK2を持っておる。……SK2はわかるようじゃの?」
二人は頷いた。
「そしてその他にもワシは、相手の心を読むSK2を所持しておる。それと預言をうまく組み合わせて、お主らが知りたいことを察知し、それを教えるのじゃ。ここまでは良いな?」
「はい!」
最初はカナタは、デイスのことを変な口調で話すお姉さんだと考え、怪しんでいたが、中々に教える方はちゃんとしていそうなので一安心していた。
サクラは余計なことを一切考えず、ひたすらにデイスの話を聞いている。
「ふむ、良いの。では教えよう。まずは____」
____
__
_
デイスは二人に、この世界の常識などを長時間、大まかにかつ大事な部分は捉え、わかりやすく説明した。
冒険者システム、ダンジョンのキマリ、魔物、通貨、日本との相違点…などなどを。
サクラはもともと頭が良く、デイスに教えられたことはすべてすんなりと頭に入った。というのも、デイスがサクラが目が見えないことを理解し、教え方を工夫したからでもある。
カナタも勉強は苦手ではなかったが、それに加え、異世界の日常という、彼の裏の心の一つをくすぐるような内容ばかりで、まるでゲームの操作を覚えるように知識を吸収していった。
「では、今日はこれで終わりじゃ。お主ら、すごい集中力じゃったの…。若いのは吸収が良い。最後に質問などは無いか?」
「はい、先生」
「なんじゃね? カナタ」
カナタもサクラも既にデイスを先生と呼ぶようになっていた。
カナタは質問をし始める。
「この世界の…レベルやSKP、STPは少し軽く見過ぎられていると思ったのですが……、何故でしょうか?」
「んん? そうかのぉ? レベルとはやはり、魔物を日常的に倒してくうちに勝手に手に入るもんじゃからなぁ…。一生をレベル1で終えるものも少なくないんじゃよ。その疑問はちょっと理解できぬの。SK2は自然に上がっていくから生活には困らんしな……」
「そうですか、ありがとうございます」
二人は席を立ち、一礼してからこの教室のような部屋を出ようとした。
そんな二人にデイスは声をかける。
「これ、サクラや。もしかして何か悩みがあるんじゃ無いか? ……服のことで」
「あっ…はい! そうなんです…ちょっと露出が高くてコレ……その」
「ふむ、そうなのかの? 普通だと思うが…。ま、気に入らんのだったら肌の露出が少なめなのを、ワシから国王に頼んどいてやるがの?」
「あっ、ありがとうございます!」
「いいんじゃよ、あとそれと……」
デイスは二人を交互にみると、少しはにかんだ。
「お主らに何があったかは…言わぬ…いや、知らぬが、一度あることは二度ある、二度あることは三度ある。互いに仲良くの。特に夜中は」
「…………? わかりました」
二人は自分達の部屋へと戻った。
既に時刻は22時10分だ。昨夜起こったことなど、授業の合間にいつの間にか忘れてしまっていた。
二人は寝巻きに着替え、ソファに座り、今日あった出来事を話し合っていた。
「いろんな事さ、知れたね」
「うん。あの人ちょっと喋り方おかしいけどね」
「そー、私、見えないからわかんないけど、あの人何歳なの? 声だけじゃわかんないんだけど、50歳位?」
「いや…20代後半くらいだよ」
「……おー…すごい年季の入った喋り方ね」
「うん、あの人、預言が当たる確率もだいたい9割近くだったし、かなりの実力者ってやつだと思う」
カナタはメイドに入れてもらったココアを一口飲んだ。
「ところで、ダンジョンについてどう思う? デイス先生がさ、ダンジョンは一度でちゃうと、折角倒した魔物が復活しちゃうって言ってたけど……」
「なーに? カナタなんか変な事考えてる?」
サクラはカナタに向かって首を傾げてみた。
照れ隠しに、カナタは顔を背ける。
「い…いや…兄ちゃんなら絶対、そういうのは何百回、何千回と出たり入ったりするな、と思って」
「確かにそうね、有夢兄ならやりかねない」
「俺はさ、兄ちゃんのあの非効率なプレイ方法が本当は嫌なんだけど……この世界で、それに頼ろうと思うんだ」
「………なんだか、今日は不思議。叶が頼もしくみえるよ。珍しく」
サクラにとって本音を言うと、カナタはいつも頼もしい存在なのだが、彼女もまた、照れ隠しに言葉を逸らした。
「と…とにかくそろそろ寝よう」
「そうだね……えーっと……あ」
カナタは今、思い出した。
昨日の夜の事を。
「じゃあ俺、ソファで寝るから…」
「え? どうして………あ」
サクラもまた、今、思い出した。
「い、いや、いやいや、良いわよ! 私がソファで寝るわ! カナタはほら…いろいろ考えてるんだから、ベットで寝なさいよ、ね?」
「いやいや、あれだろ…その…女の子がベットで寝て、男である俺がソファで寝るのが普通でしょ?」
「いや、何そんな紳士ぶってるのよ!」
「我はいつでも紳士であるぞ……? いや、それはともかく、俺はソファで寝るから…おやすみ」
「あーー、もう、埒があかない、バカっ! __________」
________
_____
___
「……ど、どうしてこうなったんだろ……」
カナタは下手に手を動かせない状況で、眠い目をこすることもできずに固まっていた。
ベットの上で幼馴染に絡まれながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます