第205話 不穏な情報

「北の国、ユ…ユグドラシルが、我が国に戦争を仕掛けようとしているという情報を…潜伏している兵士から得ました」


 ふえっ…!?

 また戦争が起こるかもしれないのかな?


 北の国ユグドラシル…北の国と言っても、ここから見て北にあるというだけで、極寒地というわけでもなかったはず。

 あの国の特徴としては、エルフやドワーフなどの魔族や獣人が他国より多く住んでいるということ。奴隷として。


 ウルトさんによって、完全に奴隷制度が撤廃されたこのメフィラド王国と違って、ユグドラシル神樹国は奴隷業が盛んだ。

 人族が、領土内の獣人や魔族を奴隷として捕えてまわっている。人族の人が身売りや破綻や誘拐で奴隷になる場合もあるみたい。正直言って印象も治安も良くないし、行きたくないところだね。


 それにしても、この時期に戦争をふっかけてくるとなると…あれか、サマイエイルによって戦力が低下しているのを狙ってとか?

 いや、流石にそれはないかな。

 この国がほぼ無被害だったっていうことはアナズム中には広まってるはず。


 それに、俺の活躍を聞いてると考えるとすると、不可解だよ。俺みたいなやつがある場所に手を出したらどうなるかわかると思うんだけどな。

 自殺しに来るみたいなもんじゃないか。


 いや、それとも俺や、他の国に比べて圧倒的に多いSSSランカー達をどうにかできる何かがあるのか…?

 うーん…。


 

「そうか。連絡ご苦労。しかし、時をわきまえて欲しかったな。今は子供達と食事中だ」

「あっ…その、申し訳ございません!」

「まぁ、良い。さがれ」

「はい」



 使用人は、食堂から出て行った。



「すまぬな、皆。なにやら物騒な話があったが…とりあえず、今は飯を食おう」



 当たり前だけど、あんな話があったら心地よく食事ができるはずがない。

 急激に、この昼食は面白くないものになっちゃった。


 全員食べ終わったと同時に、国王様が立ち上がった。



「先程、不穏な情報が入ったが…」

「まさか、アレが原因ですかね?」


 

 俺はそう言った。

 ちなみに、アレって、アムリタのことだよ。



「いや、その可能性は極めて低いだろうな」

「では、なんなのでしょうか…?」



 今度はカルアちゃんが訊いた。

 国王様は首を振る。



「あの国とは古くから仲が悪かったが……。具体的な理由は正直なところ、今は解らぬ…が、念のためだカルアよ。しばらくはこの王都から出ない事だ。また、あの夜のような事が起こったら困る。ティールやルイン達にもそう言っておこう」

「え、それじゃあ…その、アリムちゃん達との修行は…?」



 カルアちゃんはすごく残念そうな顔をしている。

 そりゃそうだろうな、つまり、1ヶ月半待った約束がさらに引き伸ばされた訳だ。



「…………済まないが、また何ヶ月かは我慢して貰うしかないな。せっかく、我が息子達を勇者が鍛えてくれるというのに……申し訳ないな、アリム、ミカ」

「いえ、ボク達に時間がある時なら何時でも構いませんよ。ね、ミカ」

「ええ」

「そうか、すまないな」



 そのまま、国王様はお部屋に戻っていった。

 俺とミカとカルアちゃんも、部屋に戻った。



「ごめんね、カルアちゃん」

「いえ…アリムちゃんとミカちゃんが悪い訳ではないですし…それに、前みたい私がみんなに迷惑をかけるわけにもいきませんから」



 カルアちゃんは俺達に笑って見せた。

 でも、目の奥底は、残念だったと本音を語っているように見える。

 何か、慰められるような事は……そうだ、そういえばカルアちゃんは一度も俺の家に来た事がない。

 カルアちゃんの部屋の窓から見えるほど近いのに。

 そうだ、それでいこう。


 とりあえず、ミカにカルアちゃんを家に泊めても大丈夫かメッセージで訊いてみる。



【落ち込んでるよね、カルアちゃん】

【そうだね…。何か喜んでもらえるような事できないかな?】

【そこで考えたんだけど、ウチに泊めるのはどう?】

【10日間も?】

【いや、その10日の休みの間にミカと2人っきりでじっくりする時間も欲しいから…1週間なんてどうかな?】

【もぅ…アリムったら…大好き! 良いと思うよ】



 よし、なら決まりだ…あとは、国王様の了承だけだね。

 どうせ、カルアちゃんはウチに来たがるだろうし。



「ねえ! カルアちゃん、このお泊りが終わったらさ、鍛錬のかわりにさ」

「はい、何でしょう?」

「ウチに…そこの屋敷に遊びに来ない? 泊りで」



 そう言った途端にカルアちゃんの顔がすごく明るくなってくる。



「い、良いのですか!?」

「勿論だよ! 国王様に了承は貰ってね? 因みに1週間を予定してるんだけど…」

「1週間…アリムちゃんとミカちゃんのお屋敷にお泊りですね……わかりました、お父様に今、相談してみます」



 カルアちゃんは国王様にメッセージを送り始めた。

 そして、すぐにニコニコした顔でこちらを振り返る。



「了承してもらいました! アリムちゃん達の家ならこの城よりも安全だろう…ですって」

「そっか…じゃあ明後日、ボクとミカの家に来なよ。場所は分かるよね」

「ハイ、そこから見えてるので!」



 というわけで、カルアちゃんが1週間、家に遊びに来る事になった。

 あ、でも途中でローズが来たら……カルアちゃんに説明すれば良いか別に。



 

 俺は知らなかったんだ、この時は。

 まさか、ユグドラシル神樹国に俺から望んで行く羽目になるなんて___

 




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次話から第二部です。

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