第199話 人間化

 かざしたはいいが……何も起こらなかった!



「あ……ありぇ?」

「何やってるの? アリム…」

「いや…かざしたらゴールドローズクィーンドラゴンにスキルカードが……」

<魔物にスキルカードは意味無いぞ?>

「え……」



 じ…じゃあ、どうしたらいいの!?

 もしかして、いきなり実験失敗?



「どうしよ…わかんない」

「自分の額にかざしたら、使い方がわかるでしょ?」

「あっ……うん。一回かざしたんだけど、説明は見忘れてた」

「やっぱり、たまにアリムってドジだよね…お茶目さんなんだから…もう」

「てへっ」



 俺は、今度はこのスキルカードを額にかざしてみた。



【「人間化★★★★」

人間でないものを、このスキルがMAXの状態に限り、一度だけ人間にすることができる。対象は動物、魔物、植物、人形、人物画。何かを人間にした後は、このスキルは消えてしまう。対象が人間になった際、人間として生活していくのに必要な知識は自動で与えられる。さらに、魔物や動物が人間になった際はレベルや扱える魔法などがスキルとして引き継がれる。人から元のものに戻ることはできない】



 つまりあれか、自分のSKPがパーになるかわりに人間一人を作り出すということか。

 え、これ本当に星5じゃないの? アムリタ級の禁忌でしょ、こんなの。

 性別変換しかり、スキルシステムはたまにとんでもないことをする。



「どうだった?」

「大丈夫、使い方がわかったから」

<おぉ、我は人間になれるのだな…っ! まさか人間になれるとは思ってもみなかったからな>

「まぁまぁ、もう少し待っててね」



 再度、俺は額にスキルとカードをかざして、そのスキルを取得した。

 さっそく、SKPを割り振ってみようと思う。



--------------------------------------------


人間化


★★★★ SKP:0/5555


Lv.MAX: SKP-5555


--------------------------------------------



 やっぱり、消費するSKPは星4にしてはかなり多いな。

 まぁ、なんら問題はない。すぐにMAXまで割り振った。


 レベルの項目をさらに詳しく調べることによって、このスキルを意識しながら対象物に触れれば人間にできるという事もわかった。



「よし…じゃあ人間になる心の準備はできてる? ゴールドローズクィーンドラゴン」

<あぁ、バッチリだ>

「じゃ、いくよっ!」



 俺はスキルを意識した。すると、右手が銅色に光り出す。正直言って色合いが気に入らない。

 いや、そんなことはどうでもいい。


 俺はゴールドローズクィーンドラゴンに向かって駆けていき、足の爪の先端に右手で触れた。

 足の爪だけでも俺ぐらいの大きさがあるこのドラゴンが、どのように人間になるか楽しみだ。



「ウ…ウォ……ウグオォォオオォオツ!!」



 ゴールドローズクィーンドラゴンは大きく鳴く。

 それとともになにやら辺りからものすごい量の煙があがってきた。

 すぐに、煙によって周りがなにも見えなくなる。


 失敗したか、これって外でやった方が良かったかな?

 いや…別にこの部屋は換気機能も完璧だから問題ないかな?

 そんな心配をしていたけれど、それはどうやらいらなかったようで、自然に煙は晴れていった。


 

「凄い煙だったね」



 ミカもこちらにやってきた。



「うん、そだね。ゴールドローズクィーンドラゴンはどうなったかな?」



 あたりをよく見回すと、俺達より少し離れた場所に裸の女の子が一人、仰向けで倒れていた。

 どう考えてもゴールドローズクィーンドラゴンが人間になってるんだ。


 俺とミカはその人間まで駆けていった。


 容姿は大体、15~18歳か。

 髪の毛はかなり長いロングの金髪。

 普通の金髪と違うのは本当に金のように輝いている点だ。

 そして身体のところどころにホクロのように黒いバラ模様がついている。

 また、耳にはドラゴンであった名残のように、ヒレっぽいものがついている。

 その点については、いつか図鑑で見た竜の獣人そのまんまだ。

 


「ぅ……うぁ?」



 しばらくして、ゴールドローズクィーンドラゴンが目覚めた。



「おはよう、気分はどう?」


 

 俺はゴールドローズクィーンドラゴンであったこの娘に、羽織れる物を渡しながら様子を訊いてみる。



「かたじけない。……あーあー……なんだか頭がクラクラするぞ…」



 俺から布を受け取り、羽織った彼女は辺りをキョロキョロと確認するように見ている。

 良かった、普通にしゃべれるようだ。


 それにしても凄いのはその目だ。

 瞳の中に薔薇が咲いてるように見える。

 顔もかなり美人だしね。良かったね、美人で。



「ボク達がわかる?」



 彼女は俺たちの方を向いた。



「赤髪の少女と、緑髪の少女だな…背が大きくなったか?」

「いや、それはゴールドローズクィーンドラゴンが縮んだからで…」

「あぁ…そうだったな…ん…よっと」



 ゴールドローズクィーンドラゴンは難なく立ち上がった。

 足の扱いとかも問題ないみたいだ。



「人間は…小さいな。やはり」

「まぁね、あ、自分の姿を確認してみる?」

「あぁ、頼む。やはり汝らのように美形が望ましいが……」

「その心配はないよ」



 俺は鏡を用意してゴールドローズクィーンドラゴンに見せた。

 鏡に、姿が映りこむ。



「ね?」

「おぉ…ちと髪が長すぎるような気もするが…我は人間になれたのだな。この姿は竜の獣人の娘か」

「そうなるね」



 ゴールドローズクィーンドラゴンは自分の姿を確認してはしゃいでいる。

 中々見ていて面白い。



「とりあえず、自分のステータスを確認とかしてみたら?」

「おぉ、そうだな」



 ミカの勧めにより、ゴールドローズクィーンドラゴンは自分のステータスを確認しているようだ。

 しばらくしてステータスの閲覧をやめたのか、こちらを振り向いた。



「どうだった?」

「最初から高レベルなのだな? 我が憶えていた魔法も全て使えるようだし」

「まぁ、魔物の時の強さがそのままだから」

「そうなのか…あ、ちなみに我の名はローズ……ローズ・ゴールディと言うらしいぞ? よろしくな」



 ローズは両手を俺とミカに差し出してきた。

 俺らは手を握る。



「ん、よろしくね。ボクの名前はアリムだよ」

「私はミカ。よろしく」

「おぉ、よろしくな! アリムよ、ミカよ!」



 ローズは嬉しそうに腕を振り回した。

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