第139話 戦争の準備-3-

 回復手段はミカに任せるということで話が済んだ。

 次に必要なのは…なんだろう?

 俺ってば、国王様に自由に行動する事を要求したくせに、やる事決まってないんだよね。

 カルアちゃんに案を募ってみるかな。



「カルアちゃん、カルアちゃんって人を大きく動かす事って得意? 戦争とかみたいに」

「え? えぇ、お父様から色々と教わって、ある程度は心得ています」

「じゃあさ、回復手段以外に戦争に必要そうなのってある?」

「うーんと…食物とかでしょうか?」



 そこで一呼吸を置き、「ですが…」と、カルアちゃんは続ける。



「アリムちゃんとミカちゃんがさっき話してた内容によると、半日で勝負が決するような策がある…のですよね?」

「うん、そうだよ」


 

 俺はコクリと、首を頷いてみせた。


 

「私、悔しくもアリムちゃんとミカちゃんの作戦がどうゆうものか、よくわからなかったんです…。一度、詳しく説明して頂けませんか? そしたら、なにか閃くかもしれません」



 後で説明するつもりだったけれど、今でも良いかな。いつになく、カルアちゃんの表情が引き締まってるように見える。

 見るからにヤル気が満ち溢れてるなぁ…。

 案を考えるのに、そんなに気張らなくて良いのに。


 そんなわけで、ステータスを見せるために、俺はトズマホを取り出した。

 ミカにもトズマホを取りだして、カルアちゃんに見せるように促す。



「えっーと…これはアリムちゃんとカルアちゃんが持ってる光る石板…ですよね? なんなんですか、それは?」



 あ、そこからの説明か。



「んーっとね、これは色んな機能がついてるアイテムなんだよ。トズマホって言うんだけどね______」



 とりあえずは自分のステータスをこの石板に表示でき、脳内のステータス表示と同じ事もできるという事を伝えた。

 その他の機能は今回は省略。



「やっぱり、そのトズマホというアイテムもアリムちゃんが?」

「うん、そだよ。今からこれにボク達のステータスを写すね。それが同時にボク達がやろうとしてる事の説明にもなるからね」



 カルアちゃんはなんの躊躇もなく、すんなりと画面を覗き込んでくれた。

 どうやらカルアちゃんはステータスを他人に見せる事に関しては抵抗が無いタイプの人みたいだ。

 


 俺とミカの画面を見せながら、ステータスと今回使うスキルも詳しく説明した。

 ステータスやスキルを見せるたびに目を大きく見開いて、驚いているカルアちゃんはなんか愛くるしい。小動物みたいだ。

 

 一通り、スキルやステータスを見せ終わり、トズマホをしまう。

 ちなみに、俺の『性別変換』は非表示にしておいた。これはマジで他人に見せるわけにはいかないからね。



「その……半日で終わると言っていた意味がわかった気がします…。正直、強さが神様みたいです」



 そう言っているカルアちゃんの顔はブルブルと震えて真っ青だ。

 驚きすぎて身体に影響を及ぼしたのかもしれない。



「じゃあ、カルアちゃん。これを踏まえて、後は何を作れば良いと思う?」

「……正直言うと…お二人の力であっという間に悪魔との戦争は終わらせられるでしょう。ですから今、私が考えるのは犠牲を出さない事! 作るのだとしたら……やはり、兵が死なないようにステータスを上昇させる装備や防御壁です!」



 あぁ、そうか。

 そうだよね、回復手段が整ってるとしても、街の方に被害が出たりするかもしれないもんね。

 犠牲を出さないための装備やアイテム…か。

 その案、採用だね!



「ありがとう! カルアちゃん。犠牲を出さないためのアイテムを考えるよ!」

「はい、私、お役に立てて嬉しいです」



 カルアちゃんは満面の笑顔でそう言った。

 本当に嬉しそうだ。

 ステータスを見せて、俺達を怖がるようになるかもしれないと考えてもみたけれど、それはいらない心配だったよ。


 そうと決まれば、さっそく俺のスキルを乱発していこう!

 これから作るのは大量のアイテムだ。

 二人にはこの部屋から出てもらおう。

 溢れた物で押しつぶされても困るし、協力してもらえる事ももう無いしね。


 

「じゃあ、ボクはこれからダークマターを駆使してアイテムを作っていくからね! 悪いんだけれど、もう手伝って欲しい事は無いかな。二人は休んでてね」

「むぅ…わかった…。アリム、頑張ってね」

「我が国のために…本当にありがとう、アリムちゃん」



 そう言って、二人をマジックルームから出て行かせた。


 よし、それじゃあその装備の効果を考えないとね。

 誰にでも装備できて、活用できる物と言ったらステータスを上げる腕輪とかだね。


 それじゃあそれには、『全スータス上昇×元の2倍』とかが良いかな。

 あと『防御壁』か。

 腕輪そのものの素材は水晶あたりの安めの鉱石で良いかな? 

 素材が安いとMP消費も減るからね。


 いや……あー、そうだ、そういえば戦争が終わってからその腕輪をネコババされても困る。

 だから素材そのものに『装備してから1日で消える』と言った類のエンチャントをつけておこう。

 あ、これはレジェンドポーションにもつけとかないとダメか。

 あとでさっき作ったポーションに追加で『売れない』とかのエンチャントをつけておこう。

 

 だんだんイメージが固まってきたね。

 今の時点ではその腕輪一つ作るのに必要なMPは120…かな…。MP回復ポーションを呼び出せば俺は実質無限にMPが使えるから、もう少しエンチャントしても良いだろう。


 そうだな……どうせだし、対悪魔のエンチャントがないかトズマホで調べてみるか?

 国の重鎮ですら閲覧するのに許可が必要な本の中にはそういうのもあったはず……。


 俺はそう考え、トズマホの検索機能で悪魔の弱点かつ、魔物にも有効なエンチャントを検索する。

 

 お、すぐにヒットした。

 なになに……。『光属性が効果が高い』だって? 

 ふむ、わかった。なら腕輪にさらに『装備者のありとあらゆる攻撃に光属性が追加される』効果を含めよう。


 それにさらに、『疲労耐久』や『装備者常時清潔化』をつけたら、腕輪一個につき160のMPを消費してしまうようになった。 

 まぁ、これといって問題はないでしょ。


 そんな1万5千人分の腕輪を2つ作る。予備も合わせて4万個で良いかな? 十分だよね。


 640万のMPが必要となったけど、すぐに作れた。

 ポーションを飲むたびに、MP乱用による頭痛や吐き気が治まるのはいい。

 だけれどお腹がポーションでタポンタポンだよ…。


 そんじゃあとは、さらに広範囲に効果が有りそうで、街を守ってくれるようなでかい物でもつくってみるか? 被害はなるべく出したく無いものね。

 それは戦争の外の事でも同じ。

 戦地がどれだけ広いか俺にはわからないから、とりあえず街を守る効果をつけたでかいを20個でいいか。


 基本的な効果はほぼ腕輪と一緒でいいよねー。その半径数キロ内にいる人間はステータスが上昇するって感じで。

 それと、攻撃されたら自動で展開される協力バリア…『大守護』ね。


 あ、あとこれも腕輪と同じように悪魔を弱める効果もつけようか。とは言っても悪魔のことよく知ってないとな。捕まえてる悪魔の髪の毛でも抜きに行くか。


 そんなわけで俺は城の地下牢に透明化して忍び込み、悪魔からそっと髪の毛を一本抜いてきた。

 一杯しか自白薬は飲ませて無いのに、まるで廃人みたいになってた。

 あれぇ…そうはならないように作ったつもりだったけれどなぁ…慌ててたからかな…調合間違えちゃったかな? テヘペロ。


 ま、敵の安否なんてどうでもいいや。

 これをさっさと解析し、『悪魔劣化』なるエンチャントを開発した。

 まぁ、エンチャントはこんなものかな。

 

 それで見た目なんだけど…別になんでもいいよね? どうせだからあの『ドラグナーストーリー3』に出てきた女神像でいいかな。


 そういえばドラグナーストーリーのことなんて久々に考えたな。まぁ、今となってはどうでもいいよ。


 女神像はその優しそうな顔に畳んだ翼。両手は人に安心を与えるような緩やかなポーズ。

 そしてゴワゴワした感じの布。自由の女神と同じような感じの巻布だったよ。確か。


 そんな置物を作る。動かせやすいように魔力で少し浮いている。

 直径7メートルくらいのでっかい女神様の置物を20個製作した。

 かかったMPは8000。思ったりよかかってしまった。


 場所にもよるけど、今俺が作ったもの全て合わせると、兵士一人の能力が最大7倍になる。これは大きいだろうね。さらにミカの魔法での即時回復…もう言う事ないね。完璧だ!


 じゃあ、作ったこれらを戦争に参加する人全員に配ってもらえるように、国王様達お偉いさん方を呼ばないとね。

 ふふふ、驚く顔が見れるよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る