第138話 戦争の準備-2-




「よし! じゃあボクはそろそろ仕事するよ。二人はどうするの?」

「仕事? アリム、何するの?」



 ミカが質問をしてくる。

 カルアちゃんも、何のことかわからないみたいだ。

 あぁ、そうか。

 ミカとカルアちゃんにはまだ話してなかったっけ?

 説明しようと思ったのも束の間、先に開いたのはカルアちゃんの口だった。



「アリムちゃんは悪魔との戦いを有利にするためにお父様達とは別に行動するのですよね? 今朝、お父様からそう聞きました」

「そうなの? なんで?」



 カルアちゃん、国王様から聞いたのね。

 じゃ、もうちょっと詳しく話すか。


 俺はそれが、国王様からの礼代わりであることなどを追加で二人に話した。

 そしてその理由も。

 理由と言っても大したことじゃない。この戦争で自分の実力をある程度、把握したかっただけなんんだ。

 まぁ、それは裏向きの理由で、表向きの理由としては『力になりたいから』とだけ説明したけれどね。



「というわけだから、ボクは作業にうつるね」



 そう言って、俺はマジックルームのドアに手をかけて開いた。



「あぁ、待ってアリム! 私にも何か手伝わせてよ」

「わ…私も何かご協力します」



 彼女達は開けられた扉からマジックルームへと滑り込んできた。

 ミカはまだしも、カルアちゃんに手伝ってもらうことはないような気がするんだけれど…気持ちは嬉しいから良しとする。



「で、アリム。まずは何を作るの?」



 と、ミカは訊いてきた。

 


「ポーションを大量に作るんだよ、兵が死ななきゃ、負けることはないからね」



 そう言いつつ、ダークマターを使うために魔力を集中させる。

 ミカが何か考えているみたいだけど、とりあえずは気にしない。

 さっさとポーション何万本も作っちゃおう。


 数秒でひとまず、レジェンドポーション1万本が完成した。

 ほぼ全てのMPをこの一瞬で全て消費したから、頭痛やら吐き気やらがする。

 うーん、100万ものMPを一度に使うのは身体にあんまり良くないのかな。

 そんなに使ったことないからわかんなかったけれど。

 とりあえず、アムリタを飲んでMPと共にそれらの症状を回復した。

 

 そのあとすぐ、次の1万本を作り出そうとしたんだけれど、「まって」と、ミカがそれを制止した。



「どしたの? ミカ」

「アリム…今作ったの、レジェンドポーションよね?」



 カルアちゃんはそれを聞いて驚いていたみたい。実際、伝説上の薬だしね。

 カルアちゃんが実物を見たのはマスターポーションまでだ。


 でも、今はミカの話の方が重要。俺はそんなカルアちゃんの反応に構わずに話を続ける。



「うん、そうだよ。強力なポーションが何本もあれば、かなり有利になるでしょ」

「そうだけれど……もしかしたら、要らないかもしれない」



 要らない……ん? なんでだろう。

 でもミカのことだから、なにか考えがあるんだろうね。

 学校じゃ、俺よりミカの方が頭良かった。

 うん。

 黙ってつづきを聞こう。



「えっとね…私の『太陽と月の神弓砲』を使えば味方を回復しながら攻撃できるってのは、アリム、知ってるよね?」

「あぁ、うん」


 

 成る程、確かに太陽と月の神弓砲を使えば回復にもなるし、攻撃にもなる。SSランクの魔法だし、物凄く強いのは確か。

 だけれど、どうやって兵や敵全体に、満遍なく行き渡されると言うんだろう?

 はっきり言って難しいような…。



「いい案だけど…どうやって戦場全体に行き渡さるの?」

「あぁ、それはね、私の『太陽と月の神弓砲』は、雨にできるから…」



 あぁ!! 雨ね。

 その手があった。

 そういえば、『太陽と月の神弓砲』は雨のように振らせることもできたんだった。忘れてた。

 ミカが神弓砲の雨を降らせた場合、俺らは普通のレベル最大より、魔力が10倍近くあるがゆえに、おそらくその雨一粒でCランク以下の冒険者は全回復するし、Cランク以下の魔物は絶命するほどの威力はある。

 それに、レーザー型と違って広範囲に振らせることが出来るよね。雨だったら。


 MPの消費は、アムリタを使わないと追いつかないと思うけれど、とても良い案だ。

 

 でもちょっと待てよ。

 だとすればかなりのMPを消費してしまうことになる。

 アムリタを飲みながら放つにしても、ずっと降らせ続けるのは難しいだろう。

 そこはどうするんだろ?



「いいね! ミカ。雨ならみんなを常に回復させてあげれる。当日、是非そうして…って言いたいところだけど、すぐにMP無くならない?」

「ふふふ、その問題はないよ」



 ミカは得意げに笑った。

 一方、カルアちゃんは話についていけてないみたい。

 後でちゃんと説明してあげなきゃね。

 ミカはその問題の解決方…というよりは、スキルの詳しい説明を始めた。



「ずっと使ってるとMP切れを起こす……それは前の段階の『太陽と月の弓帝砲』の話よ! 『太陽と月の神弓砲なってからはね、瞑想して力を溜めれば溜めるほど、威力や継続時間が大きくなるの。だから、瞑想さえすればMP削減できるの」



 そうだったのか。

 そういえば、『太陽と月の神弓砲』に関しての詳しい説明はミカから教えてもらってなかったな。

 そんな新しい効果があったんだね。

 ミカは説明を続けている。



「大体、1日溜めれば、100万MPで雨を半日は降らせることができることは、なんとなくわかってるの。半日もあればそれで十分でだよね?」


 

 半日間の『太陽と月の神弓砲』……確かに十分だ。

 仮に悪魔が100万体居たとしても、兵や高ランク冒険者も活躍するだろうし、俺も居る。

  敵にとって、『太陽と月の神弓砲』の雨って、強力な酸が降り続けてるようなもんだし、半日も降らせれば最悪半壊。良くて全滅させられるだろうね。


 

「じゃあ、それでいこう! お願いね、ミカ」

「うん、任せてよ。だから明日は一日中瞑想しないとね」

「な…何が何だかよくわかりませんが…ミカちゃん、頑張ってください!」

「うん、頑張る!」



 ミカ、強い。それは良いんだけど…。

 とほほ……見事にポーションが無駄になっちゃった。


 どうしよう、この1万個のポーション。

 ……捨てるか?


 いや、だけど、やっぱり無いよりはあったほうが良いよね?

 とりあえず、レジェンドポーションは1万本追加しておこう。

 これで回復事情は完璧かな?

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