第109話 金の薔薇の女王竜

 俺らが入ってきた門が閉まる。

 それと同時にドラゴンが動き出した。



〈汝ら人の子よ…〉



 しかも喋った。ドラゴンは話を続ける。



〈我と闘う資格を良くぞ得た。褒めてやろう。我こそは、ここの真の主。#金の薔薇の女王竜__ゴールド・ローズクィーンドラゴン__#なり〉



 おおっ、名前おしいっ! 女だったか。

 俺はミカに話しかける。



「ねぇ、ミカ、この竜さ。もう倒していいと思う?」

「話し終わるの待てば?」

「そうだね」

〈何を話している人の子よ〉


 

 あ、こいつ言わされてたんじゃないんだ。ちゃんと自我が有ったんだね。話しかけてみようかな。主にどうでも良いことで。

 ここ数日の疲れとかを吹っ飛ばしてくれるかも。



「あの…ゴールドローズクィーンドラゴンさん?」

〈ほう、なんだ? と、……よく見れば汝ら、まだ幼き少女ではないか! 汝らだけでこの迷宮に入ったのか? 人の子の大人は居らぬのか?〉



 あれこいつ、意外とそういうの気にするのか。つーか、朝起きてから、有夢に戻るの忘れてた。ま、いいか。

 面白いからもう少し話をしてみよう。



「そうですよ! ボク達だけです」

〈な……なんと!? 初めてここに辿り着いたのが幼き少女二人か! ……はっはっはっ! コレは面白い〉



 いやいや、そんなことより俺は一つ聞きたいことがあるんだよね。

 


「ゴールドローズクィーンドラゴンさん、幾つか、聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

〈ふむ、特別だぞ。何が聞きたい。我が知り得ている範囲ならば教えてやろうぞ〉



 俺はミカにメッセージでこっそり聞く内容を教えている。ミカは笑いを堪えているようだ。

 『ここでそれきくの?』とメッセージも返された。



「ゴールドローズクィーンドラゴンさんは、どうしてここに居るんですか? 暇じゃないんですか?」



 この問いにゴールドローズクィーンドラゴンは口をポカンとさせた。

 そして、しばらくしてこう答える。



〈そうだな…我はここで産まれた。そして今、この世で生を受け、眠りから目覚めた。言わば迷宮に作られし存在なり。暇などとは感じる時間などないわ〉



 あ、意外と可哀想な答えだったなぁ…。ミカも『聞かなきゃよかったわね』ってメッセージで言ってる。



「そうですか…じゃあ、倒されて終わりなんですね」



 その答えに対し、ドラゴンは咆哮を上げ、激しい口調で言う。



〈笑止。汝らが我を倒すだと? なに戯けたことを言っているのだぁぁぁぁっ!!〉



 咆哮…威嚇か…。そうだ、もしかして、俺も威嚇できるかもしれない。

 威嚇のやり合い、かっこよさそう。


 俺は瞬時に有夢に戻り、深く鋭くドラゴンを睨みつける。

 すると、何故かミカがビクッとした。あ、まさかこの間のコレって思わず威嚇してたのかな?


 ドラゴンも俺の威嚇が効いてるのかかなり驚いた顔をしている。



〈な…っ!? 成る程やはり、ここに来られるだけの実力は有するということか。良いだろう、かってこい〉




 その言葉を合図に俺は一瞬の間にドラゴンの背後に回り込み、[剣極奥義・五の滅]で尻尾を根本から切り取った。

 ちなみに切り取る瞬間にアリムに戻っている。



〈ぐぉぉぉぉぉっ!? いつの間にっ!〉



 俺はこのまま俺が全て一人でやっちゃっていいか、ミカに聞く。

 


「全然いいよ。というか、その方がいいと思う」

「わかったよ! ありがとう」

〈なにをヌケヌケと喋っておるのだぁぁぁっ!〉



 そんな怒らないでいいじゃない。

 俺はさらに、両腕、両足、羽を斬る。

 本当はひとえに殺してもいいんだけどね。この方が解体しやすいんだ。



〈ぐぁぁぁ……ぁ! あ……我の…負け…か。歯も立たなかった………………くそっ! ひとえに殺せ〉









 そんなこと言ってるけど、実はこのドラゴン。すでに2回は死んでいる。


 一回目は実は尻尾を切り取ったと同時に首を切り取り、体の全てを収納。

 鱗を一枚取り出し、それにアムリタを振りかけて復活させる(再生スピードは振りかけた者基準になる)

 その間にまた尻尾を取る。


 二回目は両足腕羽を斬ったとき。実は首も斬り、身体全体も収納。鱗を一枚とりだし、こんどは口に[レジェンド・ポーション]を飲ませる。復活した。それを確認し、その後に、また尻尾と両足腕羽を切り取る。


 そして現在に至るんだ。SSランクだから俺がしていることに気づくかと思ったけど、全く気づく様子もなかった。

 そもそも、まだ本気出してなかったのかも。

 アムリタの実験と、魔核・素材になってくれたゴールドローズクィーンドラゴンさんに感謝。


 でも、まだ一つ実験が残ってんだよね。まぁ、それは一回倒した後で。



「うん、それじゃあ。ゴールドローズクィーンドラゴンさん、また後でね」

〈また後で? 一体どういう……〉

「それは後で分かるよ」


 

 俺はゴールドローズクィーンドラゴンを倒した。



 倒したゴールドローズクィーンドラゴンを解体している俺に、ミカが俺に聞いてくる。

 ちなみに、この時点でさっきの死骸二匹分も解体している。



「また後でって…どういうこと?」

「俺らにはアムリタが何本もある」

「あ、何回も倒して素材沢山手に入れよう…みたいな?」

「うん、まぁそんな感じ。一つ試したいこともあるし」

「でも、ゴールドローズクィーンドラゴンさんが少し可哀想……」

「まぁ、そうだね。その分、痛くないようにしないとね」


 

 俺はゴールドローズクィーンドラゴンが居た場所から出てきた宝箱を眺めながらそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る