第88話 海戦 13


    ◆





「くっはー。おっさんもえげつねえな」


 ヨモツが豪快に声を上げる。

 反面、怪訝な表情でコンテニューは訊ねる。


「どういうことですか? 敵のジャスティスが攻めているように見えますが」

「あれはわざとだよ。わーざーと」

「わざと、ですか?」

「あのおっさんの凄いとこで、俺が真似できないとこだよ」


 ヨモツは、いいか、と説明する。


「今、倒されたジャスティスは全て――囮だ」

「囮、ですか?」

「ああ。相手ジャスティスの動きがかなり良いのは認めるが、それでもあのおっさんの範疇だろうよ。っていうか作戦な」

「あれだけジャスティスを破壊されてしまっているのが、ですか?」

「そうだ。本当は魔王相手に使うつもりだったんだろうけどな。見ろよ」


 映像には相手ジャスティスが相変わらず無双をしている様子が映し出されている。

 相手の目的は十中八九、中心に立つブラッドの乗るジャスティス。


「おかしいと思わないか? 何でこんなに直線的におっさんの所まで行けるのかって」

「……そうですね。相手ジャスティスはジャアハン国のモノですから『サムライブレード』のオプションはありますが、普通のジャスティスですからね」

「そういや、何で奪われてんだ、ジャスティス。陸軍のもんだろ、一応」

「いつものアレですよ」

「ああ……アリエッタ派の単独行動か。お前も苦労しているな……」

「いえいえ。――さて話を戻しましょう」


 コンテニューは一つ手を打って続ける。


「直線的にブラッド元帥のもとまで行けることがおかしいというのは、確かにそうですね。陸軍のジャスティスでも耐水性はありますが、水中移動は普通に泳ぐしか出来ないですからね。人間と同じように」

「そうだ。だからわざわざ地続きにする必要なんかないんだよ」

「そういう誘い方ですか」

 コンテニューの眉間に少し皺が寄る。

「……あまり好きな作戦ではないですね」

「俺もそう思う。だが、俺は嫌いっつーか、さっき言ったけど出来ない、ってやつだな。アリエッタの奴だったら出来たかもな」


 だってよお、とヨモツは鼻を鳴らす。


「部下を捨て駒にすることを前提にした作戦を立てて支持されるなんてこたぁ、俺には出来ねえよ」


 この作戦は端的に言えば、見えているジャスティスは囮で、本命は別にある。

 その囮となるジャスティスが逃げてしまえば、成り立たない作戦である。


「しかも、本命はブラッド元帥のジャスティス、ではないですよね?」

「ああ、その通りだ。今の状態じゃ、ただの艦隊に乗ったジャスティスだ」


 にやり、とヨモツは笑みを浮かべる。


「あのおっさんが率いる軍が海軍と呼ばれる理由が、そろそろ分かるはずだ」

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