第37話 復讐 02

    ◆




「全く、ふざけた話です」


 クロードを支持する国々を潰してきた軍の最高司令官は、いつもの会議室の真ん中で忌々しげにそう呟く。

 あの出来事から、既に一週間が経過していた。

 アリエッタは様々な国で蜂起された暴動を沈めることに追われていた。加えてジャスティスを持ち出して一般人を盾に取りクロードに復讐を行うという失態を犯した軍の尻拭いも行わなくてはならなかったが、それは魔王の恐ろしさ、ということを盾にとって全て正当化、正義として報道させ、うやむやに処理させた。思惑通り、市民は軍部に反旗を翻したりはしなかったが、その代わりに、クロードに怯えることにより家にこもり、商売が成り立たなくなるという社会問題が、主にカーンで発生した。

 この問題が引き続きあるように、クロードの姿はあれから、誰にも目撃されていない。知り合いの家に匿われているのかと捜索を真っ先に開始したが、何処にも彼の姿はなかった。最有力候補であったミュート家は、あの出来事によって真っ先に除外された。

 マリー・ミュートが、クロードに撃たれた。

 大切な一人娘を撃った人物を匿う訳がない。

 それでも、その裏をついているのではないかと疑ったアリエッタは一応の調査を行うように指示をしたが、やはりクロードのいた痕跡は全くなかった。

 彼は何処に行ったのか。

 何処に潜んでいるのか。

 次は誰を――殺すのだろうか。

 市民の噂はやがてマスコミを通じて大きく広がり、今や首都カーンから離れた小さな村や町にも、その恐怖は伝染していった。

 そんな状況を打破しようと、アリエッタは全土に向けて放送をするために、アドアニアのルード軍基地にいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る