覚醒

第2話 覚醒 01

    ◆




 アドアニアは小国ながら、緑が豊かで食糧自給率も高く、また地下資源も豊富であるという、他国から羨ましがられるような国であるが、武力を持たず、政治的交渉によって上手く他国と付き合っていた。さらにその欠けている武力面も、二大国と呼ばれる【ウルジス】と結ばれた平和協定から他国からの侵略にはウルジスが武力介入してくることになっており、実質、アドアニアは平和の国であるという認識を人々から持たれていた。

 しかし、それは七年前までのこと。


 革命暦 173年。


 唐突に、二大国のもう一つであるルードが、何の理由も大義名分もなく侵略行為を開始してきたのだ。

 その際に、二足歩行兵器であるジャスティスが初披露された。動きが素早く、兵器を大量に積んだその機体は今までの戦闘兵器を遥かに凌ぎ、遠くからの映像だけでその圧倒的な性能差を嫌というほど知らされた。

 そんな兵器を送り込まれたアドアニアは即座にウルジスに武力介入を要請した。

 

 だが――ウルジスはジャスティスの圧倒的な力を見るなり、平和協定を破棄。


 結果、アドアニアは数日で白旗を上げ、ルードの支配下に置かれた。



 ここまでの話からは、ルードは悪の存在として恨まれるべきものであるという印象を受けるであろう。

 しかし、アドアニア国内にルードを恨む者はそれほど多くない。

 それは、ルードのその後の処理が非常に上手かったからである。

 まずルードは自国の技術提供をし、瞬く間に工業的な発展を促した。それにより、国の中心部にビルが建ち並び、大型ビジョンが置かれたり電飾が多くなって夜でも明るくなったり、特に発展途上国であったアドアニアにパソコンや携帯電話などの情報インフラ関係の発展はここ数年で目覚ましく変化した。

 結果、町が街となり、アドアニアは大きな利益を得ることが出来た。

 次にマスコミを扇動し、侵略行為も良い方向と伝え、さらに武力介入しなかったウルジスに対する批判を大きくした。

 このことにより、侵略して不満を大きくされるべきルードはクーデターを回避し、大半の国民は反ウルジスとなった。

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