第402話 正義 02
◆
ルード国の戦いから一か月。
世界は変革を遂げた。
ウルジス国を従えてルード国を支配した『正義の破壊者』が世界の支配者となったことについて、異論を唱える国は無かった。
そもそも、異論を唱えられる国が無かった。
最初に『正義の破壊者』が行ったのは、全世界を確実に支配下に置くこと。
赤い液体。
その服用を義務付けた。
服用しない人には容赦なかった。
容赦なく口にさせた。
場合によっては、結果的に殺すこととなった。
『正義の破壊者』に反逆の意思を見せるということや、不利益となる行動を意図的に取った為に。
それだけではない。
クロードは服用した人物の額に全世界で同じタイミングで紋様を浮かび上がらせ、服薬していない人物をも浮かび上がらせた。当然、その紋様はランダムにした為、偽の紋様を描いて逃れることなども出来なかった。
更に隠れている人は、クロードがその能力で見つけ出した。
新生児も、母親からの遺伝で赤い液体の効果が適用されることは、浮かび上がる紋様からも検証されていた。
更にクロードは、全世界に発信した。
この赤い液体を呑めば、相手を傷つけることが出来なくなる、と。
それはあの時の会議で決めた、平和へ導く方法だ。
相手を傷つければ自分も同じだけのダメージを負う。
それをベースとした、暴力への制約。
その時に懸案事項として上がったことも細かい条件として提示した。
ただ一つ。
彼はこのように加えた。
それは赤い液体を飲んでいない人には適用されない、と。
裏を返せば、赤い液体を飲まない人は安全も保障されない、かつ、加えて暴力的なことに肯定的だというレッテルが張られることとなった。
集団心理は恐ろしい。
だからこそ、一人残らず、赤い液体を服用し、服用させられた。
逃れる術などなかった。
驚くほどのハイペースでそれは進み。
この一か月で、赤い液体の影響をその身に受けていない人物は、全世界で誰一人としていなくなった。
そしてもう一つ。
クロードは自身で動き、とあることを成し遂げた。
それは、全世界に散らばっていたジャスティスを破壊したのである。
ルード国が量産ジャスティスの数は百を超えており、各地に散らばっていたジャスティスを一機一機、その手で破壊して行った。更には各国が密かに開発していた類似する二足歩行型兵器も、設計図から含めて破壊して廻った。
その結果。
この世界からジャスティスは消え失せた。
全てのジャスティスを破壊する。
クロードはその目的を、自身の手で遂行した。
故に、この時点でクロードは復讐を果たしたのだ。
これ以上彼が表舞台に立つ理由はないのだが、ここまで世界を巻き込んでおいて――世界をかき乱しておいて、それは許されなかった。
彼は『正義の破壊者』のリーダーとして――世界を統一した組織の長として、頂点に立たなくてはいけなかった。
しかしそれは、ウルジス国の王になるのでも、ルード国の大統領になるのでも、ましてやその二つを統合した新しい国を作ることでもなかった。
世界連合。
各国の長はそのまま。
それらを纏める組織を、新しく作ったのだ。
流石に『
その初代総長に、未成年の少年の名が刻まれた。
実質的な世界の支配者。
世界連合初代総長。
クロード・ディエル。
彼の名は誰もが知っており。
そして、誰もが恐怖した。
そんな彼はルードの戦いの後の一か月は先述の、赤い液体を服用していない人物の探査、ならびにジャスティスの破壊に時間を取られていたので、その総長就任の儀式は未だ済ませていなかった。
そう。
何度も述べている一か月という時間は、全てこの日の為にあった。
任命式。
本日、ウルジス国とルード国の代表も揃い、世界連合の初代総長の任命式が行われる。
場所は両国の占領下ではない。
名目上、中立の地。
アドアニア。
クロードの育ちの故郷で、魔王誕生の地。
これほど相応しい場所はないだろう。
この日。
クロードは再び、人々の心に深く刻まれる存在となる。
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