第380話 希望 09

    ◆???



「――さて、『正義の破壊者』はいなくなりましたね。あなた方も撤収してください」

『撤収、デスカ?』

「ええ。この場に残る意味はありません。実験も出来たと思いますので、ルード国に帰還してください。後の処理はこっちでやっていきますので」

『……貴方ハ残ルノデスカ?』

「ええ。この死体の処理もしなくてはいけませんしね。手伝ってくれてもいいのですよ? その――機体から降りてその素顔を晒して、ね」

『……………………オ任セシマス』

「はい。ではお気を付けて。




 ……………………行ったな。

 さて――大丈夫か?」


「……………………かはっ……」


「……よかった……」

「げほっ……うっ……」

「ああ、あまり動かない方がいい。……ごめん。本当は痛めつけないでおければよかったんだけど、でも君が速すぎて見失ってしまったんだ。こちらの失策だ。お守りに発信機でも付けていればよかったと後悔している」

「あれ……でも……私、声が……?」

「見よう見まねで医療行為をしたんだけど、一応の効果はあったようだな。時間は七年とたっぷりあったから、勉強しておいてよかった」

「医療? ……でも私、心臓を撃たれて……」

「確かに心臓を撃った。だけど、かつ、、だ」

「えっ……?」

出来る可能性は高いと踏んでいた」

「そんなことを狙って出来るものなの……? あ、でも傷は……」

「傷自体はすぐに塞いだ。元々最小限に抑えた。とはいえ、君の身体を傷つけたのは確かだ。それに応急措置レベルだから、血が足りない状態でしばらくは休息が必要……と言っても、そんな暇はないんだけど。誰にも見つからずにここから移動する必要があるから、この……黒衣を被って、付いてきてほしい。辛いと思うけど、立てるか?」

「え、あの……というか、あんたさっきの……っ!?」

「少し声を抑えてくれ。混乱するのも分かる。警戒するのも分かる。だけど――信じてほしい」

「し、信じられる訳ないじゃない! これ以上私をどうにかしようとするならこの命なんか――」


「馬鹿を言うな! 君には言ったはずだ! 

『死ぬな。何よりも命を大切にしてくれ。いいな?』って!


 この――!!」


「……えっ……?」

「……すまない。声を荒げてしまって。身体を痛めているのに、それを助長するようなことをして……」

「……なあんだ。そうだったのね」

「え……っ?」

「ん? 何? どうしたのよ?」

「いや、その……質問させてほしい」

「どうぞ」


「何故に君は今――?」


「決まっているじゃない。嬉しいからよ」

「……え?」


「私の気持ちは間違っていなかったんだ、って。

 あなたにときめきを感じたけれど、それは当然だったんだ、って。



 だって――同じ人物だったんだから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る