乱戦 -クロード-

第211話 乱戦 22

    ◆クロード





「あ、ちょっと待ってください」


 クロードと相対しているコンテニューは、片手を挙げてそう口にしてきた。

 先程、少し芝居がかった様子を見せていたクロードは思わず気を抜いてしまった。

 が、すぐに眉間に皺を寄せながら問う。


「今更命乞いか? それを許すと思うのか?」

「いやいや。真剣に貴方と戦うのに僕も準備が必要なのですよ。生身で戦えるように見えますか?」


 手を広げる金髪碧眼の青年。

 どう見ても見てくれは鍛えていなさそうだ。


「と、言うことで」


 そう言う青年の手には、いつの間にやらとんでもないものが握られていた。

 クロードも実物は初めて見たが、しかし間違いない。

 彼の手にあるもの。


 それは――だった。


「では!」


 そして彼はそのガスマスクを装着すると、素早く足元に何かを投げつけた。

 直後、辺り一面が紫色に包まれる。


「――毒ガスか」


 至ってクロードは冷静だった。

 ガスマスクを被っていた彼が投げつけたのは間違いなくそうだろう。

 銃弾も剣戟も効かないクロードに対し、毒が聞くと思ったのだろう。


(だが無駄だ)


 クロードが素早く周囲五メートルの空気を変化させ、無毒化させる。

 しかし色はそのままにしておく。

 クロードが毒で倒れるものだと勘違いさせておく為にだ。


(これで相手の出方を見るとするか……いや、待て)


 すぐさまクロードは首を横に振る。

 思い出す。

 先程、コンテニューは何をしていた?

 ガスマスクを取り出した。

 見るからにそうと分かるモノを。

 それは何故――クロードに見せた?

 付けてから撒かないと、自分に毒が廻る可能性があるから?

 それもあるだろう。

 だが、何故煙は紫なのだ?

 いかにも毒です、とアピールしてきている。

 ならばもうこう結論付けるしかないだろう。


、か」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る