第212話 乱戦 23
罠。
クロードに周囲の煙が毒だと思わせる罠。
しかし、その罠によって何が生じるのか?
真っ先に思いついたのは一つ。
単純な目くらまし。
毒の煙を放ったことで、クロードは最初、毒を食らった振りをしてその煙を晴らさなかった。
そこまで読んでいたとしたら?
煙幕で視界を奪い、その間に距離を取る。
そのまま逃げる手段にも使えるが、先の彼はクロードと戦うと言った。
ならば、ここから攻撃をする手段を取ってくるだろう。
――遠距離から。
そう悟ったのとほぼ同時に――
パン、という乾いた音。
ドン、という低い音。
二つの音が聞こえて来た。
そのどちらも――銃声。
前者は通常の銃。
後者は大型の、恐らくはジャスティスに備え付いている銃だろう。
それが四方八方から襲いかかってきた。
「無駄だ」
しかしその銃弾は全て、まるで透明な盾がある様にクロードの目の前で弾かれる。
消滅ではない。
学校やパレードなどで消滅させた時は、鉛玉だということが理解出来ていたから、ただその場で蒸発させていたのだ。当然、その際に少し熱波が来ていたことは、ずっと隠してはいたが。
クロードは、相手はその点を読んでいるだろうと察し、相手が鉛以外の――例えば融点が非常に高い物質の弾丸を放ってくる可能性もあると推定し、熱ではなくで防御壁へと変化させたのだった。
イメージは防弾ガラスだ。
クロードの中での防弾ガラスは破られない、という認識であるため、この防弾ガラスも決して何物にも破られることは無い。
これがクロードの主観故の特殊能力である。
一方、先の熱の件は、どこまで温度が上がれば蒸発するかという知識が無くて不明だ、と思っているがために際限なく熱を上げることが出来ていないのだ。
逆に言えば、クロードが常識を外れれば外れる程、無限大に能力が広がる可能性がある、ということでもある。
そのことについて、クロードは当然気が付いていたが、考えないようにしていた。
理由は一つ。
考えてしまえば有り得ないと結論付けてしまうことが多いからだ。
そうなれば制約もかなり出来てしまう。
だからこそ、クロードは能力発動時には思考を最小限に抑えることを心掛けているのだった。
そんな彼の内情はさておき。
未だに銃弾は四方八方から飛んでくる。
――四方八方。
もしコンテニュー一人であったら、そのような攻撃は出来ないはずだ。何故ならば、森の中で跳弾をさせられるような物質はないからだ。
ならば答えは一つ。
コンテニューはこの森に味方を潜ませていたのだ。
最初から一対一の勝負ではなかった。
それはどうでもいい。
厄介なのは、周囲に人間がいることで、コンテニューを探ることが難しいということだ。
どこから撃ってきているのか。
ただ、一つだけヒントがある。
「あいつは……随一のジャスティス使い、って話だったよな」
ミューズからそう聞いていた。
カズマ以上に戦場で功績を上げているジャスティス使いである、と。
だったらこの戦場でも乗っているのは間違いないだろう。
「ジャスティスと他で銃弾の大きさが違うはずだ。ならば――大型の弾丸がある方にいけばいいんだな」
敢えて口に出す。
口に出して相手の様子を伺う。
「……って、分からないか」
煙幕が張られている中、周囲はまだ紫色に包まれている。
声が届く範囲にいるのかも分からない。
それでも。
クロードは堂々たる様でこう告げる。
「これから――ジャスティスを破壊する」
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