第192話 乱戦 03

    ◆カズマ



 陸軍元帥 コンテニュー。

 金髪碧眼で整った容姿の若人。

 しかしその甘いマスクの裏に数多くの戦場で武功をあげているという事実――それだけ人を殺しているという事実がある。

 現にアレインもその手に掛かっている。

 そんな彼が今、目の前に存在している。


(……本当に何故ここにいるんでしょうかね……?)


 カズマはジャスティスのコクピット内にいることを感謝した。

 何故ならば、内心の動揺を声に表せないように表情の方を変化させていることを気付かれないからだ。


(でも……クロードさんは表情を全く変えていませんね。流石です)


 こんな時にも関わらず、カズマはクロードに尊敬の念を抱いていた。

 もしかするとクロードはこの事態すら予想していたのかもしれない。

 だが、カズマには予想すらついていなかった。

 会談をぶち壊すためには当日に襲来すると思っていた。もしその準備なのであれば自分達の前に姿を現す必要はない。

 この男の考えていることがさっぱり分からない。

 カズマは息を呑みながら、相手の返答をじっと待つ。

 すると――


『……


 コンテニューではなく、クロードの声をジャスティスについているスピーカーが拾った。

 直後、彼は顔を上げてカズマに指示を出す。


『都市部へと急いで飛んで向かえ。今すぐにだ』

「えっ……?」

『急げ。

「わ、分かりました!」


 カズマは急いで操縦桿を握り、中央部にあるボタンを押して可翔翼ユニットを起動させる。

 浮遊まで少々時間が掛かるが敵が攻撃してくる気配はない。クロードもいるしその点は安心できるだろう。

 その数秒で考える。

 何故クロードは突然離脱を告げたのか。

 しかもビルなどを破壊しても構わない、と注釈をつけた。

 つまりは非戦闘員などどうでもいい――


「……そういうことですか」


 外部へのマイクを切断し、カズマも言葉を落とす。

 クロードのヒントがあって理解をした。

 と、同時に機体は宙へと浮かび上がる。

 マイクを再び付けてひと声掛ける。


「クロードさんもお気をつけて」

『ああ』


 クロードはこちらを見ずに返事をする。

 カズマはそのまま機体の向きを変え、市内へと飛行する。

 数十秒後にビルが立ち並ぶ市内が見えてくる。

 と。


『――もしもし、聞こえるっすか、カズマ?』

「ミューズか。今、空を飛んでいるよ。もうすぐ市内だ」

『ちょうどいいっす。市内にジャスティスが八機……今ライトウが一機倒したからあと七機っす』


「了解した。じゃあこちらも参戦する――というか、よ」

『えっ……?』


 カズマの足元には、既に剣戟によって首を跳ねられたジャスティスが横たわっていた。

 ミューズと交信しながらカズマは飛行を続け、真上から奇襲を仕掛けた。


「次のジャスティスの場所を教えて。すぐに向かうから」

『りょ、了解っす』


 若干引き気味のミューズの声を聞きながら、カズマは空を突き進む。


 こうして。

 カズマの機械ジャスティス戦が今、始まった。

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