第191話 乱戦 02

    ◆ライトウ



「……待てよ。屋上の方が近いよな」


 メカニックルームを飛び出したライトウは、急いで階段を駆け下りようとした所でそのことに気が付いた。

 気が付いたからには即実行。

 ライトウは階段を駆け上り、一気に屋上まで出る。

 そしてそこから一気に飛び込んだ。

 因みに、ライトウが飛び降りたビルは三〇階である。

 そこから飛び降りて徐々に低階層の他のビルに移るとはいえ、落下距離はかなりのモノだ。にも関わらずライトウは怪我もせず、更には自らの脚力のバネでビルを傷つけずに飛び回るという、相変わらずの人間離れした運動能力で移動していた。

 飛び回りながら眼下の街中の様子を確認する。

 既に避難しているのか外に出ている人はおらず気配すらしない、交通網も完全に止まっているようだがクラクションなどの混乱している要素は全く見当たらない。ビルが立ち並ぶ都市としては不思議な様相に包まれていた。

 だが、ライトウには関係ない。

 彼は銃撃音を追って一つ、二つとビルを飛び回り、やがて一機のジャスティスを発見する。

 それが真下にいる位置まで移動すると、耳元にあるインカムに問い掛ける。


「――ミューズ。街中にいるジャスティスは何機いるんだ?」

『確認されたのは八機っす』

「タイプは?」

『全員ノーマル。黒色でオプションなしっす』

「了解。――八機なら地面に降りても大丈夫だな」


 ライトウはそう判断し、刀を鞘から抜く。

 そしてそのまま、


 ――ストン。


「まずは一機」


 頭上からの攻撃により、一機のジャスティスは刀で左右が真っ二つにされていた。動線にあったコクピット席ごと切断した為、パイロットの鮮血の花があたり一面に咲く。

 紅の雫を浴びながら、ライトウはひどく冷静な表情で、


「――次」


 一瞥もせずに街中を颯爽と走り出していた。


 こうして。

 ライトウの肉弾戦が今、始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る