第187話 故郷 10
「カズマか。よくここが分かったな」
『色々探しましたよ、結構苦労しました』
ジャスティスから音声が流れるのと同時に、クロードも椅子から立ちあがって開けた土地にいる黒色のボディに近づいていく。
カズマのジャスティスは、背部に可翔翼ユニットを装着した状態であった。これはヨモツとの戦闘の際に手に入れたモノであり、また燃料が特殊ではなくガソリンだということも分かったのだが、どうしても燃費が悪いのが難点であった。故にカズマも空を飛ばずに陸路でここに来たのであろう。
わざわざ訊ねることではないだろう、と思っていると、カズマの方から話を投げてきた。
『ここってクロードさんの家があった場所ですよね』
「ああ。魔女の家、って呼ばれていたな」
『……ひどいですね。こんなに離れた場所に住まされていたなんて』
「いや、ここは俺が生まれた時からこの場所だ。まだ迫害されていない時からな。だから母親がゆったり暮らしたかったんだと思うぞ。それに、優しくしてくれた人もいたからな。あまりひどいとは感じていなかったな」
マリーだったり、その母親であったり。
クロードの母にも、クロードにも気を配ってくれる人がいた。
その為にクロード達は精神的に大丈夫だったのだろう。
――今になってそう思う。
だが、今では合わせる顔もない。
そして顔を合わせては絶対にいけない。
マリーが今どうなっているか。
まだ病院に入院しているのか。
それとも退院して元気に暮らしているのか。
はたまた別の国へと移って行ったのか。
行きたい気持ちがないわけではない。
調べたい気持ちが無いわけではない。
彼女に特化して調べれば、必ず彼女に狙いが行ってしまうだろう。
――ウルジス国の赤髪の使者の時のように。
だからここでは敢えて無視しなくてはいけないのだ。
思考が彼女の方に向きそうになったので、頭を切り替えるべくカズマに話を振る。
「それよりどうした? こんなとこまで来たってことは俺に用事があったのだろう?」
『あ、はい。街中への軍備や準備が終わりました、ということをお伝えしたくて』
「そうか。明後日の会談なのに準備が早いな」
『はい。ありがとうございます』
「だが――それだけではないだろう?」
『……っ!?』
カズマが息を呑む声が聞こえた。
そんな報告をするだけではここには来ないだろう。
「言ってくれ。わだかまりがあればそれだけで戦闘に影響が出るからな。何でも話してくれ」
『……何でも、ですか?』
「ああ。正直に言ってくれれば怒らないぞ」
『クロードさんが怒ったことは無いじゃないですか。……分かりました』
カズマが深呼吸する音が聞こえる。
数秒後、
『実はクロードさんが故郷を懐かしむためにここに来た、と思っていました』
「ああ、その通りだ。正確に言えば、懐かしむ、というのとは少し違うが、ここに来たのは、ちょっと気持ちの整理がしたくて来た所はあるな」
『そうなんですね。……あの、後ですね、ちょっとせっかくだから聞いていいですか?』
「何でもいいと言っただろう? 何だ?」
『その、ですね……』
カズマは奥歯に物が挟まったような言い方ではあったが、やがて意を決したかのようにこう言った。
『……死んだ人を蘇らせようと思ったりしなかったんですか?』
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