外伝 訓練 03
◆
翌日。
コンテニューは支給された運動着に着替え、開発部の一人に導かれて軍施設の室内運動場へと向かっていた。
目的は剣術を身に着けるためだ。
剣を扱うジャスティスに置いて生身で剣術を知ることは確実にプラスになる――そうセイレンに言われた彼は一理あると素直に従うことにした。
「ここですよ」
開発部の一人が指し示す先に、大きめの扉がある。
ありがとうございます、とコンテニューは一礼し、室内運動場に入る。
「お、来たな」
運動場には一人の初老の男性が立っていた。
その男性に対し、開発部の人が声を掛ける。
「お時間いただきありがとうございます、ジェラス中佐。あ、あの……セイレンさんから言われていると思いますが、この件は内密に……」
「ああ。分かっているよ」
「では、よろしくお願いいたします」
開発部の人が頭を下げて退室していく。
ここから先は指導役と一対一だ。
「ご指導、よろしくお願いいたします」
「うん、よろしく。えっと、君の名前は……」
「コンテニューです」
「ああ、コンテニュー君。では改めて――私の名はジェラス。階級は中佐だ。これから君の剣術指導を行う」
「よろしくお願いいたします。えっと……僕も確か階級があったはずですが……忘れました」
「いいよいいよ。まだ子供だし、そんなことを気にしなくても」
はっはっはとジェラスは豪快に笑う。
「しっかし、その年で軍部所属とはたまげたものだね。私もこれだけ幼い少年を指導したことは無いよ……おっと、事情は聞いちゃいけないんだっけ?」
「さあ、僕にはよく分かりません」
「だよなあ。きっと大人の事情に巻き込まれているんだろうな……」
ふ、っと息を漏らし、ジェラスは目を細める。
「……なあ、ここだけの話だが、君は本当にいいのか?」
「何がです?」
「私は自分で言うのも何だが、剣術に関しては相当厳しい指導をしている。君は何歳だ?」
「多分一〇歳だと思います」
「一〇歳、か。でも一〇歳に合わせた指導を、私は出来ない。やるとしては、大人と同等の指導を行う。勿論、体力は別としてね」
「構いません」
コンテニューは言い切る。
「幼い身体に過剰なトレーニングで成長を阻害するとか、そんなことは関係ありません。僕は全力で強くなりたいのです」
「本当にいいのか? これは最終警告だぞ」
「よいです。お願いいたします」
「……分かった」
コンテニューの力強い言い方に根負けした形で、ジェラスは首を縦に振った。
「さて、では最初に体力作りからだ。剣術はまだ早い」
「はい」
こうして。
コンテニューは厳しい訓練に身を置いたのだった。
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