外伝 首都 06

     ◆



「……ッ! ふーっ、ふーっ、ふーっ……」


 ダンッ!


 コンテニューは壁を叩いた。

 いや、叩くという表現は正しくない。

 殴りつけた、と言った方が正しいだろう。


 我慢していた。

 ずっと耐えていた。


 今にも殴りかかりそうな自分の心を。

 腰の刀を奪って喉笛を掻き切る様に動く手足を。


 何度も何度も。

 だがどれもキングスレイに斬り捨てられる運命だ。

 勝てる未来が無い。

 今の自分ではどうあがいても勝てない。

 嫌というほど思い知らされた。

 だからこそ、思いを内側に押し込めなくてはいけなかった。


 それでもいつかは抗える日が来る。

 必ず来る。


 それまではどれだけ辛い日々だろうが耐えよう。

 歯を食いしばって耐えよう。

 拳を握るのすら見せないようにしよう。


 確信にも近い思いを抱いて、コンテニューは耐えることを選択する。

 小さき身体に秘められた人一番強い重い想い。


「……さて」


 それでも彼は前を向く。

 前を向いて、上を向く。

 上を向いて、笑顔を見せる。


 こうして。

 小さき孤高の戦士は、憎き敵国の首都にて長き戦いを始めることとなった。

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