外伝 首都 02
◆
ルード国。
首都、カーヴァンクル。
その中心にあるルード国軍本部。
「ほう、セイレンから用事とは珍しいな」
厚い胸板に、がっしりとした足。
老齢にも拘らず、衰えている様子を全く見せていない男性は、腕組みをしながら問い掛ける。
その老人は総帥 キングスレイ・ロード。
ルード国軍のトップである。
「そうなのよー。面白い人材を見つけてねー」
そんなトップと対等に話しているセイレン。彼女はただ単に空気が読めないだけなのだが、その天才的頭脳で数々の発明をしてきた彼女に対して、キングスレイも頭が上がらなかった。故にこの関係である。
「面白い人材?」
「そうそう。この子なのよー」
セイレンは傍らに立つ少年を示す。
「コンテニュー、って言うのよー」
「……」
コンテニューは戦場で着ていたボロ服ではなく礼服に着替えさせられていた。身を小奇麗にしただけで様になっており、給仕をした女性をうっとりとさせたものだ。
そんな彼は拘束など一切されておらず、じっとその場で立ち尽くして目を閉じ、口を噤んでいた。
キングスレイは少年を一瞥し、セイレンに訊ねる。
「ほう。で、その少年がどうしたというのだ?」
「この前のジャスティスのテストに使った村で唯一の生き残りなのさー」
「ふむ。そうなのか――で、お前がそれだけで連れてくるわけがないだろう?」
「さっすが分かっているねえ」
目つきを鋭くしたキングスレイに対し、にへらとセイレンは表情を緩める。
「この少年、なんとジャスティスを上手く操って他のジャスティスを全破壊したんですー。パチパチー」
「……誠の話か?」
キングスレイは目を丸くする。
「本当だよー。で、だからジャスティスのストックは一機しかなくなっちゃった。ごめんねー」
「そちらも非常に頭が痛い話だが……それよりも」
彼は視線を少年に向け、
「少年、ジャスティスを何故動かせた?」
キングスレイが身体から威厳をここぞとばかりに放った。
セイレンですらビクリ、と身体を一瞬だけ反応させるほどで、並の人間ならば気絶しかねない圧だ。
それが少年一人に向いている。
一〇歳の少年一人に。
「さあ、分かりません」
だが少年はびくともせず、飄々と答えた。
「ジャスティスって名称も今初めて知りましたし、当然、初めて動かしましたよ」
「本当か?」
「本当じゃない可能性があるのでしょうか?」
「ぐっ……」
コンテニューの返答にキングスレイの言葉が詰まる。
その様子にセイレンが大爆笑する。
「あっはっは。面白いでしょ、この子」
「……少年。本当に何者だ?」
キングスレイの眉間に皺が寄る。
一〇歳の少年の返答でもない。
そしてこの少年の恐ろしい所はもう一つある。
「セイレンの話が本当であれば、自分の村を襲撃されたのだろう? その襲撃した国の代表がここにいるが、恨む気持ちなどないのか?」
「ありますよ」
平然と。
何事も無いように少年は答える。
それどころか――
「当たり前じゃないですか。だけど僕はまだ子供です。この場で貴方やセイレンさんを殺すような腕力は持ち合わせていません。だから大人しくしているだけですよ」
――笑みを浮かべていた。
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