第159話 エピローグ 04

 ――その声は唐突だった。


 高い、加工された声。

 スピーカーで拡張されたその声が、喜んでいる人々の間に水を差した。

 一瞬で緊張感が周囲を駆け回る。


「何者だ!?」


 ライトウはいち早く、声の方に視線を向け、迎撃態勢を取る。

 と、同時に目を見開く。


 数十メートル先。

 そこにいたのは――二機のジャスティスだった。


 ジャスティスが近づいていることにも驚いたが、それに加えて視線の先の二機のジャスティスが、今まで汎用的なジャスティスと容貌が大きく異なっていたことが更なる動揺を加えていた。

 通常のジャスティスは黒色である。それ以外の色は見たことはない。

 だが、目の前にいるジャスティスのボディは――緑色。

 深い緑といった表現の方が正しく、金属特有の鈍い光沢について変わらない様子なので、ただのカラーリングチェンジしただけに見える。

 そう。

 見た限り、ジャスティスだ。


(……いや、色のことよりも――どうやってここまで近づいていたことに気が付かなかったんだ!?)


 ライトウの頬に一筋の汗が流れる。

 緑色とはいえ、木々に隠れる程の隠密性が高い程ではない。

 にもかかわらず、数十メートルの距離まで視認できなかった。

 誰も、というのが異常だ。


 何故なのか。

 そのボディの色で気が付かない、何かステルス機能でもあるのか。

 彼はその原理を見極めるべく、じっと二機のジャスティスを観察するために目を凝らす。

 すると、一機のジャスティスのある所作に値を奪われた。


 二機のジャスティスの一機。

 胸の前で手を組んでいるようなポーズをしていた。

 それは勿論懺悔のポーズではない。

 両腕で何かモノを掴んでいる。


 いや――モノではない。


「ッ!?」


 彼は気が付いた。

 それがモノではなく――であったことに。


 双眸は閉じられ、頭部から血を流している。

 両手はジャスティスの手で広げるように掴まれており、足はプラプラと力なく揺れている。

 泥か血か分からないが、腹部の服の一部は暗色で彩られている。


 ライトウがいつも見ていた――何よりも守りたいと願った少女。

 笑顔が魅力的で活発だった彼女の姿は、今やそこにはなかった。



「アレイン!!」

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