第157話 エピローグ 02
◆
やった!
やったやった!
アレインは内心の喜びを噛みしめながら駆けていた。
最初の攪乱の後に危険だからと森の中を隠れながら攻撃を避け、戦場からかなり遠くまで離れていた。
しかしアレインは目がかなり良かったため、遠くの場所でもカズマと相手のジャスティスの戦いは良く見えた。そして相手機体が破壊されたのを目視し、喜びにあふれながら駆けていた。
「ライトウとカズマがやった! 私達の勝利だ!」
早く二人の安否を確認し、勝利を分かち合いたいと思い、全速力で通常の道ではなく、ケモノ道を直線的に駆けていた。
木々が生い茂っている場所を駆けて行った所で――唐突に彼女はブレーキを掛けた。
「……あっちゃあ」
彼女は額に手を当てた。
目の前にあったのはかなり大きめの泉。流石に飛び越えることはできず、素直に回り道をした方がよいと思われた。
「平地で行けると思ったけど、まさかこんな所があったとは――ん?」
そこでとあるものが目に映った。
泉の向こう側。
そこに人かいた。
身体の特徴から分かったが、その人は女性だった。
そしてその女性は全裸だった。
恐らくは水浴びをしていたと思われる。現在は頭を拭いているらしく、白いバスタオルでおおわれて顔から上は全く見えない。
(あっちゃー出くわしちゃ駄目だったやつだよね、男だったら。でもこういう所で水浴びするのも危機感が無いと――)
思わず眼を逸らしていた彼女は直後、言葉を失った。
女性のすぐ近く。
そこにあったのは――
(――緑色のジャスティス!?)
今までのジャスティスは全て黒色だった。
しかし緑色というのは今まで見たことが無かった。その色も含めて一瞬、森の中に溶け込んでいたので意識できなかったということだった。
そしてそのジャスティスには、更に特徴があった。
(四足歩行型? ……そんなの見たことないわよ?)
彼女の横にあったジャスティスはそのように鎮座していた。
ただ単に停止する際はそうなっているだけかもしれない。
だが彼女の目には異様に映った。
(これは新たな新型? それとも他国の兵器でもしかするとジャスティスじゃない? ――いずれにしろ、パイロットの顔を見ておきましょう)
自分がジャスティスを破壊できないことは重々承知だ。
だったら出来るだけ情報を持ちかえる。
彼女は息を潜め、じっとパイロットと思わしき女性を観察する。
そしてその白いバスタオルが外れ、顔が見えた時――
「……なっ」
思わず言葉を漏らしてしまった。
それ程、衝撃的な人物だった。
直接は知らない。
知らないが知っている。
彼女の鼓動が早くなる。
走っていた時より早くなる。
じり、じり、と後退する。
それは彼女の本能がそうさせていた。
「知らせなきゃ……」
振り返り、一気にその場から離れた。
――逃げるように。
「はっ……はっ……はっ……」
全速力で駆けた。
彼女の脳裏は混乱していた。
まずい。
あれはまずい。
絶対に伝えなくちゃいけない。
「あれはクロードにとって――最悪の敵になり得る……っ!」
そう呟いた直後だった。
ヒュン、という風を切る音が聞こえた。
「ッ!」
同時に強い衝撃が横から襲いかかってきた。
「あ……うっ……」
吹き飛ばされた彼女は太い木の根元にその身体を打ち。
「クロ……ド……」
アレインはそのまま意識を失った。
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