第151話 空戦 09
(よっしゃあっ!)
相手の焦った声にヨモツは内心で喝采を上げた。
ヨモツが仕掛けた作戦は時限式だ。
戦いが長引けばその効果を発揮する。
(案外長かったな……いや、本来はもっとこっちが持つはずだったと考えれば妥当か)
ヨモツは上昇を止めながら相手に向かって告げる。
「ようやく毒が効いてきたかぁ! ゲヒャヒャ!」
『毒、だと?』
相手の憔悴した声に気をよくしたヨモツは言葉を跳ね上げる。
「そうだ毒だぁ! 教えてやろう! この可翔翼ユニット最大の弱点は――燃費の悪さなんだよぉ!」
可翔翼ユニットはジャスティスと異なって燃料を必要とする。
しかも大量の。
故に安易に出撃は不可能であり、かつ、短期決戦の必要があるのも理由である。
「お前にわざと奪わせた可翔翼ユニットの燃料はあらかじめある程度減らしておいた! 気持ちよくお空を飛んでここまで上空に来た所でガス欠になるようによぉ!」
『なんだとっ!』
ヨモツの作戦は功を奏した。
可翔翼ユニットの燃料が無くなれば、相手はただのジャスティスだ。
流石にかなりの上空からの落下ダメージに耐えられる構造ではない。
加えて自由落下している間は、ただの無力な存在となる。手足をじたばたするだけであろう。
そんな状態の相手に対して、まだ十分な燃料を積んでいるヨモツの機体が負けるはずがない。
「既に勝負は決してんだよ! ゲヒャヒャ!」
相手の機体が徐々に推進力を失い、スピードが無くなっていくのを確認したヨモツは、自分の機体を下に向け、相手の機体と同じ高さまで向かう。
ここまでやり合って来て実感した。
相手はかなり強い。
きっとこのまま戦闘したらどちらが勝つか分からなかっただろう。
だが、準備の差で最初は負けたが。
最後は――準備の差で勝った。
卑怯な手だと罵るがいい。
それでも『正義の破壊者』のエリートパイロットを撃破した。
これで目的の相手に敗北を与え、勢いを止めることが出来た。
それが重要だ。
その一撃を、今、叩き込もう。
ヨモツは剣を振りかぶり、既に可翔翼ユニットからの出力が無くなって仰向けとなっている相手機に向かって振り降ろす。
「俺の勝ちだあああああああっ!」
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