第27話 規則二十六条 ハーレム計画その2
俺達のクラスは一丸となって動いた。
通常授業の後や昼休みに集まり打ち合わせをする。
と、いっても俺はあまり、やる事がない。
アヤメさんはクラスメイトに着付けの手順を教え。久留米は着物の手配と他のクラスに配るチケットの手配。五月雨は文化祭実行委員も兼ねてるのでクラスに居ない時が多い。
俺はというと、昼休みに入ってから暇で窓の外を見ていたりする。
「よ! 暇そうだな」
「お。水無月、まぁな」
水無月は俺と同じく成績もそこそこ体力もそこそこの生徒なんだが、実は隠れ不良ってやつで酒もタバコもやっていた。
過去形なのは加賀見坂先生が個人レッスンをしたとかなんとか。
「今の所俺にできる事は少ないからなーパンでも買いに行く所だ」
外を見ながら答える。
「なら、少し付き合ってくれるか? 近藤を呼んでくれって頼まれてな」
俺は水無月に連れられて人気の無い場所へ進む。
「おい。これってリンチとかか?」
「あ? ああ、ないない! リンチしたって何も出ないだろ、それに僅か数日で学校公認のカップルだ。あとが怖い」
変な事を言って来るので、汗が出る。
「だから、俺は辞めとけって言ったんだけどね。あ、そこの校舎裏に呼び出した奴がいるから俺はこの辺で帰るわ」
「あん? なんで?」
「いいから、いいから。この事は雪乃ちゃんには黙っておくから」
そそくさと俺を置いて帰ってしまった。
俺は言われた通りに校舎裏へいくと、小さな女の子が立っている。
遠目で観察してみた、身長は俺より低そうで150cmぐらい髪はきれいな金髪でポニーールをしている。
髪をまとめてる大きなリボンが特徴的だ、首についてる校章をみると一年生だろう。
「あの? 呼んだって俺の事? 何の用事?」
「先輩! 私先月転校してきた一年の鳴神 琴美(なるかみ ことみ)です! 付き合ってください!」
「え?」
突然抱き疲れて告白を受ける。
「先輩に彼女がいるのは三日前に知りました! でも私はもっと先輩に尽くす事が出来ます! あの女と別れて私と付き合ってください」
言うがはや、俺から離れて制服を脱ぎだす。
「え? え? ちょっと?」
既に上半身はブラだけだ。
俺は困ってしまって辺りを見回す、『どっきりでーす』の看板がどこかにあるはずだ。
不意にアヤメさんと眼が合った。
「やぁ。アヤメさんこれってドッキリだよね?」
俺の後ろにいたアヤメさんと目線が合う。だってこんな状況でアヤメさんがいるだなんて不自然じゃないか。
「あの……秋一さんとお弁当を食べようと思ったら、こちらに向かったと聞いて……」
手にはお弁当を手にしたアヤメさんが立っている。
「出だわね! この女狐! 秋一先輩をたぶらかして、琴美の先輩なんだから! 先輩だってスレンダーで若い女性のほうが良いに決まってる」
勝ち誇ったような顔で琴美がアヤメさんに指を突きつける。
「何時から、名前で呼び合う仲になったんだ、それに若いっても一年しか違わないだろ」
「そうでしたか、すみません秋一さん、お楽しみの所お邪魔してしまって」
「アヤメさん?」
顔をみると何時もの笑顔のままで俺はキョトンとする、こういう時って怒るか泣くかして大変な事になるんじゃないのか?
「あんた! なんでそんな顔してられるのよ! 先輩の恋人なんでしょ。怒るか泣くかしなさいよ!」
琴美も違和感を感じたのだろう、ちょっと不思議な怒り顔をしている。
「私の事でしょうか? 私は秋一さんを信じてますし、どんな結果になろうとも後悔はしないと決めてますから」
短いながらも力強い言葉である。
「じゃああんたは、秋一先輩が琴美と付き合う事になっても文句はないのね」
「そうですね」
俺の顔を覗き込むようにして勝利宣言を出してくる。
「先輩聞きました!? 私達前カノまで認められた公認のカップルですよ!」
アヤメさんが落ち着いているので、いくぶん俺も落ち着いた。
「ならねーよ」
琴美のおでこに軽くチョップをする。
「いったーい、乙女のおでこにチョップとは先輩も中々鬼畜ですね」
「全然力は入れてないけどな、改めて言うけど。好きな気持ちは嬉しいけど、俺はアヤメさんがす……アヤメさんが好きだから琴美ちゃんだっけ? 君と付き合う事は出来ない」
俺は覗き込む感じになるが琴美の顔をみる、うっすらと涙を浮かべてるのがわかる。
「なんでなんでー! 今まで琴美欲しいものは何でも手に入れてたのにー酷いよ。酷いよ」
最初は大声で騒いでいたのに、最後はしゃがみ込んで本格的に泣き出した。
こまった、こういう時の対処法がまったくわからない、助けてとアヤメさんにアイコンタクトを送ってみる。
俺に軽く頷くとアヤメさんがよって来て、琴美の前でしゃがみ込む。
「琴美さん、人の気持ちは欲しい思っても中々手に入らない物です」
「でも、あんたは先輩の恋人なんでしょ」
泣きながら喋る器用な子だ。
「あら、私だって何時捨てられるかも解りません、それに私が捨てるって可能性もあるのですよ?」
その『私が捨てる』の言葉に俺の顔が思わず引きつる。
「そうですね。秋一さんは琴美さんの事も良く知らないし、最初はお友達から始めてはどうでしょう? そうすると琴美さんの魅力が秋一さんに伝わるかもしれませんし、私も琴美さんの事を良く知らないので、恋のライバルと言う事でお友達から始めませんか?」
既に泣いてない琴美がアヤメさんを見ている。
「泣いていたら可愛い顔が台無しですよ」
ハンカチを出して琴美の顔を拭いてあげてる。
「いいわよ! 自分でやるってば」
二人の姿を見て緊張が解けたのか俺の腹が豪快な音を立てる。
「先輩」
「秋一さん」
二人の視線を受けて少し照れる。
「いや、ほら。お昼だろ?」
俺の顔をみて二人とも笑っている。
「そうですね、ではお昼にしましょうか。琴美さんもご一緒に食べましょう」
俺とアヤメさん、そして服を着た琴美と合わせた三人は校舎裏のコンクリートに座り込む。
「あんた、これ美味しいわね」
琴美はアヤメさんの作った卵焼を食べている。
「おい、アヤメさんをあんたと呼ばない、俺と同じ先輩だよ。」
「秋一先輩がそういうなら……」
「こっちの唐揚げなどもどうぞ」
アヤメさんが自らのオカズを琴美に差し出す。
「おいしい……ウチのコックより美味しいだなんて」
飲みかけたお茶を吹き出す所だった。
「おい、コックってどんな家だよ」
「変かしら? このお弁当も毎日作ってくれるだけど」
見ると確かに美味しそうなお弁当にみえるが、型にはまってる感。デパートで売ってるお弁当に見える。
「変というか、驚いただけだしきにすんな」
難しい顔をしながらお弁当を食べてる。
「さて、飯も食い終わったし、そろそろ解散といこうか」
「そうですわね」
俺とアヤメさんが立ち上がるが、琴音は一人座ったままだ。
「あの秋一先輩にアヤメ先輩、明日も。明日もご一緒していいですか」
別に断る理由もないがアヤメさんを見てみる、何時もの顔だ。
「おう、人数増えるときもあるが。俺は大丈夫だよ」
「私も是非、琴美さんの事をもっと知りたいですわ」
「本当!? ありがとう。秋一先輩に彩芽先輩」
子犬のように目を輝かしている。
「琴音、明日は自分でお弁当作ってきます。秋一先輩試食お願いします!」
物凄い速さで俺達の前から消えていった。
「明日も楽しみですね」
アヤメさんの言葉に苦笑しかでない
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