第26話 規則二十五条 文化祭案を探します
「文化祭の出し物について、意見ある奴はいるかー。高校生で出来る物で頼むぞー」
朝のHRで加賀見坂先生の声が響く、次々に手が上がり案とその準備の為の軽い説明が入る。
その中身は定番の漫画喫茶。屋台。お化け屋敷。後半になると、動画喫茶に撮影喫茶さらには、水着喫茶これは男子の希望だ、勿論女子からはブーイングの嵐。
なんでも喫茶をつければいいってもんじゃない。
そんな中五月雨が手を上げる。
「先生!定番とは思いますが女子の中ではメイド喫茶の案がありましたが、昨日思いついたんですけど着物喫茶などはどうでしょうか?」
「んー先生に言われても、決めるのはお前たちたぞ」
頭を書きながら答える。
「確かにメイドの姿も普段は出来ないんですが、昨日雪乃さんの自宅を訪問した所、彼女は普段着として着物を着ていました。彼女は普段から来ているらしく、着付けなどもできるし。和の心ってこういうんじゃないかと思いました。幸い着物の手配は久留米君が格安で、もしかすれば無料で手配できると聞いたので、案を出させて頂ます」
委員長なだけあって力強い発言だ、教室がざわつく。
「んーほかに案はないかー? ふむ。それぞれ良い所も悪い所もあるとは思うが六時限までに投票箱に入れるように」
昼休みになり、俺とアヤメさんは冷やかしがあった者の新聞部の部室にお昼を食べにくる。
「おじゃましまーっす」
「おう」
既に久留米は部室に居て俺達を待っていた。
「五月雨は?」
「おっじゃっまー」
「今来ましたわ」
俺とアヤメさんの会話できょとんとしてる、噂してたんだよと伝えると照れるなーと頭を掻いていた。
お昼を食べながら話題は自然に文化祭の出し物についてになる。
「んー休み時間などあたしの所に来る子多いねー使った後の着物は貰えるのか? 汚したら弁償になるのか? などね。案外メイド服を用意するのも大変ってあって用意してくれるなら着物がいいって子が多いよ」
「私の所にも着付けのやり方や、普段どんな着物を着てるのかなど、あと……」
何故かアヤメさんの顔が赤くなる。
「え?なにアヤメさんどうしたの?」
最初はなんでもないと言っていたが、俺達があんまり心配するから重い口を開いた。
「ひ……姫はじめなどの仕方を教えてください。などです」
その言葉を聞き終わって俺達三人は爆笑する。
「もう、そんなに笑って、恥ずかしかったんですからね!」
「所で久留米、着物の手配ってのは本当に付くのか?」
「正式に決まったら言うつもりだったが、三人ならいいだろう。俺の所の会社。もちろん親父の会社で最近。衣類のレンタルショップを丸ごと買い取ってな、成人式用の着物が山ほどある。それにだ、着物の先生も知り合いに居るから会社としても赤字にはそんなならないはずだ」
得意な顔で言ってくる。
「なんで? 着物タダでくれたら会社赤字にならないの? それに先生って着付けなら、アヤメさんいるでしょ?」
「えーっとですね、秋一さん。着物というのは管理が大変な物もありまして、放置しておくと虫食いや染みなどが出来るのです。多分それを防ぐためや起きてしまった時に久留米さんの会社が引き受ける、合っていますでしょうか?」
「さすが雪乃さん、あとは日本舞踊なども習いたい人は格安で習えるようにするので。仮に赤字になっても宣伝料と思えばこんな良い口コミはない」
それまでお茶を飲んでいた五月雨が叫ぶ。
「あ! しまった! 一クラス丸まる着物をプレゼントとなったら周りのクラスからはひんしゅく買わないかい? まいったなー……」
分かりやすいアヤメさんの説明で納得しかけたが、五月雨の言葉で現実にもどされる。
「ふむ。そうしたら同学年のみ成人式の日に着る着物をレンタルできるチケットを配るようにお願いしてこよう。着付けは別料金で貰う事になるがそれならなんとかなりそうだ」
「おっと、もうお昼時間おわっちゃうよ、わるいね三人共あたしの提案で急に動いてもらっちゃって」
「なに、俺のほうは全然かまわない、リハの時にでも全員の写真を取らせてくれれば、それを売るぐらいだ」
「売るなよ!」
俺の突っ込みが炸裂する。
「ほう、貴様はアヤメさんの写真が要らないと」
周りが沈黙になる、俺は短い言葉を発する。
「いる」
「あははは」
「もう!」
お腹に手を当てて笑う五月雨と少し怒り顔のアヤメさんが俺を見ている、久留米にいたっては完全勝利! と腹の立つ顔をしていた。
時刻は既に放課後だ、教壇では先生が俺達を見下ろしてる。
「それでは、投票箱の読みあげるぞー。どれがなっても文句は無しだ! 希望と違うのが選ばれたと言って、やる気の無い奴は転校させるからなー」
全員がツバを飲む。まだ俺達が高校に入る前、加賀見坂先生の受け持っていた二年の生徒が授業中に暴れまくり、原因不明の転校をした。
その後、転校した生徒は頭を丸め。もう一度先生の学校に行きたいです。と言い三年になった時に戻ってきた。
結局彼は俺達が入学する時に無事に卒業したと先輩から聞いた。
黒板には次々と文字が書かれていく。動画喫茶一票、メイド喫茶一票、合コン喫茶一票……
合コン喫茶など案にあったっけ?俺が考えている間もどんどん読み上げられる。
着物喫茶一票、着物喫茶一票……
フタをあければなんとやら、というやつかクラスの8割が着物喫茶に入れてくれてた。
「よーし、きまったなー。それじゃ五月雨、具体的な案があれば発言を許可するし、なければ数日内で考えてこい、場合によっては再協議に入る」
「はい! 実はある程度の案は決まっています、私一人の力ではなく半分以上は人任せになるのですが聞いてください」
五月雨は教壇の前にいき、お昼に話した具体的な案を皆に話す。
クラス全員がその案を聞い様々な顔をしているが一部の席では小さな拍手も起こっている。
「いけそうか? 久留米」
「大丈夫と思います。出来なくても次の手は考えてあるので」
「よし、危険性もなさそうなので着物喫茶を教頭に提出するぞ」
最終確認が済んだのだろう先生も許可を出した、その言葉でクラス中から拍手が起こるのであった。
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