俺のスマホが大変なことになってます⁈

karon

第一章 織田信長

第1話 フリーター 糸里新太


 糸里新太いとざとしんた21歳 。静岡県出身。県立工業高校 電子科ギリ卒業。東京で一人暮らし歴2年。

 只今フリーター。派遣の仕事でなんとか食いつないでいる。


 今日はスマホの部品を組み立てる工場に派遣され、目の前に並んだ箱の中の部品を、薄っぺらいスマホの中に入れていく作業をやっている…。だが、なかなか上手くおさまらねぇ。こんなん全部はいるのかよ?入ったはいいが蓋がしまらねぇぞ、ちくしょーーっ!


「まあ、初日だから仕方ないよねぇ。慣れば早く出来るようになるから…。まあ明日も頑張って…。」と工場長に困り果てたような苦笑いをされた。

 はぁ、一応電子科出たんだよ。ただちゃんと授業受けなかっただけ…。だって俺バカだから…。

 帰って寝よ。そして今日の苦労を忘れよう。



 帰りにコンビニで、から揚げ弁当を買ってTVを見ながら食べた。

 つまんねー番組。ごろりと横になり自分のスマホを手にとる。

 思いたってムクッと起き上がり、メガネのネジ留めなんかに使う小さいドライバーを、工具入れの中から探し出した。

 小さなドライバーを手に、目の前のスマホを睨みつけゴクリと唾を飲む。

「いざ覚悟、俺のスマホ!」

 今日、工場でやった事をやるだけだ。

 機種は違っても中身は同じようなものだろう?

 案ずるな俺のスマホ。俺がちゃんと元に戻してやるから、おとなしく俺に分解させやがれ!

 …。

 …。

 …。


 よっしゃあ、出来た。ちゃんと蓋も閉まったぞ。なんだかんだ言っても電子科卒なんだぜ。ギリ卒だけど。



 スマホの電源を入れてみた。

 おぉぉぉっーーー。ちゃんと電源入ったぞ。

 スゲーやるじゃん俺。

 よっしゃあ、工場長さん明日は一皮向けた俺様にまかせろ!



 っ、拳を握り勝利のポーズを決めた瞬間だった。

 目の前が真っ暗になり、ぐるぐると目がまわる。違う体ごと回ってる…。

 気を失いそうなほど回転しながら闇に堕ちていく。

 クッソオォォォッーーー。なんなんだよ。

 これは女子が真夏の校庭で、よくぶっ倒れる貧血とかってやつか?

 あれはクソ暑くて体育の授業なんかタルくてやってらんねぇ、保健室でお昼寝したいとかって言う演技じゃなかったのか?

 こんな気持ち悪い症状を、度々起こしては立ち直る女子恐るべし!



 ドサッ!ころころころっと転がって、やっと貧血がおさまった…。

 初めての貧血はトラウマになりそうなぐらいの、恐怖体験だった。

 コンビニ弁当やカップ麺ばかりの食事は、栄養が偏ってとんでもないことになるのを実感。今後はちゃんと弁当屋さんで弁当買うか、食堂で御飯を食べよう。


 もう大丈夫そうかな?

 恐る恐るゆっくりとうつ伏せになってから、手をついて上半身を持ち上げる。

 まだ少し怠いな。腕の力を抜きまたベタンと畳にうつ伏せに倒れる。

 い草の匂いがして、畳がひんやり気持ちいい。

 あれ?俺ん畳の部屋あったっけ?

 もう一度ゆっくり上半身を起こし、薄っすらと目を開けてみる…。

 …っ⁉︎

 たっ、タ・タ・ミ?

 目玉を左右に動かして、上下にも…。

 なんかヤバい事になっている気がした。

 俺ん家は6畳一間のワンルーム。部屋はフローリング貼り。

 そこにベッドとTV台代わりのチェストと小さいテーブルとハンガーラック。たいして物は置いていない。それは部屋が狭いからだ。

 なのに今いる場所は視界を遮るものがない。つまり旅館のだだっ広い宴会でもするような場所だ。

 ってここは⁉︎

 どこなんだよおぉぉぉっーーー。

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