日輪奇譚
梅原珠乃
始まりの朝
爽やかな風が桜樹の丘に立つ真日の首元を撫でた。その柔らかで優しい温もりに、猫が人間の手の甲に頬ずりをするような仕草をした。穏やかな春の陽光に包まれ、真日は幸せに笑った。
桜樹の丘から眺める和泉の地はとても美しい。赤茶色や焦げ茶色をした屋根が並び、耳を澄ますと子供たちの笑い声や誰かの奏でるトランペットの音色が真日の元まで届いた。どこかの家庭が食事の仕度をしている。真日の鼻腔をくすぐる。空腹に笑みを零し、春風に弄ばれている自身の韓紅の髪を抑える。
いつもとなんら変わりのない生まれ育った地の光景だが、今日この日、花月三日であることは真日にとっては一大事と言っても過言ではなかった。
今日は、真日の十六の誕生日なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます