▼第六章『ウェーブ(女子航宙士)よ聞いてくれ!』 ♯1
脳みそがオーバーフロウしかけたケイジには、再び6時間の休息が許可された。
もちろん〈ファブニル〉〈ナガラジャ〉のクルーとのローテーションの上でであったが、ケイジにとって心身の休息と同時に、思考を整理する貴重な機会となった。
ワープゲイトを通過して飛び込んだ【
そこで資源採集用巨大柱【ジグラッツ】と、再び相まみえることとなったトゥルーパー・グォイド|とトータス・グォイドの脅威から、その深海へと逃げ込んだケイジ達は、数億年前にここ【
〈じんりゅう〉級三隻は、バトイディアの代表異星AIデリゲイトから、人類がグォイドとのこの戦いに勝てるほぼ唯一の可能性は、ここ【
異星遺物【
問題は、その【
そして〈ウィーウィルメック〉のア
ケイジにユリノ艦長以下〈じんりゅう〉クルーのうち、何故か肉体は内太陽系にいるはずなのにも関わらず、ユリノ艦長らと共に異星AIとのコンタクトをしているクィンティルラとフォムフォムに、デリゲイトの告げたこれらの計画を伝達し、それにより内太陽系のSSDFと連携することができねば、ワープゲイトを通じたSSDF艦隊の直接【
現在の状況を、極めて大雑把にまとめるとそういうことになる。
ケイジは自分の理解が正しいかを何度も確認した。
そして何度も確認して理解したことは、綱渡り過ぎる計画であるということだけだった。
それはデリゲイトから話を聞いた直後から、〈ファブニル〉と〈ナガラジャ〉の艦長アストリッド中佐とアイシュワリア中佐が言い続けていたことでもあった。
少なくとも達成確率小数点以下のポイントが複数ある。
仮に全てが計画通り進んだとしても、結局は大規模艦隊戦が待ち受けてるところも気に入らなかった。
ましてやたかが一等宙曹でしかない自分までもが、この人類の命運がかかった計画に、失敗すれば計画が破綻するポジションで組み込まれようとしている。
ケイジはその話をデリゲイトから最初に聞いた瞬間、よほどショックを受けた顔をしていたのか、アストリッド艦長とアイシュワリア艦長に、一回よく休んでから考えろと言われ、休息をとるにいたったのであった。
〈じんりゅう〉級三隻がバトイディアに来てから約一日が経過し、ケイジが食事シャワー睡眠を一通りおえ、再びバトル・ブリッジの艦長席におずおずと登ると、早速ホロ通信で二人の艦長の姿が現れた。
『あ~やっと戻ってきた……って、予定時間より早いじゃないか! もっとギリギリまで寝てればいいものをおおおおおぉぉお!?』
『アストリッド姉、人が熱心に訴えているのに話を逸らさないでくださ――』
口論の最中だったらしい二人の艦長は、ケイジの顔を見るなりフリーズした。
『へ……へぇ~』
特にアストリッド艦長は、好奇心と感心の入り混じったようないわく言い難い視線をケイジに向けていた。
ケイジはその視線の理由を知っていた。
「お二人が言い出したんじゃないですか……嫌ならもう女装しなくて良いって…………」
『……? だったっけ?』
「!!!!」
半分拗ねながらケイジが言うと、アストリッド艦長がとぼけかけ、ケイジの表情の変化に気づいた彼女は、『わ~冗談冗談だから!』と顔の前で慌ててぶんぶんと手を振ったので、ケイジは艦長席から上げかけた腰を下ろした。
再び艦長席に戻ったケイジはケイジであった。
ケイジはしばらくぶりに、立川アミ一曹の扮装の一切を行っていない姿となっていた。
女装がバレてしまった今、毎日立川アミの扮装をすることにケイジのリソースを割くことは、パフォーマンスのムダ使いじゃね? とアストリッド艦長とアイシュワリア艦長に言われたのだ。
単なる好奇心なような気が激しくしたが、ケイジに異存は無かった。
女装の為のウィッグやら詰め物やらを取り、凄くせいせいしたからだ。
その一方で、〈ファブニル〉と〈ナガラジャ〉の奇異の視線も気になりはしたが……。
『どうせ一番似合うのは若い今のうちだけなんだから、もっとやってても良かったのに……』
と、休息前とは180度違うことをボソリと呟くアストリッド艦長をケイジが睨むと、『ううん、何でもないよ!』と彼女は慌てて取り消した。
ケイジの姿は〈ファブニル〉〈ナガラジャ〉の両艦長だけでなく、両艦のクルーも見ているはずだったが、ケイジは半ばヤケクソ気味に、何も言われない限り自らは触れないことにした。
「で……ゴホン! 状況に変化はありましたか? なんか揉めていたみたいですけど……」
ケイジは久しぶりに聞いた気がする自分の声に、少し自分で驚きながら尋ねた。
『あ? ああそれは……』
『ケイジ一曹! 〈じんりゅう〉も同じことが起きているのよ! 確認してちょうだい!』
あまり興味無さそうなアストリッド艦長の言葉を遮るようにして、アイシュワリア艦長がメインビュワーに、補修作業中の〈ナガラジャ〉の外観映像と、〈ナガラジャ〉のコンディションパネル画面を送ってきた。
そこにはトゥルーパー・グォイド|とトータス・グォイドとの戦闘で傷ついた船体の補修プランが投影されていたのだが…………。
「…………」
『ね!?』
ケイジがアイシュワリア艦長の伝えたいことを理解し、絶句している最中から、アイシュワリア艦長が同意を求めてきた。
画像とコンディションパネルから見る限り、〈ナガラジャ〉はバトイディア内のドックにて、補修の域を超えた追加装備が施されてるらしい。
「何ですか…………この“トラクター・ビーム”って?」
『デリゲイトが勝手につけた怪しげな新装備よ!』
ケイジの疑問にアイシュワリア艦長が即答した。
『ンな未知の文明の未知の技術、私の〈ナガラジャ〉に勝手に搭載されてなるもんですかって~のよ!』
「……いや、どんな機能なのか知りたいのですけどね……」
[例エルナラバ、無線
UVえねるぎーノ人工重力ヲ引ッ張ル力ニ変換シテ使ウヨウダ。
でーたヲ見ル限リジャ、画期的ナ装備ニ思エルガナァ……]
『仮にそのトラクター・ビームとやらがエクスプリカの言う通りの機能があっても!
こっちはンなもん使ったこともないんだから、そんなノウハウもない装備なんぞデッドウェイトにしかならないわよ!』
ケイジの問いにエクスプリカが答えてくれたが、アイシュワリア艦長は納得がいってないようだった。
バトイディアに集まった地球外発祥文明の有していた航宙艦装備“トラクター・ビーム”は、格納庫に納まらないサイズの大型航宙艇か、大型UV弾頭ミサイルくらいのサイズがあり、角ばらせた上で、凹凸を減らした芋虫のようなフォルムをしていた。
それが〈ナガラジャ〉〈ファブニル〉〈じんりゅう〉のスマートアンカーと同じ数だけ、艦首ベクタードスラスター・モジュールのパイロン(翼状支持架)の上下、および艦尾の上下艦載機格納尾とメインスラスターノズルとの間に、二対装備されようとしていた。
送られたデータによれば、この装備から放たれたビームに、当たったものを引き寄せる効果があるらしい。
にわかには信じられなかったが、もし真実ならば、このサイズでこの機能を使えるのは確かに凄いとケイジには思えた。
さすが地球外文明発祥テクノロジーである。
とはいえ、どんなシチュエーションであったならば、この装備の出番が来るのかはすぐには答えられなかったが…………。
『まぁまぁ、食わず嫌いは良く無いと思うぞアイシュワリアよ。
特に今は好き嫌いしてる場合じゃないからな!
便利そうな装備を無償提供してくれるというのだから、ありがたく頂戴しておこうよ~』
[俺ノ調ベタ限リデハ性能ニ問題ハナイ、操作系モ〈ファブニル〉ノ【ANESYS】ニヨッテこんとろーるぷろぐらむガ構築済ミダ]
『で……でもでもでも……百歩譲ってトラクター・ビームは別にしても、艦首にあんなモンまで!』
アストリッド艦長とエクスプリカの説得に返す言葉が無かったのか、アイシュワリア艦長は自分が座る艦長席から見える〈ナガラジャ〉艦首に向かって指さしながら力説した。
アイシュワリア艦長が憤っているもう一つの追加装備は、〈ナガラジャ〉の艦首を覆うようにして装備されようとしていた。
だがそれは装備中というより組み立て中といった方が良い状態であり、まだ骨組みがなんとなく完成状態を想像させるシルエットになっているだけであった。
それはケイジの知るVS‐804〈ジュラント〉の艦首にどことなく似ていた。
〈ナガラジャ〉の艦首をぐるりと円状のフレームが囲っており、それは完成すると巨大な円盤状になるように思えたからだ。
それは艦首全体が円盤状の大型UVシールド発生器となった〈ジュラント〉を連想させた。
ケイジは慌ててビュワーに映された〈ナガラジャ〉のコンディションパネルを確認した。
そして〈ナガラジャ〉の艦首に装備されようとしているものが、最終的にどんな姿となり、どんな機能を有しているのかを知り、驚くよりも若干引いた。
「マジで………?」
『良いアイディアだと思うんだがなぁ……』
『どこがですか!? 無茶も大概にしましょうよ~!!』
ケイジに答えたアストリッド艦長に、アイシュワリア艦長が頭を抱えながら憤った。
『もちろんケイジ少年による、ユリノ達〈じんりゅう〉クルーの異星AIコンタクトの支援は実行してもらうとして、こっちはただ待っているだけというわけにもいくまい?
ヤバイ事態が迫っているのだろう?』
『左様でございますアストリッド艦長』
アイシュワリア艦長をなだめようとするアストリッド艦長の言葉に続いて、アビーと同じ姿をしたデリゲイトのホログラムがケイジの前に現れた。
『以前お話したように、トゥルーパー・グォイドを擁するトータス・グォイドの大群が、バトイディア上方の海上全方位から接近しています。
ここ数億年は無かった動きですが、いずれは訪れていたであろう事態でもあります。
バトイディアは最も近い海域に立つ【ジグラッツ】に追い込まれていっている状況です』
デリゲイトはバトイディア周囲の海図をメインビュワーに投影させながら説明した。
ケイジはバトイディアを囲む無数の光点がトータス・グォイドを示してるのだと分かると、ゾワリと背筋が凍った。
歪な輪となったトータス・グォイドの群の境界は、バトイディアに最も近い巨大資源採集柱【ジグラッツ】のある方向がバトイディアから最も遠く、近くのトータス・グォイド群から逃げるということは、自動的に【ジグラッツ】に向かうということでもあった。
『バトイディアの速力では敵包囲網の突破は困難であり、仮に突破出来てもトータス・グォイドを振り切ることは不可能でしょう。
我々に残された選択肢は、自ら進んで包囲網に突入し、両種のグォイドに殲滅されるか?
あるいはトータス・グォイドからひたすら逃げ、少しでも無事な時間を長く稼いだ上で最終的には【ジグラッツ】付近に追い込まれ、結局はトータス・グォイドやコウモリ・グォイドに破壊さるか?
この二つに一つです。
いずれにせよバトイディアはグォイドに破壊され、残骸となって【ジグラッツ】に吸い込まれたのちに、資源としてグォイド艦の材料にされることでしょう』
「そ……それまでの猶予は?」
『皆さまの時間単位で、最長でおよそあと二日となります』
質問にデリゲイトが淀みな答えると、ケイジは生唾を飲み込むくらいしかできなかった。
つまり残り二日が、ケイジ達に残された時間なのだ。
ケイジは絶望の半歩手前の恐怖と不安に襲われる一方で、気になることもあった。
「あの……デリゲイト……さん……これって俺たちのせいなんですか?」
『この事態に対し、何がしかの責任を感じておられるのでしたら、あなたがた〈じんりゅう〉級の来訪が、トータス・グォイドの襲来の切っ掛けになったというわけでは必ずしもありません』
この事態が〈じんりゅう〉級三隻が【ガス
『【ガス
『でも…………だからと言って……このまま素直に滅びたいわけじゃないのだろ?』
デリゲイトの説明にアストリッド艦長がそう告げると、彼女は大きく頷いた。
たとえ〈じんりゅう〉級三隻が【ガス
だが、避けられるならデリゲイトとてもちろん避けたい運命なのだ。
『そこでプランBの出番なのだよ!』
不適な笑みを浮かべて告げるアストリッド艦長に、アイシュワリア艦長がしんなりとした顔を返した。
『二日後までにユリノ達のコンタクトが上首尾に終わらない場合は、私らで何とかするっきゃない。
どっちゃにしろ、ただ座して待っていられる状況では無いしな。
最低でもユリノ達のコンタクトの可否が出るまでの間、我々で〈じんりゅう〉を守らねばならない。
そこで例の装備を使ったプランBの出番になってくるわけなのだが……。
ユリノ達が目覚めない限り、戦力としての〈じんりゅう〉はあてに出来ない以上、〈じんりゅう〉に
〈ファブニル〉の艦首は知っての通り、実体弾のバレルなわけだから、それを塞いで〈ファブニル〉の得意分野を潰すなど愚か極まりないので、やっぱりあの装備をつけるわけにはいかない。
ゆえに消去法で〈ナガラジャ〉にお願いするしかないわけなのさ』
『…………』
アストリッド艦長の、能天気な口調の割に論理的な理由説明に、アイシュワリア艦長は有効な反論が思いつかないようだった。
そこまで聞いた時点で、〈ナガラジャ〉艦首に施されようとしている追加装備で、アストリッド艦長がいったい何を目論んでいるか……ケイジは予想がついた気がした。
『案外、ユリノ達のコンタクトではなくて、私達のプランBの方がうまくいっちゃったりなんかしたりなんかするかもしれないぞ?』
実にいい笑顔でそうのたまうアストリッド艦長が、考えたらしいプランBとやらについて、ケイジは聞くのが怖くなった。
『ま……プランBといっても、ケイジ少年にしてもらうことはあんま無い……というか無いのだがな……。
君にはデリゲイトの言う通り、ユリノ達のとこに行って、支援し、彼女らを呼び戻してもらうという重要な任務がある。
それに専念してくれれば良いさ』
アストリッド艦長は、プランBを一通りケイジに説明し終えるとそう締めくくった。
「俺達が目覚めた時……どんな状況になっているか分かったもんじゃないんじゃ……」
『その通り、楽しみが増えて良かったじゃないか』
「あの~……そのプランBの間の〈じんりゅう〉の指揮は?」
『大丈夫、私かアイシュワリアか〈ファブニル〉〈ナガラジャ〉のクルーの誰かがオーバーライドするか、エクスプリカがなんとかする。
な~に、今までと大して変わらないさ、基本〈ファブニル〉か〈ナガラジャ〉で牽引していくことには変わりなにのだから!』
「…………」
[俺モ大賛成トイウワケジャナイゾけいじヨ……ダガココデ待機イテイテモ事態ハ良クハナラナイカラナ。
ろくデモナイ選択肢ノ中デハ一番真ッ当ナ選択デハアル]
エクスプリカが不安気な視線を向けたケイジに気づいて答えた。
『私達もアストリッド艦長のプランBに賭ける所存です。
私達だけでは見出すことさえ不可能だった選択肢ですから。
このタイミングでここに〈じんりゅう〉級三隻が訪れたことによって、初めて可能性が現れた選択肢なのです。
成功率のパーセンテージは小数点の遥か下ですが、我々に選ぶことの出来る選択肢の中で、もっとも成功率の高い作戦なのです。
賭ける価値はあると判断します』
デリゲイトがケイジが訪ねる前に続けた。
『ケイジさ~ん、ワタクシもオッケーですよ~!
ケイジさんがクルーの皆さんに会っている間は、ワタクシが全力で〈じんりゅう〉をお守りいたしますね!』
「お……おう……でもIDNの連中は? バトイディアも土台はデッカいIDNなのだろう?」
『あ~…………IDNの皆さんは…………』
バトイディアの外で待機していたサティが、いつもと変わらぬテンションでケイジが訊く前に言ってきたが、ケイジが聞き返すと若干声が沈んだ。
『あ~……IDNの皆さんはというと……ですね……』
サティはそう言うと、バトイディアの外で漂っているIDNの映像を送ってきた。
「あぁ…………」
ケイジはサティが送ってきた映像を見て、言葉が出てこなかった。
淡いUVエネルギーの光を放ちながら、バトイディアの外を漂う【
――いわく『がんばれ〈じんりゅう〉!!』だとか『フレフレ〈じんりゅう〉!』だとか、『どうかワタシタチをたすけてください』だとか『ときはキタ! ……それだけだ!』とか『おーるふぉーわん! わんふぉーおーる!』だとか『かちめのないたたかいなどない! しょううさんゼロなどしんじない!』だとか……。
ようするにIDNもノリノリらしい。
『IDNのみなさん、ワタクシの持ってた『VS』その他諸々のコレクションをお見せしたところ、だいぶ……その…………こんな感じになってしまいまして……』
「………………マジか」
プランBを行おうが行うまいが、トータス・グォイド襲撃で高確率でバトイディアが失われるならば、それはバトイディア内の人造UVDからUVエネルギーを摂取してるIDNの存亡にかかわる重大事なはずであった。
ならば……少しでも生存の可能性が高い方を指示した……と考えたいところであった。
単にアニメ『VS』に被れた結果、今の状況を燃える展開だ~! とか〈じんりゅう〉ならばなんとかしてくるに違いない! などと思っていないことを祈るばかりであった。
『まぁケイジ少年は、こっちのことより、向こうでユリノ達に私達の計画を伝えた上で、こっちに呼び戻すことの心配をすべきだと思うよ』
「う……」
ケイジはアストリッド艦長にそう言われると、何も言い返せはないのであった。
ケイジは己に課せられたタスクだけで手一杯な身であり、それに平行して実行が決定されたプランBについて、心配などしている余裕など無いはずであった。
だが、心配するなと言うのは無理な話だった。
アストリッド艦長は、ケイジがユリノ艦長達にコンタクトを試みている間に、〈じんりゅう〉級三隻とバトイディアで自ら進んで【ジグラッツ】に乗り込んで、その巨大な柱を伝って登り上がり、【
――その数時間後……【第一艦橋】――
「…………と、言うわけなんですよ!!!!!!!!」
寺浦課長が【第一艦橋】から退室したところを見計らい、ケイジから再び立川あみとなった
どことなく見覚えがある寺浦課長とやら、〈びゃくりゅう〉が沈んだがクルーは無事だの、EXプリカを使えだのと言った気がするが、それどころでは無かった。
ケイジは〈じんりゅう〉の【ANESYS】用デヴァイスを用いることで、ユリノ艦長達が実行中の〈太陽系の
だがその途端ケイジは、何故か約10年前の地球日本のSSDF立川基地で、立川あみという広報部8課2係アニメ制作班のADになっていた。
もちろん大混乱に陥ったが、幸いにも寺浦課長に促されるまま【第一艦橋】までついていくとユリノ艦長とルジーナ大尉を除く〈じんりゅう〉クルーに再会することができた。
だからあみADは、サヲリ副長やカオルコ少佐が呆気にとられているのに視界の隅で薄々気づきつつも、それを見なかったことにして、一気呵成に身振り手振りを交えながら己に課せられた伝達事項やその背景をまくしたてたのであった。
自分で言いながら、若干なんて無茶苦茶な内容なんだ! と思いながら。
最後まで言い終えると、肩で息をして思わず倒れそうになり、絵コンテ・演出を担当しているらしいカオルコ少佐に抱き留められた。
「まぁま、とりあえず落ち着いてあみAD、面白い展開だとは思うからさぁ」
「今のは今後の『VS』の展開についての話でしょうか?
興味深い展開だと思いますが、今はまず主役メカ〈びゃくりゅう〉が使えなくなった第一話をどうするか考えるべきだと思いますが」
とても冗談で言っているとは思えない顔と口調で、カオルコ少佐とサヲリ副長にそう言われ、あみADは自分が本当に女性(という設定)になった事とは別に、とてもとてもマズイ状況に陥ったことを悟った。
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