▼第一章『仄暗い水の底から』 ♯5
「おおぉぉ……うるせえぇぇえ……!!」
ケイジは前回よりもさらに激しく響き渡る高音に、思わず両耳を塞いで呻いた。
宇宙で聞く合成効果音とは全く違う、船体そのものを揺さぶる振動による高音は、耳を塞いだくらいでは決して消えることは無かった。
ケイジはそんなやかましさに耐えながら、必死に今〈じんりゅう〉の前方に起きていることの意味を考えた。
このやっかましい高音の源は、〈じんりゅう〉はるか前方のガス雲を突き破って現れたバカでかい黒いグォイド製と思しき柱……あるいは塔の類とみて間違い無かった。
方向が一致しており、他にこの大音量を実現可能なものなど、【インナー・オーシャン】内に他に見当たらなかった。
[けいじ…………?]
黒い柱はその色と、表面のどこか生物の骨のような特徴的ディティールから、グォイド製と推測されるが、それは同時に、この【
いったい何の為にこんなバカでかく、しかも移動……(黒い柱の先端は【
[けいじ……!]
ケイジはエクスプリカが呼ぶのにも気づかず、思考に没頭した。
留意すべきはこの黒い柱が、【
つまり〈太陽系の
だがそう前提したからといって、ケイジにはすぐにこの柱の正体と目的が推測できはしなかった。
まだ発見してから二分も経過していないのだ。
[けいじ! 前ダ! けいじ~!]
この時になってようやくケイジはエクスプリカの呼びかけに気づいた。
高音が最初に響いた高音の時と同様に、唐突に止んだからだ。
そしてエクスプリカが何故こうも焦って呼びかけていたのかも分かった。
外景ビュワーに映る黒い柱の下端付近と、海面とが接する当たりで、接触地点を隠していたガス雲が、爆発的に膨張しはじめたのだ。
それは地球自然現象のドキュメンタリーで見た、火山噴火に伴う火砕流を数百数あるいは数千倍にしたかのようであった。
なぜそのような現象が起きたかは、確かめずともすぐに分かった。
余りにも巨大な黒い柱が、海面に突き刺さった状態で移動した結果、海水が盛大に巻き上げられたのだ。
ケイジには黒い柱の移動速度がゆっくりにしか見えなかったが、それでも動いていることが目測で分かる速度でガス雲の隙間から現れている。
時速百キロ以上は出ていても不思議ではないはずだった。
そんな速度で、下端部分だけとはいえバカでかい黒い柱が海中を移動すれば、押しのけられた海水が液体でいられる限界を超え、もう爆発するしかないのだろう。
それがあの爆発的に膨張するガス雲の正体であり、また【
同時に、突然鳴り響いては突然鳴りやむのを繰り返すこの不快極まる高音の原因も分かったような気がした。
おそらくだが、黒い柱の海中に沈んでいる部分の先端が、海底に接触した際に発した音ではないだろうか?
〈太陽系の
そこへ移動するグォイド製の黒い柱が時々接した結果、磨りガラスを爪で引っ掻いたような高音が発せられたのではないだろうか?
ついさっきこの高音によるエコーロケーション捜査で、【インナー・オーシャン】の海底の形状が分かった時、海底は深度およそ1000mで平坦であった。
それはこの黒い柱が通過したことで、元は凹凸のあった海底を
たとえばトーストに塗ったバターをバターナイフで塗り広げるように…………。
[けいじッテバサ! イイ加減目ヲ覚マセ!!]
ケイジはそこまで推測したところで、エクスプリカが呼び続ける本当の理由が分かった。
それはエクスプリカが呼び出してから1分も経過していなかったが、〈じんりゅう〉の運命を左右するには充分な程の空白であった。
ケイジは、気のせいかブリッジ内にマイナスGを感じた気がした。
しかしそれは外景ビュワーに映る景色と連動しており、ケイジの錯覚ではなかった。
実際に〈じんりゅう〉が垂直に降下しているのだ。
外景ビュワーの前方方向の景色の中で、膨張するガス雲が海面から高々と【
だがそれは違った。
ガス雲が上昇したのではない……海面に浮かぶ〈じんりゅう〉ごと海面の方が猛烈に降下しはじめていたのだ。
なぜならば…………。
[見エテキタゾ!]
前方を見ながら告げるエクスプリカの視線の先を追うと、海面上を覆うガス雲を風圧で突き破り、視界の左右一杯まで広がるような、おそろしく横に長い城壁のような一つの波が現れた。
ケイジは最初、それが跨げば簡単に越せるような、横に張った白い糸のような小さなさざ波にしか見えなかった。
だがそれは、ケイジが地球上で進化した生物の端くれであることと、そうあって欲しくないと願う心が見せた錯覚であった。
上端を白く泡立たせ、崩れ落ちながらも高く高く伸び上がってゆくその波は、見る間にその高さを際限なく上へ上へと延ばしていった。
それが地球自然現象で言うところ“津波”に類するものであることは、ケイジにもすぐに分かった。
あまりに当然の現象過ぎて、ケイジはなぜ今まで思い至らなかったのかと自分を呪った。
あの巨大な黒い柱が、海底を擦りたて、例の高音を響かせる程に海中深くに突き刺さりながら移動しているならば、当然、それによって押しやられた海水が、黒い柱の周囲に巨大な波となって発生するに決まっていた。
その波は、ケイジの目測でも優に高さ数キロはあるサイズとなって、猛烈な速度で〈じんりゅう〉へと迫ってきていた。
「エクスプリカ! 今すぐ潜航! 急速せんこ~ぅっ!」
ケイジは金切声で叫ぶ他なかった。
他に〈じんりゅう〉に逃げ場は無かった。
[了解! タダチニ潜航開始スル! Gキャンセラー出力ヲまいなす値ヘ!]
エクスプリカが焦りつつも言外に「ヤットカ……」とでも言いたげな気配を感じさせながら告げると、〈じんりゅう〉は極めてゆっくりと海中への潜航を開始した。
ケイジは猛烈に焦っていたが、潜水艦ならざる〈じんりゅう〉が潜航すること自体、どう考えても異常事態なのであり、急かすことは出来なかった。
ただ〈じんりゅう〉があの“津波”から逃げるには、海中に行くしかないのだと信じるしかなかった。
浮上して津波をやり過ごすという選択肢も存在したはずであったが、ケイジ一人でしか動かせない〈じんりゅう〉は事実上戦闘は不可能であり、ガス雲以外隠くれるもののない【
ようするに勘で命じたのだ。
結局その決断が正しかったのかは、ケイジにはその時が来るまで知りようがなかった。
最初の意図せぬ沈降とは違い、コントロールされた潜航は、〈じんりゅう〉のGキャンセラーで【
UV出力はシールドとそれを利用した推進に回すことで、入念に準備しておいたことで、とりあえずは今度は潜航しても再び圧壊の心配はないはずであった。
問題は潜航すことで津波をやり過ごせるかであったが、ケイジの記憶では潜水艦というものは、どんな荒天の海であっても、潜航さえすれば波の影響を受けずにクルーが船酔いすることもなかったという話を見た気がする。
だから潜航さえすれば、海の中は穏やかなのだとケイジは期待した。
[ア、ア~……けいじヨ…………トテモ言イニクイノダガ……少シマズイカモ……]
「…………」
ケイジは自分の判断が遅すぎたことを悔いていたが、事態はそんなタイムラグなど些細な誤差でしかなかった。
津波の〈じんりゅう〉への到達速度は、エクスプリカやケイジの予想を超えて速かったのだ。
[オカシイ! アノ黒イ柱ノ移動ガ原因ニシテハ、波ノ規模ト速サガアリ過ギル!]
エクスプリカが明らかに焦った口調で告げた。
すでにエクスプリカは観測された黒い柱のサイズや太さから、それによって津波が発生することをケイジが見て気づくより早く察していたのだが、その予測に誤差が生じていたのだ。
「潜航、間に合うのか!?」
[コリャぎりぎりダナ! 運ガ良クテダガ!]
ケイジの問いに、エクスプリカはヤケクソ気味に答えた。
[分カッチャイルトハ思ウガ、アノ大質量ノ津波ノ海水ト真正面カラ接触スルコトニナッタ場合、〈ジンリュウ〉ガ無事デイラレルカハ、保証ノ範囲外ダゾ!]
エクスプリカの言葉を聞きながら、その意味を想像しケイジは真っ青になった。
あの迫りくる水の絶壁が、いったい何万トンの海水で出来ているのかは分からないが、接触した場合に〈じんりゅう〉が受ける衝撃の総エネルギー量は実体弾の直撃に比肩しうるだろう。
〈じんりゅう〉がペンシャンコになってもおかしくないとケイジには思えた。
「潜航! 急いで! 潜航! はやく!」
ケイジは半パニック状態になりながら叫んだ。
自分が死にたくないんはもちろんだが、ユリノ艦長やミユミ達クルーがいるこの〈じんりゅう〉を、ここで沈めるわけにはいかない。
[〈ジンリュウ〉さいずノ巨体ヲ潜航サセルノハ簡単ジャナインダ!
特ニ一度浮上サセチャッタ後デハナ!]
エクスプリカが言わんとすることは、ケイジにも理解できた。
パンパンに膨らんだビーチボールを、プールのそこまで沈めろと言われても難しいように、〈じんりゅう〉の再潜航はやれと言われてすぐできる所業ではないのだ。
〈じんりゅう〉サイズが、【インナーオーシャン】に沈む速度には浮力と重力と水中抵抗から限界があるのだ。
しかし〈じんりゅう〉がぶくぶくと海中へと沈みゆく間にも、はるか彼方にあったはずの津波は、波の上端を崩壊させながらも巨大化し続け、急速に〈じんりゅう〉へと迫りつつあった。
一旦津波に吸い寄せられたことで降下していた水位が、いつに間にか再び上昇に転じていた……というより津波の前端の膨らみ始めた海面に、〈じんりゅう〉が押し上げられ始めていた。
そして〈じんりゅう〉から見上げた津波の上端は、それでもなお高く高く伸び上がり、〈じんりゅう〉に覆いかぶさらんとしていた。
ケイジには山が襲い掛かってきたようなものだった。
「エクスプリカ! 艦首ベクタードをダウントリム30度で全力噴射!
まず艦首を沈めた上で、起き上がった艦尾補助エンジンを噴射、艦首から海中に突っ込む!」
ケイジは考えるよりも先に命じていた。
ケイジの指示に、エクスプリカは一瞬絶句するかのように沈黙すると、念を押すように告げた。
[……ソレッテ、アノ津波ニコッチカラ突ッ込ムコトニナルゾ……]
「側面から受けるよかマシだ! 他に手が無いならやるしかない! 頼む!」
全て承知で叫ぶケイジの言葉に、エクスプリカはそれ以上返す言葉は無いようだった。
前方外景ビュワーの両端で、斜め後ろ上方へと向いた艦首
と同時に、〈じんりゅう〉が前進を開始した。
そして〈じんりゅう〉の前進速度があがるにつれて、艦首に被る海水が増してゆく。
〈じんりゅう〉はその流線形の船体から、シュモクザメなどの水生生物に例えられることが多かったが、残念ながら〈じんりゅう〉の艦首は海上海中を進むのには向いていなかった。
艦首から真横に伸びる
それはかなりの水中抵抗となって〈じんりゅう〉の前進を阻んだが、ケイジはその形状が、潜水艦で言うところの“潜舵”に使えるのではないかと考えていた。
“潜舵”とは潜水艦の艦首もしくはセイルの真横から伸び、上下の動きを操る舵のことだ。
〈じんりゅう〉のその潜舵に見える部分は、実際には艦首
潜水艦は、大雑把に言えば、艦内に海水を
が、それだけが潜航と浮上の手段というわけではない。
潜水艦は艦首の潜舵を上下に動かすことで、潜水艦それ自体の前進エネルギーを上下に偏向し、海水の注排水に頼らず海中を上下に移動することが可能なのだ。
だからその理屈を用いれば、〈じんりゅう〉の潜航速度を上げることが可能なはずであった。
それは同時に、エクスプリカが言ったとおり、自ら津波に突っ込むような行いに他ならなかった。
[来ルゾ!]
エクスプリカが叫んだのは、外景ビュワーが水中へと沈みきった直後であった。
同時に、ケイジは猛烈な減速Gと同時に、床に押し付けられるような上からのGを感じた。
〈じんりゅう〉が前進しているにも関わらず津波にって押し戻され、尚且つ〈じんりゅう〉のいた位置の海水が上へ上へと持ち上げられた為だ。
その中を〈じんりゅう〉は必死に海中下方へと逃げ続けた。
再び完全に海中へと没した〈じんりゅう〉バトル・ブリッジ内に、全周囲から海水が擦過するゴォオオという音が振動と共に響く。
さらに海中の乱流が〈じんりゅう〉を上下左右へと揺さぶる。
外景ビュワー内では、無数の微細な泡がデタラメに乱舞し、〈じんりゅう〉を取り巻く乱流をケイジに知らせた。
[けいじ! 船体ハ維持出来テイルガ、今ハソレデ精一杯ダ。
〈ジンリュウ〉ハ津波ノ後流ニ捕マッテ、良イヨウニ流サレテイル!]
エクスプリカが告げた。
その最中にも、例の耳障りな高音がランダムに響き渡った。
メインビュワーでは、その音を利用したエコーロケーションにより、
そしてケイジは最新の
エクスプリカが告げた通り、〈じんりゅう〉は黒い柱が無理やり海中を進む結果、生まれた波の中の流れに捕まっていた。
〈じんりゅう〉はその流れにより、黒い柱まで猛烈な速度で吸い寄せられたいたのだ。
ケイジは巨大には見えていても、まだ遠くを移動していたはずの黒い柱が、ビュワー画面の大半を占めていたことに驚いたのだ。
そして同時に、ケイジは〈じんりゅう〉が接近したことで、今まで不明だった黒い柱の下端部分の形状を見ることができた。
ゆっくりと、だが実際には時速数百キロで〈じんりゅう〉から見て前方右舷から左舷へと移動する黒い柱の下端が、まるで掃除機の先端のようにT字型に広がって、進行方向に対し真横に広がった先端部分で、【インナー・オーシャン】海底を舐めるように撫でているのが見えた。
ケイジはその黒い柱先端部分の前方の海水が、猛烈な勢いでそのT字部分の海底接地面に吸い込まれているのが、
「…………つまり……これってでっかい掃除機だったってことぉ!?」
[……ラシイナ!]
乱流に弄ばれるブリッジ内で、必死にシートのひじ掛けに捕まりながら問うケイジに、エクスプリカは答えた。
そう会話している最中に、黒い柱のT字型先端部は、進路上の【インナー・オーシャン】海底に存在していた高さ数百メートルはあるかという岩山らしきものを体当たりで粉砕、砕けた岩石を吸い込んでいくのが、ビュワーに拡大された映像で見ることができた。
ケイジは様々な疑問が一気に解けた気がした。
このバカでかい移動する黒い柱は、バカでかい“掃除機”だったのだ。
なぜこのような巨大な掃除機を、グォイドがわざわざ【
ケイジの聞いた〈亡命グォイド〉たるアビーの話によれば、グォイドはすでにはるか昔から宇宙を巡礼していた【
グォイドはそこで生み出されたオリジナルUVDを、誕生直後に奪い去り、シードピラーの主動力源にして、宇宙各地の恒星系に送り込み続けてきたのだ。
そこで問題なのは、オリジナルUVDは手に入るとして、それ以外のシードピラーその他のグォイド艦艇を作り出す材料だ。
いや、グォイド艦艇を作る建造施設の材料からして、どこかから手に入れない限り、存在しないはずである。
確かに何十億年も前から宇宙を巡礼していたと思しき【
グォイドはそれを使ってシードピラーをはじめとしたグォイド艦建造施設を作ったかもしれないが、グォイドはそれで生み出したシードピラーを宇宙各地に送りこみ続けた結果、グォイド艦建造用資源の不足に陥ったのではないだろうか?
結果、こうして【インナー・オーシャン】の底を舐めるようにしてまで資源の収集を狙った巨大“掃除機”を建造したのではないだろうか?
【インナー・オーシャン】の海底の大半が平たいのは、やはりこの巨大掃除機が表層に存在した堆積物を吸い尽くした結果だったのだ。
ケイジは自分の推測の壮大さに勝手に驚嘆し、溜息をもらしたが、事態はそれどころではなかった。
それまでの乱流による揺れとは違う、もっと明確で強いなGがブリッジを揺さぶったからだ。
[ア……ヤバ……]
エクスプリカの呟きをケイジは聞き逃さなかった。
「どしたっ!?」
[アノ掃除機ノ吸引流ニ〈ジンリュウ〉ガ捕マッタ~!]
エクスプリカが叫ぶようにして告げたことの意味を、ケイジはすぐに理解した。
「は、は、反転! 全力で逃げて! に~げ~て~!!」
ケイジがそう命じ終わるのを待つまでもなく、〈じんりゅう〉
は艦尾を黒い柱先端部に吸い寄せられるようにして180度回頭、黒い柱に背を向けると、出せる推力全開で吸引力に抗った。
掃除機の吸引力は、黒い柱の後方にいたはずの〈じんりゅう〉を吸い寄せる程に強力だったのだ。
ケイジはあの巨大掃除機に吸い込まれたら〈じんりゅう〉がどうなってしまうか、考えたくもなかった。
だが、考えようと考えまいと、その未来は現実のものになろうとしていた。
オリジナルUVDの出力を欠いた水中での〈じんりゅう〉の推力では、掃除機の吸引力に勝てなかったのだ。
「やばい……………ヤバイヤバイヤバイ」
ケイジは背後となった黒い柱の迫る気配に、振り返る勇気もわかずにひたすら唱え続けた。
人生初の艦長任務は、最期の艦長任務になりそうだった。
ケイジは責めて、下の医療カプセルで眠るクルー達を救いたかったが、その策は何も思い浮かばなかった。
オリジナルUVDを再起動させようにも、キックスタートさせる為にUVエネルギーを回せば、今度こそ掃除機に吸い込まれてしまうだろう。
〈じんりゅう〉にできるのは、破滅の瞬間を少しでも先延ばしにすることだけだった。
[〈ジンリュウ〉掃除機接触マデ、モッテアト30秒!]
エクスプリカがバカ正直に告げた。
ケイジにはもう、きつく目を瞑って悲鳴を堪えるくらいしかできなかった。
その時、
『〈じんりゅう〉よ、今すぐ艦首スマートアンカーを出すが
そう聞き覚えの無い女性の声が響いたかと思うと、身体がシートに押し付けられるGがブリッジを襲った。
ケイジが驚いて目を開けると、前方外景ビュワーの〈じんりゅう〉の数キロの彼方に、見おぼえるある船体のシルエットが現れていた。
〈じんりゅう〉がケイジの指示を待たずに発射していた艦首スマートアンカーは、その前方のシルエットが後方に放ったアンカーと繋がっており、〈じんりゅう〉を力強く牽引して、掃除機から遠ざけ始めていた。
「…………な……〈ナガラジャ〉だぁ!!」
ケイジは感激して、真水を垂らしながら思わず叫んだ。
『〈じんりゅう〉よ、やはり健在であったか! 呵々呵々!』
涙で視界の霞むケイジの前に、見知らぬ女性のホログラムが現れ、胸を張って大笑した。
「……………………だれ?」
ケイジがそのやたら偉そうなホログラムが、〈ナガラジャ〉のア
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