夫婦関係を中心とした家庭問題がワイドショーや雑誌等で消費されているのは周知の通りだが、今やネット上でも人気コンテンツである。
なかなか他人の家庭を覗き見ることはないため、私たちは表面的な「普通さ」で物事を判断しがちだが、実際には各家庭で異なった習慣が運用されており、時折それが異常な行動とつながっている。そういったものの告発や批判が一種のショーになってしまっているのだ。
本作は、新興住宅地の一家庭の、モラハラの激しい夫に抵抗する妻の様子を描いたもの。あまりこのジャンルに親しくない読者なら、この夫の様子は戯画的すぎるし、周到に反撃計画を練っている妻もまた虚構めいていると思うだろうが、実によくある――がゆえにリアルだということは述べておいてよいだろう。
虐げられたものが立ち上がる様には大義があるが、戦場で生き延びているうちにいつしか立派な戦士になっていたというにはやはり悲惨すぎる展開で、この物語のホラー的本質は、平和な家庭もいつ虚無へと転がり落ちるか分からない、ということである……。
(寒すぎる夜をより寒く!? 怖い話4選/文=村上裕一)