超人アルジャーノン
克森淳
プロローグ
時に光文60年9月。瀬戸内海に面したH県のK市。そこにあるM中学校の放課後、事件は起きた。校舎の前にふたりの男子生徒の影。ただしそのふたりは、3階の窓のあたりで宙に浮いていた。それを校庭から見つめる少年。その少年は左手を空にかざし、そこから電光を発してふたりの生徒に浴びせ、浮かび上がらせていたのだ!
「うわああああっ! や、やめてくれーっ!」
「頼む、俺たちが悪かった。下ろしてくれ」
彼らは懇願する、しかし少年は聞き入れる様子はなかった。
「何を言っている、お前たちは散々人をバカにしたり乱暴をしたり……。やりたい放題やっていて、自分が被害者になったらそれか? ムシがよすぎらあ」
そう言うと少年は、手からの電光を消した。ふたりの生徒は、そのまま地面に向けて真っ逆さまに落ちて行く……。このまま地面に叩きつけられるかと思われたその時! ふたりは地面の寸前で停止した。そしてそのまま軟着陸する。地面に這いつくばり、失禁して。
「後藤! またやったのか」
その場に駆けつけたのは、この学校の教師だった。教師は少年を叱責する。
「お前がこのふたりに、酷い目に遭わされたのは知っている……。しかしこんな仕返しをしたら、お前もこのふたりと同じになって……」
少年はその言葉をさえぎり、言う。
「先生、だけどこいつらを野放しにしていれば、僕と同じ目に遭う者が増えるんじゃないですか? 僕にはもう、それを止める力があるんです! 使わないでどうするんですか?」
教師は困ったような、悲しんだような顔をして少年を見つめる。
「失礼します」
少年はその場を離れた。
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