あなたを

めざし

第1話

ここで見る桜は何度めだろうか、

あの頃と同じ淡い色が窓から覗き込む。

カップに注ぐと部屋に広がるこのコーヒーの香りも同じなのだろうか。


あの人は今もあの頃の笑顔なのだろうか。


淹れたコーヒーを口にはこび少し目を閉じるだけであの頃の風景がまだ色鮮やかに瞼の裏に張り付いてるように思い出せる。

20年前の今と同じ桜が舞う季節のことを。


******************

大学3年になる頃、喫茶店でのバイトにも慣れた頃、ぎこちない手つきでコーヒーの入れ方をマスターから空いた時間に教わっていた。

コーヒーを淹れている時は良い緊張感があり、どんな勉強よりも俺を集中させた。

マスターはお客さんと話しながらでも容易にコーヒーを淹れてみせるがそれは時間と経験が解決してくれるらしい。でも俺にはまだよくわからない。

「そろそろランチの用意してくれるかい?」

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