リンダリング

花房牧生

1章 レベル0:スイッチを入れたところ

第1話 Level0:スイッチを入れたところ ~ご挨拶


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≪ごあいさつ≫

 このたびはR=R社の「リンダ・リング」をお買いあげいただきまして、誠にありがとうございます。プレイの前にはこの取り扱い説明書をお読みいただくと、よりいっそうゲームを満喫していただけます。

「リンダ・リング」はGS3対応のオンラインゲームです。推奨の環境でお楽しみくださいますよう、よろしくお願いいたします。


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≪様々な設定≫


1 キャラクター設定の仕方

 あまり突飛なキャラを設定しますと、レベル上げが難しくなります。例えば職業「エルフ」を選択した場合レベルの上限が15となります。・・・・・

2 データ転送の仕方

 キャラクター、つまりあなたを「リンダ・リング」の世界に登場させるには、正しい転送が行われる必要があります。詳しくはGSの説明書「オンラインゲームの仕方」をご参照下さい。・・・・・

3 「リンダ・リング」の世界について

 誰もがファンタジーと聞いて想像する、剣と魔法の世界。それがリンダ・リングの世界です!

 もちろんモンスターも登場します! モンスターはR=R社の社員がなりきって動かしております(笑) レベル上げもいいですが、いじめないで下さいね!

4・・・・・

5・・・・・

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 ………いかん、寝てしまっていた。

「これは読んでおいて下さい」とか「必須です」とかいうのを読まないといけないときは九割の確率で寝てしまう、それは私の才能のひとつである。役に立たない上に、怒られるけど。

 いやしかしこれからゲームするっていうのに寝てる場合じゃないよな。

 でもこの解説書、どんだけぶ厚いんだ。数センチはあるじゃないか。コレ全部読んでから開始してるんだろうか、みんな。持ってるだけで手が痛くなるレベルなんだけど。


 読まずに開始、する事に決めた。

 大事なことだったら体で覚えるだろう! たぶん。RPGなんかどれでも一緒だ! きっと。モンスターと戦って経験値ためて金貯めていい武器買ってラストボスを倒したら大団円。そのコースに違いはあるまい!


 ………………とりあえず「死んだらどうなるか」だけ読んでおくことにした。



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≪注意事項≫ !! ここだけは絶対に読んでおいてください !!


「リンダ・リング」世界の死について 


 モンスターと戦うのですから、死ぬこともありえます。最初に選択していただく「超困難・ちょっぴりムズ・普通・やさしめ・ぬるすぎ」の各コースによって生き返りシステムに違いがあります。

 たとえば超困難コースでは生き返ることはできません。最初からやり直して下さい。(よく訊かれる質問ですが、マイボックスにキープしていたアイテムも消滅します)


 そしてまた、最初に選択していただく「善神信仰・悪神信仰」によって生き返りシステムが異なります。

 善神はお金と引き替えに生き返らせて下さいます。お金がない場合は、きっちり借金として計上されますし、取り立て人が派遣されたりします。

 悪神はただで生き返らせて下さいます。しかし、その場合カルマ値が上がってしまいますし、ごくまれに生き返りに失敗してゾンビになることもあります。

(ゾンビになった場合は自分で治し方を探して下さいね!)(*4)


 レベルが上がるほど、まだリング値が高いほど、生き返る為に必要なお金(または生き返った後に上昇するカルマ値)が多くなります。


 また死ぬと所持金が三分の一になり、伝説の武器を所持していた場合、その武器が呪われたり、さびたり、消えてしまったりと(伝説の武器の項参照)ろくなことがありません。


 できるだけ死ぬなないようにしましょうね!


 一回も死なずにクリアーできた場合R=R社から素敵なプレゼントをお贈りします。

 リアル体感ゲームとは言え、別に死んでも痛くありません(笑)ご安心下さいね!


(*4)初心者の方は「やさしめ・善神信仰」コースを取ることをオススメします。

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 ………やさしめ・善神信仰コースだな!(心に刻み込んだ)

 思い切りでっかい字で「死ぬな~死ぬなよ~~」って書いてあるみたいな感じだな。まぁ死にたかないけどさ。

 でも、ゾンビになるって、ほんとだろうか。そうなったらもはやモンスターのひとりになっちゃうってこと? ろくでもなー。ただで生き返るのは魅力だけど……。


 このゲームは一筋の道があるわけじゃない。ストーリーは千差万別、というか世界を歩いてる人、宿屋のオッサン、畑耕してる農夫、武器商人、神父、などなど、人間は全部R=R社の雇った人が演じてるらしい。モンスターはボスクラスのは人が演じてることも多いって。だから話しかけるたびに言うことが違うし、変なことをすれば怒る。

 そしてそして、どんな職業を選択してもいい。戦士、騎士、武闘家(!)、魔道士、魔法使い、神官、僧侶、狩人、忍者、商人、さまざま。発見されてない職業も沢山あるとか。

 それで目指すゴールも人によって違う。例えば商人になったときにはお金を貯めまくって、「長者番付」にランクインを狙ったりとか。レベル99の戦士になって「殺戮の鬼」として伝説の存在になったりとか! 千人の迷える子羊を救って「聖者認定」された神官になったりとか。

 もちろん勇者っていうのもアリ。勇者は職業選択方法が秘密になってるらしくて、普通にはなれない。そして魔王になるっていうのも同様。勇者より魔王の方がなってみたいなーって思うけど、私ってそういう隠し要素には全然ひっかからないタイプなんだよな。フラグをたてていかないといけないところを、倒しながら進んでいくタイプ。

 とにかく普通のスタートからゴールまでが一本になったゲームじゃない。道は、人の数だけある。

 んで、このゲーム、まだグランドエンディングが発見されてない。発見した人にはすごい特典があるって噂だ。もちろん挑戦するからには、狙ってみるともさ! やるぜ!!


 ―――― と私はかなりの力を込めてGS3のスイッチボタンを押したのだった。

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