第82話 Level 3:世界で一番我が儘な姫君 ~あなたのために~
私。
実は、我が儘なガキなど撃退する所存でおりました。
だって自分の我が儘ですらもてあますのに、他人のなんてきいてられるか? しかも礼の言い方もわきまえてなさそうなクソガキのかおりがプンプンする人物設定の噂をきいて「まあどんな子なのかしら」なんておっとり構えていられるか?
つねに心はファイティングモード。
私の手と口は、戦うためのもの!
「欲しいのじゃー!」
なんて言われようものなら、にっこり一言、
「やだ!」
で撃退するつもりだったのだ。
だけどそんなことは不可能だった。
世界で一番我が儘な姫君。
アリエッタ、それは。
世界で一番可愛らしい姫君だったのだ……!!
*******
一言でいうなら、
「も、も、桃まんじゅう?」
「まんじゅうから頭を遠ざけなさい!」
ノアに叱られた。
ピンクパールの部屋の真ん中、貝殻の形をした椅子にちょこんと座っているのは、ふわふわした薄紅色のドレスをまとった金髪の姫君だった。くるくるくるくる、綺麗な渦巻きを形成している髪は後ろでふわっと広がっていて、姫の細い首をとりまいている。
宝石ではなく花をあしらったドレス。
その変わった形のそれは、アリエッタの為につくられたものにちがいない。ドレスと言ってもレースをふんだんにつかったすその広がるスカートのそれではない。
アラビアンテイストのふくらんだズボンに、きらきら光る帯が何本もたれさがっている。一見してスカートにも見える。
いたずらな子猫みたいなこの姫君には、その活動的なドレスの方がよく似合うし、決まってる。
なによりも印象的なのはその紫色の目!
大きくてうるんだその目で見つめられるだけで心臓がどきどきする。かわいいものはこんなにも人の心をわしづかみにするのだ!
そしてアリエッタは、ユリアを見つけると、
「ユリア、帰ってきおったか。
して、どうじゃ? ローズマリー家の聖十字のための真珠は手に入ったかや?」
と、口を開いた。
ずっきーーーん! とユリアさんが胸を押さえる。え、なにこれ。なにこれ。私もドキドキするよ。この姫の言葉を聞いただけで胸が高鳴るんですけど……! 見るとノアもシロウも胸を押さえている。
「特別に見せてあげるヨ~」
とハチが現れた。
「このゲージのウィンドウを見ると分かる、そのキャラクターの『魅力』って項目だけどね~。この項目はレベルと関係ない、どう頑張っても上げることができないパラメータなんだー。固有の値と装備品とかアイテムとかで操作するんだけど。
ほらほらほら」
サラ/
・
・
・みりょく 7
「なにこの高いのか低いのかわかんない数字……!」
「結構いいセンいってるんだよー。ほら、シロウくんなんて……プッ、クスクスクスクス」
シロウのパラメータは、2だった。
モンタが「これは装備品とかそういう関係の数字であってお前の人間的魅力とかには全く関係がないし心のあたたかさなんてものは全然反映されてないからだから」て必死になぐさめている。
そーいや私の装備品、ドラゴンナックルだもんね。シロウは普通の武器だ。使い込んでるけどさ。となるとノアの魅力は……、9だった。魔法使いは普通より高め設定らしいけど、でもあんま変わらないな。
「で、ここでアリエッタ姫のパラメータを公開するとだね~、ジャジャン!!」
ハチが8の字に飛んで公開したその窓には。
アリエッタ
HP 32
MP 12
・
・
・
みりょく 777
カリスマ 777
こえのおおきさ 777
て……!
「すっ、すご!! でもなにこの声の大きさ……っ、て」
ユリアさんが、
「すみません、まだ真珠を手に入れていないのです……、ローズマリー家のイベントを起こすのにちょっと苦労し」
「な……、なんだと! わらわがこんなに必死な思いで待っていたと言うに……そなた、まだ真珠を手に入れておらなんだのか……、まだだと申すのか…………!?」
姫は目を見開いて立ち上がった。わらわらわらとメイドさんたちが逃げていく。そういやメイドさんとこの姫の格好て国籍が全く違う感じ……、てちょっと思ったときに直撃が来た。
「いやじゃいやじゃいやじゃいやじゃ~~~!!」
きーーーんときて、頭の回りにヒヨコが飛ぶ。古典的表現? でもそれは攻撃にも匹敵するような暴虐な大声だった。その名も、プリンセスボイス。
それをきくものは心臓をつかまれ、
「は、はわわわ! なっ、なんてかわいらしいひめなのかしらああ!!」
な状態と化す。
ユリアさんはすっかり目がハート状態だ。ああっ、私としたことが姫をこんなに悲しませるなんていったいどうすればいいのですか!! なんて大声を上げて身をよじっている。そしてノアもシロウも、ズッキンハートブレイク状態に陥り、
「ひ、姫……!! ほわわわ~~ん」
「なんっって、かわいいの……!! 世界で一番!!」
なんて口走っている。
で、私と来たら、ぽかーんとしてその狂信的な様子を眺めている。
プリンセスボイスの直撃、浴びたのに、私だけほわわわーん状態にならない。
なんで!? な、なんで私だけなれないわけ!!?
「あーー、サラさんすばやさの数字が高かったんですね~。えっと、素早さのパラメータが7の倍数だと、精神攻撃無効になる効果があるんですよ」
カンナに説明をされて調べてみると、確かに7の倍数だった。
「サラさん、どうすっころんでもほわわん状態になれないですね」
えええええー。なんでなんでなんで。あれすっごく楽しそうなのに……!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます