6章:世界で一番我が儘な姫君
第75話 Level 3:世界で一番我が儘な姫君
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我が誓いは剣にあり
姫君よ、あなたの命あらば
たとえ火の中水の中
それが生まれた理由
この幸福!
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「な、な、なんじゃこりゃーーーー!!」
と私たち声を揃えてしまった。
揃えずにはいられなかった。
ユリアさんは恥ずかしげにうつむいたけど、そ、そんな鷹揚に受け入れていい事態なの?
彼女の受けている任務を見せてもらったら、こんな状態になっていた。
■進 行 中 の イ ベ ン ト
***わらわは桃が食べたいのじゃ! しかもそれはエルフの森にある桃の木の実なのじゃ!
***玉虫色ドレスを着たいのじゃ! 世界で唯一玉虫色の糸を発する蜘蛛を倒してアイテムを手に入れてくるのじゃ!
***名シェフゲルジーオのつくった白パンが食べたいのじゃ! 宝石のような木イチゴをあしらった夢のように美味しいパンなのじゃ!
***廊下を走ってはいけないなどと注意した家庭教師に目にものみせてくれるのじゃ! この毛虫のぬいぐるみをヤツの鞄に仕込むのじゃ!
***わらわの退屈をなんとかするのじゃ! この世で最も面白い絵本があるという、それを持ってくるのじゃ!
***わらわ
***わ
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***わらわの櫛を買ってくるのじゃ! ドワーフのつくった黄金の櫛でないとわらわは今日髪をすかないのじゃ!
こんなにイベントが詰まってるウィンドウは、初めて見た。しかもほとんど全てがどうでもいいくだらないつまらないやるせないもんどりうって倒れ伏して草引き抜いて慟哭したい、そんな気分になるようなイベントだ。
私なら早急にリセットボタンだ。
ユリアさんは恥ずかしげに「いつしかこんなにたまっちゃったんですよね」と微笑んでいるけど。
ねえ、あなた、天使ですか?
と肩ポンしたくなる。
逃げようよ。いいから逃げようよ。
って、心から説得したくなる。
でも、こういう人ってきっと世話するのが好きなんだなあ。あまりにも当たり前だから「なんでそこまで尽くすの?」てきいたらきょとんとするに違いないよ。
ああ私にも、そういう人がひとりいたなら…………
て。思ったのだった。
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