第74話 Event2:そして、旅立ち!

「あっはははぁ、いらっしゃい! イベントはクリアーした?」


 私たちを迎えたレアラは面白そうに笑った。

「ラガート、再会した?」

ときいたところをみると、なにをどこまで知ってんのかと問いつめたくなる。まさかアレがラストに出てくるとは思わなかったよ。

 五ターンもったらイベントが強制的に終わる展開だった、みたいなんだけど…… って、分かってたらずーっと防御してたってーの! 無駄にばんばん薬草使わなかったってーの!! ま、そんなこと知らないから楽しく冒険できるわけなんですけど(棒読み)

「薬草ちょうだい。薬草薬草薬草!」

「あれ、それ翠の女神像!?」

 アイテム袋からひょっこり見えたらしい。レアラはすっとんきょうな声を上げた。

「うっふっふっふー、どさくさにまぎれてゲットしてきたんだ! ラガートの野郎、今頃悔しがってるに違いないよ。もう、教会に寄進するとか、道にかざっとくとか、あいつが歯ぎしりして悔しがりそうな用途に使ってやりたいの。無駄に二束三文で売るとかどうかなー」

「んじゃ私に売ってよ! 二束三文で」

「やだ」

 イベントクリアーで、レベルも上がったし。お金も手に入ったし。

 ふっふっふ。

 そして、なんと、シロウの呪いが解けたのである!

 王族貴族に関係するイベントをこなすと呪いを解くことができる、てことだった。今回、トルデッテ伯爵はバッチリ貴族だったからね。教会に手紙を出してくれて、それがあちらに届くやいなやお知らせの鳥が飛ばされてきて、「呪いを解除いたします」と声がしたかと思ったら、シロウの胸に生えていた矢はすっぱり消えてしまった。

 思わずみんなでばんざいしちゃったよね……もう、涙だって流しちゃうよね……こんなあっさり消えてしまうものにアタイたち苦労してたのかい、なんてはすっぱにもなっちゃうよね。

 遠隔操作で呪い、消えるの? とか。つっこみたいけど。

 終わりよければ全て、オールオッケー。てことで納得したい。



 幸せそうに微笑むアリーゼと、背中に足跡をつけてちょっと涙目のジャンが寄り添って私たちを見送ってくれた。

 その足跡をつけたのは、もちろんクラリーネ夫人。

 彼女は馬の骨に大事な娘を渡すのがイヤでイヤでイヤで仕方ないみたいだったけど、しかしやはり最後には娘の涙が勝つんだろうと思う。

 伯爵は、みんなが幸せならそれでよさそう。

 アリーゼの胸に抱かれたヴィクトリアも、すごく幸せそうだった。


 オパール団は壊滅(?)したみたいだけど、引き渡されるはずだったシャーリーたちは姿を消した。ラガートが裏で糸引いたんだろーな、納豆みたいに。ねばねばだよあの男。ニーデルラントの大臣てなんなのさ。へそ茶だよ。噴飯だよ。つーかどこかであのなりきり門番たちと再会するかと思うと期待で胸がはち切れそうだよ。



「ちぇー、私、この町から出てくから、記念に欲しかったのにな」

「あれ、レアラ、そうなの!?」

 するとレアラは満面に笑みをたたえてうなづいた。

「ライナーがこの町を出てくの聞いたでしょ」

「ああ、団長が見つかったって……」

「そしたらついていくっきゃないっしょ!!」

 レアラはきらきらした目で両方の拳を握りしめている。恋する乙女は強い。

「そっか……がんばれ!」

 心の中でひそかにライナーさんに声援送った。それは声に出した応援より、やや本気度がまさっていたかもしれない。




* * * * * * *




 そして鞄にアイテムつめて。体力もばっちり回復させて。

 私たちは、トルデッテの町を後にした。装備の充実は、完璧! ノアも杖を新調して上機嫌だ。(良かった!)シロウは矢がなくて、それだけで幸せそう。

「次は、あれだよね。ユリアさんの言ってたイベント! 竜の卵だよ」

「竜か……イシューさんたちがようやく倒してたあれ、私たちが倒せると思う?」

「………思わない」

 うん、全然思わないな! まだ、ね。


 私たちの足取りは軽く、気分は上々。鼻歌だって、出ちゃうもんね。伯爵に入城券もらっちゃったもんね。次、目指すは王都! 地図にも王都が現れてすごく楽しみ。いつ行けるかな? 他のトコいろいろすっとばしてるみたいだけど、オッケーオッケー。

 空は青いし、歩いていこう!



 EVENT2 CLEAR!!!

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