第二章 アスタロト

(艦隊司令官の説明)


 〝正義公〟アスタロトは、長く美しき黒髪と真摯なる眼差しを有する美しき少女の姿を借りて、人類に対し、以下の如き説明を実施せり。



1 戦況


「前回の定期訪問の後、旧帝国軍残党の攻撃によりて新政府からの連絡が暫時ざんじ中断せしことにつき、我はここに遺憾の意を表明する。今回の情報提供において開示されしが如く、彼女達を統率せる中枢種族は、我等新帝国の理事種族と同じく〝心ひとつなるもの〟にして、高度の戦力及び技術力を有せり。〝心ひとつなるもの〟とは、種族を構成する全個体の精神を量子頭脳に移して結び、〝種族融合体〟を構成せる最先進種族なり」


「〝種族融合体〟においては、個々の人格は保たれるも、その意思疎通は遥かに緊密化し、個体群種族とは比較にならざるほど広範かつ迅速なる情報共有と意思形成、高度演算の能力を獲得せり。また、必要に応じてその人格群の一部を様々なる量子頭脳や無機的・有機的身体に移転し、〝分離体〟や〝分離個体〟として活動せしめることも可能なり。さらに、各人格は融合体内部の仮想現実空間において多様なる生活を享受し、その安全なる模擬実験シミュレーションの結果は、融合体や分離体・分離個体の現実活動の改善にも活用せられたり」


「中枢種族は従来帝国において使用されし数種の亜空間航法に対し、より高次の空間を経由せる超空間航法とも称すべき新技術を開発せり。彼女達はこれにより、傘下の種族を伴いて銀河系からアンドロメダ銀河に逃亡したる後、現地の有力種族群をも服属せしめ、我等が銀河系文明の再建に努めたる間に艦隊を新造して、散発的ながらも組織的な反撃を加え来たるものと判明せり。この航法は、さながら車両技術に対する航空技術の如く高速度にして、星間物質の希薄なる銀河間宇宙の航行も可能なれど、発着宙域及び航法精度に制約を伴えり。我等はこの弱点に着目し、出現後の敵艦隊による目標の探索及び襲撃を阻止すべく、通信・交通を制限するのやむなきに至れり」


「我が艦隊は敵を撃退し得るも本拠地まで追撃すること能わず、帝国各所は戦火の炎色に染め上げられたり。然し、我等が新帝国においても超空間を経由せる通信・移動手段を既に開発中であり、先般その実用化に目途がつくと相前後して、かの銀河の反乱勢力より超空間通信による救援依頼及び情報提供を受信せり。それによれば、旧帝国の逃亡政権は同銀河中央部の制圧に成功せるも、以後の文明開発において銀河系におけると同様の失敗を繰り返し、先住諸種族のみならず科学長官ラジエル、文明開発長官レミエル及び親衛軍の提督ラグエルの離反をも招きたるものと判明せり。また、技術的助言の提供によりて早期進発が可能となりし先遣艦隊の報告から、同銀河の速やかなる平定は確実視されるに至れり」



2 理事種族ベールの意見


「もとより旧帝国においては我等もまた反乱軍と見做され、闇の帝国とさえ呼称されしことは、捕虜の情報より周知の事実なり。また新帝国においても、旧帝国側種族に対し厳格なる処断を下すべし、との意見は少なからず存在せり。例を挙げれば、旧帝国時代より引き続き銀河系外周星域長官の職に在る、〝辺境王〟ベールがその筆頭なり。彼女は永きに渡り、他星域の種族とはその多くが基盤元素も文明様式も著しく異なる外周星域諸種族の指導者として、同星域の発展に尽力せり。また、今次大戦にありては両陣営の戦力が拮抗きっこうせる段階において、道義的理由から我等の陣営に参加することを決断せり。これは当時における旧帝国の政策方針からして、敗北時には関係種族絶滅の危険を伴う勇断なりしが、彼女はその人望から外周種族の圧倒的なる支持・協力を獲得し、新帝国の勝利に貢献せり。然し他方ではその犠牲もまた多数に上り、旧帝国軍により自らの同胞種族が甚大なる被害を被りたるが故に、戦後処理につきては旧帝国側に与したる全ての指導的種族への厳罰を求めて譲らざるものなり」



3 理事種族バールゼブルの意見


「また、旧皇帝領復興開発長官バールゼブルは大戦勃発時、皇帝親衛軍の提督として先帝を守護すると共にその真意を確認すべく、独断にて皇帝直轄領に進入せしところ、叛乱軍と断ぜられ、超空間駆動を装備せる中枢種族の秘匿艦隊より、超新星化攻撃を含む奇襲を被りたり。彼女は自艦隊及び皇帝領の全滅を阻止すべく、その機転により自らもまた止むなく複数の恒星を先行破壊し、重力場の攪乱かくらんによる超空間離脱点の変動を利用して、辛くも敵艦隊の撃破に成功せり。然し、この戦闘では多数の臣民が巻き込まれて犠牲となり、他の種族間における戦闘の勃発も相俟ちて、同地の大半が不可住宙域と化せり」


「戦後彼女は自ら現在の地位を希望して、〝地獄王〟の異名を甘受しつつ同星域の復興に尽力せり。彼女はまた、大戦の真相をも究明すべく、技術部門副長官アミーと情報部門副長官グラシャラボラスの良き補佐を得て、旧帝国遺物の回収と分析に努めたり。特に最近の大いなる業績としては、領内の一星系において〝先帝〟のものと思われる記憶組織の破片が発見され、同破片には中枢種族による、発展途上の諸種族に対する道義的・法的な重罪を構成せる、多数の発展歪曲・対立煽動工作が記されしことが判明せり。この事実は旧帝室周辺における歴史的犯罪及び、その証拠隠滅工作あるいは内紛に伴う先帝の崩御、または重大なる損傷を推認せしめるものであり、これにより彼女もまた、旧帝国の責任ある上級種族に対する厳正なる処罰、あるいは修復・再生の放棄を求める意見を有するに至れり」



4 理事種族アモンの意見


「然しまた、帝国内にはより穏健なる意見も数多く存在することを忘れるべからず。現在帝国本土防衛司令官たる〝強健侯〟アモンは、かつて現皇帝の軍事担当副官なりしが、大戦初期において最愛の友好種族、カイムと相討つ悲運に見舞われたり。両者は同じ赤色巨星のもとで進化を遂げたる姉妹種族なれど、永きに渡り紛争を継続せり。戦争から不和の時代を経て、さらに永きに及ぶ努力の末に、ようやく和解を達成したる彼女達は帝国への加入を認められ、以後は協力して進歩の階梯を上昇せり。その結果、彼女達は〝歴史あるもの〟のうち〝心ひとつなるもの〟、即ち先進種族の中でも個体群種族から種族融合体への進歩を達成せる最先進種族として、軍の意思決定に参与する資格をも獲得せり。然しながら、とある白色矮星のもとで現皇帝破壊の勅命を受領せしアモンが、異議を唱えてその再確認を求めたる時、その討伐に派遣されし者はカイムなり」


「帝国の処断を恐れしカイムは、一切の通信を断ちて襲い来たれり。アモンはあらゆる交信手段によりて停戦を求め、遂には絶望的な努力として、自らの激光レーザー兵器の出力を低減し、かつての母なる恒星の色彩波長に速度偏差修正を施して発信せり。然し彼女は攻撃を制止し得ず、止むなくカイムの可動惑星を破壊せり。アモンは平素、任務においては私的感情を交えることなく、凶悪なる犯罪種族や組織に対しても敢然と職務を遂行する一方、社交にありては色彩豊かなるが如き人情味に溢れたる種族なり。然し、救援に到着せし我が艦隊に対し、勝利を報告せる彼女からの通信は、一大種族の集合意識とは思い得ざる暗黒の悲嘆と、漂白されしが如き虚脱を示したり」


「幸いにも、直後の救難作業において修復可能なるカイムの一部が発見されしおり、現皇帝はアモンとの一時的融合によりてこれを復活せしめたる後、失われし情報を収集・復元して彼女を再生すべく推奨し、彼女もまた歓喜してこれに従えり。かかる処遇は旧帝国においては考え得ざるものなりしが故に、アモンと同様、彼女の内部にて復活せしカイムの人格もまた、新皇帝への支持を誓いたり。アモンの精神は生彩を取り戻し、その士気・能力と共に、かような事態を招きたる旧体制への変革を求める意欲は劇的に増大せり。然しアモンは、かかる苦難を経験してもなお、逃亡政権種族の討滅や文明剥奪等の過酷なる処分は望まず、むしろ相手方の自暴自棄によりて、さらに同胞相討つ悲劇が繰り返されることを恐れ、戒めたり」



5 理事種族アスタロトの意見


「もっとも後に戦闘が激化したる折、我もまた哀切の感情を経験せし事実は、これを否定すること能わず。其は我が艦隊が中心星域において転戦し、旧帝国派の諸勢力を誘引せる間に、現皇帝及び二名の副長官が途上星域及び外周星域に赴きて協力を求むべく、我と現皇帝が別れの挨拶を交換せし時のことなり。若し一方が破壊され、他方がその残骸を発見・回収したる場合には、アモンと同じ方法によりて融合及び再生を図ることを約し、我等は各々の目的地へと進発せり」


「然し、これもまた幸いなることに、現皇帝及び副長官達の告知と謝罪に偽りなきことを知りたる途上星域の諸種族は〝強健侯〟の後に続きて健闘し、〝辺境王〟及び指揮下の外周星域種族もまた〝光輝帝〟の智略と〝熱情王〟の政略に支えられ、鬼神の如く勇戦せり。彼女達の努力は正当性を失いし旧帝国軍の士気喪失とも相俟あいまちて、現皇帝の追討を阻止せるばかりか、両星域における戦況を終始優位に推移せしむることを得たり」


「我が艦隊もまた、旧皇帝領におけるバールゼブル艦隊の活躍及び中枢種族の分裂による混乱に助けられ、旧帝国戦力の外周方面への進出を阻止し、さらには懸命なる説得によりて、その大半を我が艦隊に帰順せしむることに成功せり。このことは、旧帝国側の非人道的攻撃及び種族間の内紛によりて、結局は旧帝国の主要部が荒廃したる大戦の帰結を考えれば、新たなる帝国の礎となるべき星域を保守し得たる点において、誠に僥倖ぎょうこうと言わざるを得ず。故に我もまた、今後も重ねてかような悲劇的事態を繰り返すが如きは、本意に非ざるものなり」



6 理事種族アスモデウス及びグラシャラボラス、アドラメレクの意見


「かつて現皇帝が文明開発長官なりし時代の民政部門副長官にして、新帝国設立時の同長官、中心・途上星域が統合されて中央星域となりし現在においては、我が遠征艦隊の民政部門副司令官を勤めるアスモデウスもまた、報復政策を望まざるものなり。〝熱情王〟の別名を有する彼女を駆り立てるものは、憎悪や復讐心に非ず。帝国の草創期より営まれし文明育成事業が、現実にはその名に反する陰謀をはらみしものと化したる後もなお、勅命の名のもとにその実施を強要される境遇を免れ、真に銀河系文明の発展に資する活動に従事せんと願う、現皇帝と共に抱く理想と情熱なり」


「かかる心情は、親衛艦隊におけるバールゼブルの副司令官として、最初に前王朝の疑惑を彼女に伝えたるグラシャラボラス、また広大なる銀河系外周星域を統治せるベールの技術及び情報部門の副長官を兼務して、適切なる支援と助言を行い来たるアドラメレクといった、彼女の友好種族においてもまた同様ならん。彼女達はいずれも、此度こたびの大戦に関する方針においては、復讐よりも戦災の拡大や再発の防止を重視すべしとの意見を表明せり」



7 理事種族ストラスの意見


「旧帝国時代より科学長官の職に就きたる〝賢明王〟ストラスもまた、同意見なり。そもそも現皇帝が、自らの担当せる文明開発計画の実施段階において数々の不審事件を発見したる時、彼女の依頼に応じてその分析を行いし者はストラスなり。彼女は従来、帝国の要職にある者としては政治的中立を以て知られ、〝帝国よりも科学に忠実なる者〟と評されし種族なり。然しまた同時に、彼女は〝科学は全ての知的種族の幸福のためにあり〟を信条とし、〝歴史あるもの〟、中でも中枢種族のみが技術と権益を独占する旧帝国の組織風土に対し、密かに疑問を抱き続けし者なり」


「現皇帝からの情報を分析せる彼女は、数々の発展途上文明が惑星政府を樹立し、自然環境の保全、社会環境の制御、及び人道的なる産児制御・資質向上の能力を実証して、帝国との接触及び交流の資格を得たるにも関わらず、これを許可されざりしことを確認せり。彼女はまた、特に有望なる文明に対しては権力腐敗や愚民政策への誘導、危険なる軍事技術の供与あるいは要人暗殺等の、意図的な干渉が外部より秘密裡に行われしことを発見せり。さらに彼女は、これらの妨害・破壊工作が単なる犯罪組織・種族ではなく、他ならぬ帝国の中枢部において立案されし可能性が高きことを看破せり。加えて、かかる状況下で生ぜし凄惨なる種族内・種族間闘争に生き残りし〝優秀〟なる戦闘種族は、いずれもその後に帝国の支援を受け、増強の一途を辿る親衛軍・正規軍または有力種族の私兵軍の艦隊に編入されし事実が判明せり」


「状況の重大性に鑑み、彼女は以後発生が予想される事態に対処すべく、分析の結果を現皇帝に通知すると共に、帝国が道を誤りし時は協力してこれを正す旨の盟約を結び、大戦時にはこれを守りて新帝国の設立に参加せり。また彼女は、親衛軍及び正規軍において穏健派と目されし司令官、即ちバールゼブル及び我の技術部門副司令官として、自らの情報及び民政部門の副長官なりしアミー及びヴォラクを各々派遣することに成功し、以後の大戦における勝利にも多大なる貢献を果たしたり」


「然してその彼女も、『新帝国の存立目的は、報復あるいは制裁それ自体には非ず、全ての知的種族の繁栄及び幸福なり。故に中枢種族の討滅よりも、科学的なる分析及び修復・矯正によりて悲劇の反復を防止することが肝要なり』と述べて、戦後処理には慎重を期すべき旨を建白けんぱくせり」



8 理事種族アミー及びヴォラクの意見


「アミー及びヴォラクは双子種族なり。帝国においては種族間の均衡を維持すべく、〝心ひとつなるもの〟の階梯に到達せる種族の分割増殖は禁じられたり。然し、彼女達の前身たる種族は、時に奇抜なれども独創的な才能を発揮し、〝歴史あるもの〟の中でも後続の〝適応自在なるもの〟及び〝星を動かすもの〟の発展に大きく寄与せしが故に、先帝の名において彼女の複製実験が帝国議会に提案せられたり。この議案は可決され、好奇心に溢れる彼女もまたそれを了承せり。然し、彼女達は複製後の検証期間において、統治分野では〝未来あるもの〟への参政権付与を主張して中枢種族より激烈なる非難を受け、軍事分野ではその提案せる革新的艦隊機動案の欠陥によりて演習を大混乱に陥れ、技術分野においても特段の業績を挙げ得ざりき。故に両種族は、複製実験を担当せる科学省の預かりとなり、長官ストラスの情報及び民生部門の副長官に就任せり」


「然しながら、両名及びその一部複製体と融合せしストラスが、その共有せる膨大な種族継承記憶を暗号鍵とする秘話通信回線を構築し、かつ帝国最高の賢者と称されしストラスの知力にアミーとヴォラクの創造性が加わりて、一個の超高性能なる並列演算装置の能力を獲得したる事実は、当時の帝国内に知る者なし。彼女達は大戦において、その能力を大いに発揮せり。〝皇帝領の戦い〟において、敵艦隊の超空間跳躍の法則性を算出し、恒星破壊によりて移動せし次なる予測出現位置にバールゼブル艦隊を誘導して、更なる虐殺行為を阻止すべくこれを撃破せしめたるはアミーなり。その他の旧帝国中心星域の戦いにおいて、旧帝国派及び分離派の諸侯・軍司令官に対し、我が艦隊に完璧なる包囲陣形を形成せしめ、最小限の犠牲において彼女達を降伏せしめたるはヴォラクなり。これらの事実を知りたる他の銀河系種族は、かつての艦隊演習における彼女達の真意をも察するに至れり」


「戦後の調査によれば、議案が提出されし真の理由は、先帝を擁する中枢種族が、超空間航法の開発と平行して強力なる戦闘種族を量産し、以て銀河系における覇権を維持すると共に直近の大銀河、即ちアンドロメダ銀河への侵略を実行せんと図りしためと判明せり。かかる経緯で誕生せしアミーとヴォラクの活躍が旧帝国崩壊の一因となりしことは、歴史の皮肉なりと評する者もあり。然しもとより、両名が元来有する才気と良心は、彼女達が〝光輝帝〟や〝賢明王〟と分かち合う〝全種族のための文明発展〟という理念のもとにおいてのみ、水を得た魚、陽光を得た草木の如く力を得て発揮しうべきものなるは、至極当然のことならん。また彼女達はストラスの姉妹種族として、その合理的思考をも共有せる種族なり。故に両者の戦後処理に関する意見も、ストラスと同様なることは言を待たず」



9 説明の理由


「今回、我が以上のとおり銀河系及びアンドロメダ銀河の現況につきて説明を行いし理由は、次の三点にあり。第一に、このたび汝等人類にも、進発予定の我が遠征艦隊に同行せしむべく、戦闘及び戦後処理に関する視察団の派遣を要請するためなり。銀河系の中心部が荒廃し、かつアンドロメダ銀河の統治をも継承すべき現在の帝国にありて、旧開発途上星域に居住せる〝未来あるもの〟による、新帝国政策への理解と支持は不可欠なり」


「第二に、今後予定される〝未来あるもの〟への参政権の付与に向け、基礎的情報を提供するためなり。従来帝国においては、一定以上の能力・実績を備える〝歴史あるもの〟にしか選挙権及び被選挙権が与えられざりき。然し、先の帝国議会において、然るべき情報処理技術の支援のもとに責任ある種族的意思決定をなし得る場合には、他の種族にも順次、各種の政治的権利を付与する法案が可決せられたり。この改正は科学・技術の発展に伴う、経済・社会生活の豊富化・広域化及び複雑化・加速化に対応せる、制度・政策の巨大化及び分権化……特に民主化……の同時進行という、文明発展の一般法則に従いたる必然の改革なり。かかる事実は、既に惑星上の統一政府樹立までの発展を成し遂げし人類にとりても、もはや自明のことわりならん。現皇帝サタンは既に、この理に従いて我等理事種族や議会構成種族、さらにはその他の賢明なる諸種族の意見も取り入れつつ国策を決定する方針を発表せり」


「第三に、今なお汝等の間に残存し得べき、旧帝国系種族やその協力者に対する憎悪や恐怖、偏見の解消を要請するためなり。今日においては超空間通信・航行技術及び超新星兵器の実用化によりて、二大銀河の統一は実現が可能、かつ必須の課題となりき。地球と帝国との正式な接触の契機が今回の大戦となり、またその影響から地球においても痛ましき内戦が生ぜしことは、誠に悲しむべき事実なり。然し今や、汝等人類もまた過去の遺恨を捨て、巨大なる星間社会への参加に対する逡巡しゅんじゅんを払い、他種族と未来への展望を共有して、新たなる一歩を踏み出すべき時を迎えたり。以後汝等が、新帝国の実力及び正当性への信頼のもとで、来たるべき社会の変化に対して一体性を保ちつつ、両銀河を中心とする素晴らしき新世界の建設に参加せらるべく、ここに我、帝国艦隊司令長官兼アンドロメダ銀河遠征艦隊司令官アスタロトは、切に希望するものなり」

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