参章外伝 【射殺】


俺の名前はスコット。スコット・グロースだ

人型機動兵器というアニメ出てくるようなな兵器による戦闘が行われている、『大陸』と呼ばれる地にて戦う人間だ

最も、俺の仕事はそんなスーパーロボットのパイロットじゃない

生身による工作だ






「S、起爆を」

「こちらS、了解」

祖国のために

正しくは、祖国になる予定の組織のために、俺はこれから他の部隊員と一緒に敵の基地へ突入する。表では人型機動兵器同士がドンパチやってるが、構いやしない

精々派手にやって俺達のことが相手にバレないようにしてもらいたい

作戦はこうだ

訓練された歩兵部隊を三つに分け、別々の位置から基地に突入。中にいる敵さん皆殺し

どうだ、カンタンだろう? だからこそ有効だ

それに大陸で人型機動兵器ばっか使ってやがった奴らには、まさかこんな重要な局面で歩兵が重大な任務を持たされて動くとは思いもしないだろう

俺のセットしたプラスチック爆弾が起爆した。基地の壁はあっさりと破れ、人間が複数入れるくらいの穴が開いた

「突入」

指揮官が一言言うと、隊員は全員突っ込んでいった

途中基地にいた人間と何回か遭遇したが、サブマシンガンで射殺していった

通信で、敵のリーダー格が逃げ出したとの報告を受けた

俺は戦場を突っ走っていた

曲がり角を曲がった


いた


銀髪の、やや身長の低い美女

そいつが俺達の最優先殺害目標だ

コイツを撃ち殺し、フルハウス団の指揮系統をズッタズタにする。それが俺達の任務だ

弾切れのサブマシンガンはとうに捨てた。だからハンドガンを向けた

撃とうとした瞬間、基地全体が揺れた

狙いが狂い、放った弾は相手の腹に当たった

「なんだ、今の揺れは!」

隊員の一人が叫ぶ。任務中なのに私語とは、三流以下だろ

だがそれは俺も思っていた

確実に頭を撃ち抜ける距離だった 確実に殺せる距離だった

あの揺れだ。あの揺れが無ければ今頃は

「仕留め損ねた、追跡する」

「待て、B分隊が近くにいる」

「了解した」

そういえば、今回の戦闘には傭兵が参戦していたな

『破壊者』デストロイアと『騎士』アリシオンだったか。確かに連中ならこんな揺れを発生させる戦いもできるだろう

だが、俺達の仕事はそいつらとガチンコすることじゃない

「基地内の残党を掃討する」






何故だ

何故、何故なんだ

何故『死神』がここにいる。あれは外の人型機動兵器とやりあってたんじゃなかったのか

「くっ!」

いつの間にかB分隊全員からのシグナルがロストしたと思ったら、『死神』の仕業か!

隠れなければ

勝てるわけがない

あれは、この大陸で最も強い傭兵なんだ。誇張抜きでだ。機体の性能はおろか、パイロットの腕も高い

人型機動兵器が束になっても敵わないのだ

だが、パイロットが降りた。何処へ向かうんだ?

それに、よく見たら機体は中破している

一体何が

あっ

キスをしている

死神があの、銀髪女と

まさかあの二人は

輸送機が降りてきただと

今度はなんだ

金髪の女か

泣きながら拳銃を死神のパイロットに向けてやがる

状況からしてキスの場面は見てないだろうが

死神は両手を上げて動かない

二人とも、輸送機に乗ってどこかに行っちまった

あの銀髪の女、死んでるのか

俺は『死神の傭兵』が大切にしてた女を殺したわけか

奴にも、大切な人がいたというわけか

虚しいな

これが、戦いか

恋人同士を引き裂いて、その戦果を喜び合う

これが白虎帝国に必要な、犠牲だというのか

新しい国家を作る、礎というわけか






それから俺は、大陸から離れた。確かに、センチメンタル過ぎたかもしれない

あのとき三流以下だと小馬鹿にした隊員のことは言えないかもしれない

だが、それでも

もう人を撃つのはゴメンだと思った




それからどれくらいか経ったある日

大陸の方向から四つのキノコ雲を見付けたのはまた別の話だ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る