第18話

「もう、アルミさんったら、笑ってばかりじゃなくて、何とか言ってくださいよ」

「ヒー、ヒー、もー、パス」

「あ、ヒドイなぁ。違うんですよ、ご主人。この間、取材の日に頂いた味噌汁の具のことを聞きに来たんです」

「なにィ、おめェ、あん時のあれ、本気だったのか。仕様がねえ、なぁ」

「ヒャ!」

 もうダメ。ジョーダン抜きで息が出来ない。かんべんしてー。

「おい、或美。もう、教えてやれ。こいつ、このままじゃあ、帰らねえぞ」

「そうです、もとよりそのつもりです。一歩も引きませんよ」

 ちょっと待って、って、息整えるから。はぁ、深呼吸。


「はぁ、しょうがないなあ。ほんとに知りたいのー」

「だからそう言ってるじゃ、ないですか」

「でもさあ、ただ教えるだけじゃあ、やっぱりつまんない」

「え、そんなことないです。つまります」

「じゃ、なくてェ。たとえば、ハンゾーは、あれ、何だと思った」

「いえ、まったく分からないです」

「それじゃあ、秘伝は教えられんな」

「え、なぜ。どうしてですか」

「だって、自分から解決を導き出そうとしてないじゃん。最初っから、人頼みにしてる」

「い、いや。む、むう」

「ハンゾー、こりゃ、一本取られたぞ。或美の言うことのほうが、筋が通ってらぁ」

「そんなに何日も悩むんなら、自分で何とか調べることも出来たかも、じゃん。その様子じゃ、そんなことしてないんだろうけど」

「こりゃあ、一本どころじゃ、ないようだね。ハンゾーくん」


 ハンゾー、しばし考え込んでいる。ん、どうしたのかな。

「わかりました。言われてみれば、アルミさんのおっしゃるとおりですね。ぼくはプロの編集者を目指すものとしての意気込みと熱意に欠けていたように思います。確かに編集者であれば、八方手を尽くして疑問や不明を調べ上げるのが、基本中の基本だと思います。ぼくは、大きな考え違いをしていたようです」

「よし、分かればよろしい」

「はい、申し訳ありませんでした。日曜のこんなに朝早くから、おじゃましてしまって」

「ほんとだよねー。で、本当に何も思いつかなかったの」

「うーん、じつは少ない食に関する知識の中から、いろいろと引っ張り出して来て、目星がついたものが、あるにはあったんですが」

「なんだ、あったんじゃん。やっぱり、プロの編者者、だねえ。で、なに」

「ただし、ぼくの導き出した答えは、あまりに荒唐無稽すぎて・・・・・・。だから、こうしてやって来たといえなくはないんですが」

「だから、何?」

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