壊れた世界の魔法使い

メープル

前編 逃亡編

一章 目覚め――想いから衝動へと

序文

あらゆる事象には二面性がある。


光が差せば影が生まれるように。


この世に生を受けた限りは決して逃れることのない――縛られた法則さだめ


それは道具。

――優れた道具はその実、優れた凶器にも為り得る。    


それは風景。

――心洗われる風景であっても、枯れれば汚染地域へと様変わりする。


それは人間。

――いかに善行を重ねようとも、深層心理のどこかでは闇を抱え持つ。


銀河体系から神にだって例外はなく。


すべては半分で成り、一つで構成されている存在は皆無。


正しい在り方をしようと必死になっていた。

だけど、終わってしまえば――儚く、幻想のような時間だったと錯覚する。


影が濃くなれば 手の平返すようにして 嘲り 罵り 怨み 陰鬱とさせる。


世界を照らす期間は一時的なものなのに、暗く染まれば永遠むげんに感じられるほどの苦痛。


数え切れないほどの 幸福を与えた

数え切れないほどの 笑顔を与えた

数え切れないほどの 愛情を与えた


その仕打ちが要らないものだと、端に追いやられ。

未来永劫に――捨てられ続ける。

       

ああ、それは――――なんて ひどい話。




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