第五章
「ただいまー……」
直巳が帰宅すると、玄関まで姉のつばめが迎えに出てきた。
「なおくん、お帰り。遅かったのね」
「そっちこそ、今日は早いじゃん」
「残業多すぎて、人事に怒られちゃった。早く帰れって」
つばめが帰宅するのは、いつも早くて21時ごろ。終電まで働いている日も珍しくない。それでも家事はマメにこなし、直巳に負担をかけまいとしている。そのせいか、休日はどこに遊びに行くでもなく、家にいる。休日に昼寝しているときが一番幸せ、ということだ。
台所で直巳が買ってきた食材を整理していると、つばめがそわそわと動き回る。
「……なに?」
「え? いや、せっかく早く帰ってこられたから、今日はお姉ちゃんがご飯作ろうかなって。なおくんがどんな材料買ってきたのかなー、って見てたの」
「……今日は俺の当番。早く帰ってきたなら、ゆっくりしてればいいじゃん」
直巳がため息をついて、姉を台所から追い出す。つばめは大人しくリビングの椅子に座ったが、落ち着かないようで、ちらちらと直巳を見ている。
つばめが直巳に家事をさせないようにするのは、いつものことだったので、直巳はつばめの視線を無視して夕食の仕度をはじめた。
一時間ほどして夕食が完成する。今日は姉の好きな和食だ。買ってきたカレイをどうしようかと考えたが、今日はできたてを食べてもらえるので、焼き魚にした。いつもは帰りが遅いので、魚料理は温めて食べられる煮魚が多い。
「なおくん、お料理上手になったね」
「そう? 姉さんの方が上手いよ」
「そんなことないよ。お姉ちゃん、なおくんのご飯食べられて嬉しいな」
「そ、そういうのいいから……早く食べろよ」
「はい。それじゃあ、いただきます」
つばめは食前、食後にきちんと手を合わせる。ちなみに外でもやるので、最初は恥ずかしかったが、言ってもやめないのであきらめた。
食事中、つばめはずっと笑顔で美味しい美味しいと言っていた。直巳は照れくさいのもあって、投げやりな返事をしていたが、内心は嬉しかった。
食後の後片付けは二人でやった。直巳が止めるまもなく、食器を下げると同時に洗い始めたので、仕方なかった。
片付けが終わると、二人でお茶を飲みながらゆっくりと過ごす。湯飲みには、それぞれの名前がでかでかと入っており、なかなか恥ずかしい。以前に直巳が、「恥ずかしいから」と使用を断ると、つばめがこの世の終わりのような顔をしたので慌てて訂正し、その日からずっと大事に使っている。割れた時のつばめのことを考えると、大事にせざるを得ない。
特に何事もなく、二人は会社や学校での出来事を話す。ただ、お互い、天使教会のことだけは口に出さなかった。
いつもは直巳の話をつばめが聞いていることが多いのだが、今日は少し違っていた。直巳はあまり話さず、つばめの話にも適当な相づちを打つだけだった。さすがにつばめも気がつく。
「ねえ、なおくん。何か気になることでもあったの?」
「え、あ……いや……ちょっと……」
直巳がしどろもどろになると、つばめが心配そうな顔をした。
「何か、悩み事? 学校で何かあった? お姉ちゃんに話して?」
「いや、大丈夫。そういうのじゃないから」
「そう? なら、いいんだけど……」
変わらず心配そうな表情のつばめだったが、本当にそういうことではなかった。
直巳は先ほどから、手元でずっとネックレスのケースをいじっている。これをいつ、どんな風に渡そうか、ずっと考えていたのだ。
(いいタイミングがきたら渡そう。いいタイミングってなんだ? そんなのくるのか? 突然渡すのって変じゃないか? 自然に渡そう。自然? 渡すこと自体が不自然なのに?)
直巳の脳内は、ずっとこんな調子だった。焦りを誤魔化すために、何度もクソださい湯飲みから飲みたくもないお茶を飲む。当然、すぐになくなってしまう。
実は、つばめは直巳が何か言おうとしていることがわかっていた。幼いころから、直巳は何か言いたい時には、このように落ち着きがなくなる。ちなみに、こういう場合は悪い報告ではない。ただ、言いにくいだけのことだ。
(彼女でも出来たのかな)
弟の様子から、なんとなく、そんな風に思っていた。
「なおくん」
「ん?」
「彼女とか、できた?」
直巳が湯飲みを落とし、空中でキャッチした。あからさまに動揺している。
「な、急になんだよ!」
「違った? なんか、言いたいことありそうだったから、彼女でも出来たかなって」
つばめに挙動不審がばれていたことを知らされると、直巳は深呼吸して覚悟を決めた。きっと、今がいいタイミングなのだろう。もっと格好良く渡したかったが、自分には高望みだ。とにかく渡せればいい。
「突然、なんだけどさ」
「うん? なあに?」
直巳が隠していたネックレスのケースをつばめに差し出す。
「これ、その……プレゼント!」
つばめは、きょとんとして固まっている。
「プレゼント……お姉ちゃんに?」
「そ、そうだよ。いいから、早く受け取ってくれよ!」
「え? お姉ちゃん、お誕生日じゃないよ?」
「い、いつものお礼だよ……その、忙しいのに家事やってくれるし、自分のことよりも俺のことばっかで……だから、感謝を伝えようと……いうか……」
そこまで言うと、直巳は恥ずかしくてうつむいてしまった。呆然としているつばめの手に、なかば無理矢理ケースを押しつける。
「と、とにかく……プレゼントだから……」
黙り込んでしまう直巳と、渡されたケースを交互に見る。つばめは、ようやく理解した。
「……開けても、いい?」
「い、いいよ」
つばめがケースを開けると、中には細身の綺麗なネックレスが入っていた。トップには小さいが宝石までついている。
嬉しさのあまり、感嘆の声が漏れそうになる。嬉しくないわけがない。大好きな弟が、自分にこんな立派なプレゼントをくれたのだから――立派な――立派すぎるプレゼントを。
「なおくん、ありがとうね。お姉ちゃん、すごく嬉しい」
「そ、そう?」
直巳の顔が明るくなるのを見て、つばめは胸を痛めた。
このまま素直に喜んで受け取れれば、どんなに幸せだろうか。
でも、駄目なのだ。自分は恋人ではない。姉で、彼の保護者なのだ。
「――これ、すごく綺麗ね。どうしたの?」
「あ、ああ……知り合いから買った」
「そう。いくらしたの?」
「いくらって……そんな高くないから気にしないで」
直巳には伝わっていない。つばめはやや低い声で言った。
「いくら、したの? ちゃんと言いなさい」
直巳が驚いた顔をしてつばめを見る。つばめは目線をそらさず、弟の目を真っ直ぐに見た。
「10万……だよ」
つばめは顔を伏せた。やはり、高価だ。学生の買うものではない。
「――そうなの。なおくん、これは受け取れません」
そう、はっきり言うと、つばめはケースを直巳の前に置いた。
「え……なんで?」
直巳は不思議そうな顔をする。心は痛むが、つばめは言葉を続けるしかなかった。
「10万円もするものを、ポンとは受け取れません。これがもし、なおくんが就職して、初めてのお給料で買ってくれたものなら――1万円でも千円でも、お姉ちゃんは泣いて喜んだわ。でも、なおくんはそのお金をどうやって稼いだの?」
「それ……は……」
「――天使教会でしょう。お姉ちゃん、反対してるよね? 天使教会で働くのなら、お金も入れないでいいって、いつも言ってるよね?」
「でも! お金が!」
「でも、じゃありません。なおくんの能力、素晴らしいと思うわ。でも、それを使って秋川神父とグルになって、人を騙して稼いだお金でしょう?」
騙した、という言葉を聞いて、直巳も冷静さを失った。
「ちゃんと助けてる! 金額だって向こうが決めてる! 何が悪いんだよ!」
「こんなお金の稼ぎ方――しかも大金――なおくんはおかしくなるわ。いえ、もうおかしくなっているのよ。いくら稼いだのかは知らないけど、10万円は大金だもの」
「また……この話になるのかよ……俺が、俺の能力で稼いで何が悪い! 誰も不幸になってないじゃないか!」
姉弟は何度もこの話をしていた。能力を使ったトリックで、労せずに大金を稼ぐ。直巳は姉の負担を減らそうと思っているのだろうが、つばめはそれが嫌だった。なんだが、直巳が汚れていくような気がして。それならば、直巳には天使教会から距離を取ってもらって、自分が苦労して稼ぐ方が、よほどよかった。
直巳は天使教会で稼いだお金を、ほぼ全てつばめに渡していた。それは大変な金額で、つばめが稼ぐことは難しかった。
だが、普段の生活において、つばめはそのお金に一円も手をつけていない。すべて、直巳のために貯金をしていた。直巳の学費、病気や事故にあったときのためのお金として取ってある。本当はそれも嫌だったが、直巳の可能性を狭めるのはもっと嫌だったから、我慢していた。
ただ、直巳はそのお金を姉のために使ってしまったのだ。悪気はなかったのだろう。だからこそ、それは注意しなければいけなかった。
「たしかに、なおくんは人助けをしているのでしょう。能力は才能だとすれば、それでお金を稼ぐのも良いのかもしれない。このまま、秋川神父と嘘を続けて、彼のコネで天使教会に入って、もっと大金を稼ぐでしょうね――お姉ちゃんは、嫌だわ」
ピシリと言った。直巳が震えているのもわかっていた。
「お金を稼ぐのが悪いと言っているわけじゃないの。ただ、なおくんはもう、ずれているの。労せずに一日で数十万円を稼いで、十万円をポンと払って。それはおかしなことなの。それをわかってほしいの。お金のことを心配してくれるのは……お姉ちゃんが情けないのがいけないんだけど……でも、それでもお姉ちゃんがんばるから、こういうのは――」
「俺は! 俺はただ! 姉さんを助けたいだけだ! 早く一人前になって、姉さんに楽をさせてやりたいんだ! 秋川神父とやってることが、素直に褒められるとは思ってないよ! でも! それならどうしろっていうんだ!?」
直巳は椅子から立ち上がって叫ぶ。泣いていた。
「俺は、必ず姉さんを助ける! そのためには能力を使うのが一番確実なんだ! 一番稼げるんだ! 汚い? それで姉さんが助けられるなら、汚くたってかまわない!」
「なお……くん……」
つばめも泣いていた。そこまで自分のことを思ってくれていたのか。そこまで心配させてしまっていたのか。嬉しさと悲しさと、それから何かにたいしての怒りとが混ざって、自分でもその感情がなんなのか、わからなかった。
「父さんは天使にやられた――母さんは俺に神秘呼吸を教えると姿を消した――天使が! 能力が! 俺たちから両親を奪っていったんだ! なら、それを利用して何が悪い!」
「駄目……駄目よ……なおくん……そんな風に思っては駄目……」
「なんでだよ! 何が駄目なんだよ!」
「ゆがんで……ゆがんでしまうわ……大変なのは私が受け止めるから……なおくんはどうか、普通の子として、普通の人生を送ってほしいの……」
つばめの目から、はらはらと涙がこぼれる。
両親がいない分、弟に苦労をかけまいと。真っ直ぐ育つようにと頑張ってきた。しかし、直巳は姉が思うよりも有能だった。姉が思うよりも男の子だった。姉が思うよりも、姉のことを愛してくれていた。
「俺たちに普通の生活なんて……もう……ないんだよ……」
直巳が言ってから、はっと気づいた。
「ごめ……ごめんね……お姉ちゃん……バカだから……なおくんに苦労かけて……普通の生活を……おくらせてあげられなかったね……お姉ちゃん……駄目……だね」
つばめはぐしゃぐしゃの顔で笑顔を浮かべようとして、できなかった。
直巳はもう、そんな姉を見ているのがつらかった。自分が間違ってるとも思わない。それでも、姉を泣かせたのは自分だ。自分が姉を追い詰めてしまったのだ。
「お姉ちゃん……もっと……もっとがんばるから……ね? なおくんも……ふつうの……」
「もっとがんばるって……今だってふらふらしてるじゃないか……」
毎日遅くまで仕事をし、朝早く起きて家事をする。休日だって家事をして、少し昼寝をすることだけが楽しみだという。休日出勤も率先してやるので、休めないことも多々ある。
これでさらに稼ごうというのなら――夜の仕事だって、するかもしれない。
「姉さん――俺、考えてたことがあるんだ」
直巳が涙をぬぐって、つばめの顔を見る。
「……なあに?」
優しいつばめ姉さん。かわいそうなつばめ姉さん。
「俺――家を出てくよ」
「――え?」
つばめが唖然とした顔をしている。当然だろう。
直巳の決意が揺らぎそうになるが、こらえた。もう、言うしかない。
「俺は家を出て、一人で生活するよ。自分の分は稼げる……姉さんは嫌がるやり方だけど、これが俺のやり方だから。だから、姉さんは自分のことだけを考えて生活してくれ。姉さん一人なら苦労しないだろ? 生活費も家事も、一人分ですむ」
すべて言い終わると、リビングを沈黙が包んだ。
つばめは放心したかのように直巳を見つめている。
こうするしかない。つばめを楽にさせるにはこうするしかなかったのだ。自分のそう言い聞かせて、直巳は姉の視線に耐えた。
「――迷惑なんだよ。俺のため俺のためって。俺は一人で稼げるし、生活もできる。いつまでも姉貴面して、無理されても困るんだよ。俺は姉さんより稼げる。ここにいる必要がない。だから出て行くよ。もう、お互い大人だ。好きにやろう。渡していたお金は全部、好きにしてくれていい。これまで面倒かけた分だ」
心から血が流れるとは、このことだろう。それでも、こうでもしないと姉は自分のために無理を続ける。それはどうしても耐えられない。
つばめの目が、口が、ゆっくりと動き始める。
「おねえちゃん……は……もう……いらない……の?」
「――いらない」
直巳は、つばめの目を見て、はっきりと言った。
「――そっか。なおくん、お金も稼げるし、お料理も上手だしね――お姉ちゃん、邪魔になっちゃうよね――ごめんね? 気づかなくて。お姉ちゃん、馬鹿だから」
つばめは「へへえ」と笑った。涙と鼻水を流しながら。
ぜんぜん、笑えていない。
「な、なおくんがそうしたいなら……そ、そうしよう。うん……そうしよう……お姉ちゃんのこと、気にしないでいいからね。寂しくなったら、来てくれればいいから――あ、大丈夫。お姉ちゃんはさみしくなっても、なおくんの家に行ったりしないから。彼女とか、ね? そういうの……も……ある……から……」
「もうやめろよ!」
直巳は耐えきれず、部屋を飛び出した。そのまま玄関へ向かう。今日はもう、家には帰らないつもりだった。
自分が何に耐えられなかったのか。悲しさ、寂しさ、その原因となる何かへの怒り――それはあるけど、本当は罪悪感に耐えきれなかった。
自分は、姉の愛を捨てたのだ。姉が必死で注いでくれた愛を、受け止めきれずに踏みにじったのだ。
(もう、姉さんには会わないようにしよう)
自分がいなくなれば、姉の生活も楽になるだろう。つばめはちゃんとすればすごく可愛いから、彼氏だってできるだろう。優しいし家事も上手いし、結婚だって出来るはずだ。
お互いの生活が落ち着いたら、きっとまた普通に話せる日もくるはずだ。それまでは、こうするしかない。直巳は必死で自分に言い聞かせた。
上着を持ち、ポケットに財布が入ってることを確認してから、スニーカーを履き、玄関のドアを開けて外に出る。
その瞬間、家の前で衝撃音とともに、強い光が降り注いだ。あまりの強い光に、直巳は手で目をおおった。
(落雷?)
光が弱くなり、手の隙間から覗いてみる。
光の中心に、天使がいた。
直巳は生まれて初めて本物の天使を見た。それでも、これが天使なのだと直感的にわかった。
光のまぶしさだけではない。天使から放たれる神々しさとでもいうのだろうか、今すぐにでも跪いて祈りを捧げたかった。体が、心が、そうしろと言っていた。
天使の顔はよくみえなかった。体は女性でもあり男性でもある。天使が何か言っているような気がして、直巳は直感的に危機を察した。
(逃げなくては)
天使は人にたいして「奇跡」を起こす。その結果が祝福か試練かはわからない。だが、直巳には望む奇跡はない。試練など、もっての他だった。
直巳は逃げようとしたが、天使の威圧感に押され、体が動かなかった。
それに、逃げるとして、どこに逃げればいいというのか。
(家の中なら――家の中?)
「なおくんっ! 今の音はなに!?」
「駄目だ! 来るな姉さん! 天使だ!」
直巳の心配は的中した。家にはつばめがいる。これだけの音と衝撃がして、外に出てこないわけがない。
「えっ……天使……?」
「そうだよ! 天使降臨だ! すぐ家の中に戻れ!」
直巳が叫ぶと、つばめはようやく状況を理解した。
天使は何事かをつぶやきはじめ、再び、その身から光を発し始めた。
つばめは天使と直巳を見比べると、直巳の元へと走ってきた。
「何してるんだよ! 来るな! 早く家の中へ!」
直巳も家の中へ逃げたかったが、足が動かなかった。それが畏怖なのか、天使に何かされたのかはわからない。
走ってきたつばめは、そのままの勢いで直巳を抱きかかえ、天使に背を向けた。
「な、なにしてるんだよ!」
「お姉ちゃんだからね。弟のなおくんを守るのは、当たり前」
つばめがにこりと笑った瞬間、天使は一際強く輝いた。天使を中心として光の輪が広がり、つばめはそれを背中で受けた。
直巳がつばめを引きはがそうとするが、つばめは信じられないほど強い力で直巳を抱きしめていた。どこに、こんな力あったのだろう。
「姉さん! おい! つばめ!」
あたりを光が包む。大きな音楽が鳴り響いているような気がする。目や耳、五感のすべてが曖昧だ。直巳の叫び声も音になっているかわからない。
微かな意識の中で、「駄目」という言葉と共に、突き飛ばされた気がする。
数秒の出来事だったと思う。光も音も止む。
「あ――」
直巳が状況を理解する間もなく、天使が再度光り出した。
(もう一度?)
無意識のうちに、今度は直巳がつばめをかばっていた。つばめを背中から抱き留める。何か変な感触がした気がするが、天使降臨中で感覚が麻痺しているのだろう。
背後の天使から、またも強い光が――出なかった。
背後から何の気配もしなくなった。直巳が恐る恐る、後ろを向くと、そこにはもう、何もいなかった。天使降臨の衝撃によって、えぐられた道路があるだけだ。
(助かった……のか?)
天使はいない。あたりは夜の静寂に包まれている。
天使降臨は終わったのだ。
「よかった……天使は帰ったよ、姉さ――」
直巳が喜びながら振り返り、つばめに話かける。
そこにあったのは、つばめの形をした石膏像だった。
直巳の絶叫が、夜の静寂を切り裂いた。
石膏像の前で泣きじゃくる直巳の肩を叩くものがいた。
「……とりあえず……家の中に……運ぼう……」
伊武希衣だった。
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