※12話 ぼくの考えた最強の主人公(どこかで見たry)

 双対の閃光剣士:『キリノ・アスカ』

 レアリティ:☆☆☆☆☆☆

 最大攻撃力:2560000

 最大防御力:1980000

 スキル:シャイニング・バースト・エタニティ・ストリーム

 効果:攻撃力を128倍にし、さらに3ターン無敵の加護を得て、プレイヤーを全回復する。


 フレーバーテキスト:

『――貴殿が私のマスターか。いいでしょう。中々に興がのりました。

 わたくしの双剣の極意、余すことなく、その眼にご覧にいれてしんぜよう』


 いつも立ち寄っている最寄りのスーパーに嫁さんと寄った。表入口となるすぐ側に、いつもはない屋台があって、宝クジを売っていた。

「タカラクジィ! サンオクエーンっー! ヒトヤマ当ててぇ、オオガネモチー!」

 見れば黒人男性のアルバイターらしき青年が、たった今、大当たりが出たんだぞと言わんばかりに、鈴をガランガラン鳴らしまくっていた。あきらかにタイミングを間違っている。

「た・か・ら・く・じー! さ・ん・お・く・ご・ち・う・さ!!」

 テンションが高いのは結構だが、それは宝クジを売るそういうアレじゃないだろう。俺と同じ感想を持ったのか、流れる買い物客らも目を合わせず、そそくさと側を通り過ぎていく。

「……旦那さん、旦那さん」

 ぐい、ぐい、と。上着のコートを引っ張られた。振り向けば、嫁さんが割とマジな顔をして俺を見上げていた。

「買いましょう、宝くじ。旦那さん。当たります……いけますっ!」

「いや無理だから」

「当たりますっ! 世の中には、物欲センサーというものがありまして! 旦那さんは本当に無欲なんですよっ! だから当たっちゃうんですよ、一等がっっ!」

「そうやって念を押されてる時点で無理だよ」

「ふわーん。宝クジの一等だったら、ガチャなんて数億回も回せたのにぃ~」

「数億回は無理だろ。ほら、買い物済ませて帰ろう。明日は日曜だから。で、今日は何食べる?」

「そうですねぇ、うーんと、うーん……」

 駄々をこねる嫁さんをなだめて店の中に入った。だいたい、俺は昔から一等賞とは縁のない人生を送ってきた。その才能を持ち合わせていない事も、これまでの人生で十分に理解してきたつもりだ。でも、 

(特賞ならもう手に入れたからな。十分だよ)

 身の丈に合った、あるいは勿体無いほどの幸運はやってくる。

 隣を歩く嫁さんの肩を静かに寄せて、俺たちは明日に向かって生きていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る