記憶のかなたで 

@monyo116

0.プロローグ

大学の後輩に呼び出された。


柄にもなく、ドキドキした。告白が初めてではないのに。


待ち合わせ場所は、大学の裏庭にある大きな桜の木の下。


1度もいったことの無いその場所は、とても懐かしくて…。


そして、そこで待っていた彼女はとてもきれいで、そして、懐かしくて…。



「ごめん、待った?」


「いいえ。大丈夫です。」


彼女は、そう応え、こういった。


「あなたのことが好きです。私と付き合ってくれませんか。」


一瞬、想い人の顔がよぎった。


忘れたくても忘れられない愛しい人。


「ごめん。俺、好きな人が・・・」


「知ってます!」


「!?」


「先輩に・・・好きな人がいるというのは知っています。

それでもかまいません。あなたのそばに居たいんです。

迷惑なのは十分に分かっています。それでも・・・。あなたと一緒にいたい…。

お願いします。情けでもかまいません。そばにいさせてください。」


「・・・俺には好きな人がいる。その人以外のことを考えられない。

その人に何かあれば、俺はお前よりもその人を優先するだろう。

お前を愛してあげられない。それでもいいなら…付き合おう。」


なぜか断れなかった。自分でも最低な答えを出したと思う。


彼女を傷つけてしまう…それが前提のお付き合い…なのに。


「・・・いいんですか?」


「情けでもいいと先に言ったのはお前だろ?

今さっきも言ったとおり、愛してあげられる保障はない。

一緒にいてもお前を傷つけてしまうかもしれない。それでも、かまわないのであれば…」


なぜか一緒にいたいと思ってしまった…自分の身勝手なわがまま…


「かまいません。あなたと一緒にいられるのなら。」


彼女は笑った。悲しそうな笑顔で。


「よろしく。さくら。」


こうやって始まった彼女と俺の過ち。

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