記憶のかなたで
@monyo116
0.プロローグ
大学の後輩に呼び出された。
柄にもなく、ドキドキした。告白が初めてではないのに。
待ち合わせ場所は、大学の裏庭にある大きな桜の木の下。
1度もいったことの無いその場所は、とても懐かしくて…。
そして、そこで待っていた彼女はとてもきれいで、そして、懐かしくて…。
「ごめん、待った?」
「いいえ。大丈夫です。」
彼女は、そう応え、こういった。
「あなたのことが好きです。私と付き合ってくれませんか。」
一瞬、想い人の顔がよぎった。
忘れたくても忘れられない愛しい人。
「ごめん。俺、好きな人が・・・」
「知ってます!」
「!?」
「先輩に・・・好きな人がいるというのは知っています。
それでもかまいません。あなたのそばに居たいんです。
迷惑なのは十分に分かっています。それでも・・・。あなたと一緒にいたい…。
お願いします。情けでもかまいません。そばにいさせてください。」
「・・・俺には好きな人がいる。その人以外のことを考えられない。
その人に何かあれば、俺はお前よりもその人を優先するだろう。
お前を愛してあげられない。それでもいいなら…付き合おう。」
なぜか断れなかった。自分でも最低な答えを出したと思う。
彼女を傷つけてしまう…それが前提のお付き合い…なのに。
「・・・いいんですか?」
「情けでもいいと先に言ったのはお前だろ?
今さっきも言ったとおり、愛してあげられる保障はない。
一緒にいてもお前を傷つけてしまうかもしれない。それでも、かまわないのであれば…」
なぜか一緒にいたいと思ってしまった…自分の身勝手なわがまま…
「かまいません。あなたと一緒にいられるのなら。」
彼女は笑った。悲しそうな笑顔で。
「よろしく。さくら。」
こうやって始まった彼女と俺の過ち。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます