第4話プロローグ4

 俺はその場面を見て驚愕した。それはただ§ジョー§が黑々に負けたからではない。

 黑々は§ジョー§との戦いで、HPを3割程残して勝利していたからだ。

 §ジョー§の戦闘スタイルは、槍と体の大半を隠せる程の大きさの盾での堅実な戦闘スタイルなのだ。

 盾を使わない槍だけでの戦闘も出来るが、基本盾で守りながら隙を突いて槍で攻撃すると言うものなのだ。

 確実に勝ちに行くときの§ジョー§の防御は並の物ではなく、今回のようにHPを3割も残して勝利するのは、余程相性が悪いか実力に差が無ければ出来ないことだ。

 俺は、決勝で§ジョー§と戦えないのは残念だが、§ジョー§に圧勝した黑々と戦うのが楽しみでしょうがなかった。

 決勝戦は三十分後で、周りでは優勝者予想の賭け事もヒートアップしており、倍率は俺が13倍で黑々が2.4倍だった。

 俺は出来るだけ手の内を隠しながら戦っていたのと、中堅ギルドと超大型ギルドのマスターと言うことで賭けの倍率に差が出たようだ。

 知名度の差と言うことで賭けのことはあまり気にせず、少し早いが選手待機場所で決勝戦が始まるまで精神統一を行った。

 暫くして転送が始まり、俺は決勝戦の行われる闘技場の中央辺りに出たのだった。

 観客席は人で溢れかえっており、俺と黑々が現れた時には歓声が鳴り響いた。


 そして、黑々と挨拶と握手を行い、その後所定の位置につくと10と言う数字が現れカウントダウンを開始した。

 数字が0になると同時に、俺と黑々は駆け出しお互いに攻撃を繰り出した。

 黑々の武器は体と同じ程の大きさの刃が包丁のような大剣で、俺の抜刀術と撃ち合っても圧されることがなく、威力だけ見れば黑々の大剣の方が上であった。

 しかし、黑々の大剣と同格の威力がだせる俺の抜刀術は、速さと手数で黑々を追い詰めていった。

 俺の方が優勢ではあったが、流石にナンバーワンと呼び声の高いギルドのマスターをやっているだけはあって、回避や体術の技量も並の物ではなく、無理に攻めすぎると大剣で抜刀術を真正面から受け止められ吹き飛ばされる事も何度かあったのだった。


 黑々のHPが半分を切った辺りで、黑々がそろそろ本気を出そうと言い何か演出を始め、俺は決勝戦なので多少の演出は良いだろうとそれを黙って見ていたのだった。

 黑々は何か言葉を発していたが、スキルを地面に当てて砂煙を巻き起こした衝撃で俺には聞こえなかった。

 その後砂煙が晴れると、漆黒の日本刀を携えて装備も黒装束に換装した黑々が立っていたのだった。


 何か見たことがある気がしたが、今は目の前の試合に集中して準備の終わった黑々に斬りかかったのだった。

 しかし黑々は速度重視の装備にしたことで、俺の抜刀術の攻撃を防ぎきりカウンターまで行ってきた。

 双方が攻撃を撃ち合い続けると、速度では押され気味だが抜刀術の威力の高さのお陰で俺は引けを取る事はなく、二人ともHPを1割減らし俺が6割で黑々が4割のHPとなっていた。

 この速度であれば、§ジョー§が防ぎきれず攻撃もあまり当てれなかったのだろうと納得して、俺も全力を出すことにした。

 抜刀術でも勝てないことはないが、演出の為にも俺は装備を変えることにしたのだった。

 俺がしたように、黑々も俺が装備を変更する間攻撃をしてこないようで、俺は遠慮せず装備を変更した。


 俺は体術スキル烈破で黑々がやったように砂煙を巻き起こした後、武器を抜刀術用の刀から二刀流用の剣に変更し、防具も着物や袴から動きを阻害しない程度の鎧に変更し、最後に頭に状態異常耐性のついたサークレットを着け、鞘から剣を引き抜き砂煙を払ったのだった。

 抜刀術でも黑々と渡り合えていた俺は、納刀の必要も無くなり手数も倍程になって黑々を圧倒していった。


 結果は俺がHPを4割程残して勝利し、オリジナル武器と最強の称号を手に入れたのだった。

 §ジョー§も3位となり、俺達のギルドは一気に名声を上げ、明日のアップデートに胸を踊らせながら、アップデートの始まる0:00分まで皆で騒いでいた。


 しかし、このアップデートの直後、俺はある事件に巻き込まれる事となるのだった…

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